240話
ルガルの街で年に1回行われるファッションショーが終わった後はエルフィーへ約束の品である特別審査賞を手渡すとその場でぴょんぴょんと跳ねるように喜びながら近くにある座れそうな場所で綺麗に包装された箱を開封すると中には飴のように透き通った宝石の形のお菓子が多く詰まっていた。
取り分として何個かお菓子を分けてもらい一つだけ口に含むとベッコウ飴と似た味はするのだが、食感はマシュマロのように柔らかく一瞬で溶けてしまうお菓子であり、人生で一度も食べたこと無い不思議なお菓子であった。
一体何を材料としたらこのようなお菓子が作れるのだろうか。
そして用意された衣装についてはコウにとってもう必要ない物ということで返却しようとするも記念に取っておけと言われ、突き返されてしまいエルフィーは忙しいということでお菓子を食べ切ると別れの挨拶を軽く済ませ、何処かに行ってしまった。
しかしそんな衣装をコウとしては持っていても着る機会が無いということでライラに渡すことにしたのだが、ライラが着ようとしても結局のところサイズが合わなかったためコウの持つ収納の指輪の中で肥やしとなってしまうのだが...。
そういえばここ数日間の間で変化があったことといえばファッションショーで最優秀賞に輝いたイザベルの衣装はルガルの街で一気に流行りだしたということでいつの間にか街の中が黒一色である。
それにしても情報を伝達する手段が限られいるというのによくもまぁすぐに流行るものだと関心してしまう。
またそれ以外にも流行ったことといえばコウがウェディングドレスのような格好をしたためか、ルガルの街では中性的な男に女装をさせるのが少し流行ったりしたのだが、それはまた別のお話。
そしてここ数日間で色々とあったものの、とりあえずは助けた際のお礼も貰い、年1回の催し物への参加も終わったということでコウ達一行はドワーフの国へ向かうためルガルの街を発とうとしていた。
「もう行ってしまうんですの...?」
「えぇ。急ぐ旅ではありませんがあまり時間を掛けると誰かに怒られますから」
ルガルの街から出ようとするとマリエルが見送りに来てくれたみたいで少しだけ立ち話をするもシュンとした顔で別れを惜しんでいる。
イザベルと久しぶりに会えたということでもっと話したり、色々としたいことがあるのかもしれない。
ただイザベルの言う通り決して急ぐ旅ではないのだが、これ以上この街でゆっくりしてしまうと今現在の白薔薇騎士団を任せている副団長であるジュディへ更に負担を掛けてしまうことになる。
そのことに関して怒られるとイザベルは冗談を言いながら別れを惜しむマリエルを説得しているとアルトマード王国の方向からくしゅんとクシャミが聞こえた気がしないでもない。
「そうですわね...ここで我儘言うのは淑女として良くないですわね」
「また会いましょうマリエル」
「えぇ次に会えることをわたくしは楽しみしていますわよ!」
イザベルはマリエルとの別れも済んだということでダリアの馬車へ乗り込むとゆっくりと進み出し、ルガルの街の門をくぐり抜けて今度こそ目的であるドワーフの国へ向かうのであった...。
■
ルガルの街から約2日、馬車は南東方面に真っ直ぐ走り続けるといつの間にか景色は険しい岩山に囲まれ、坂道のためか少しづつ馬車の進む速度が緩やかになっていく。
ちなみにドワーフの国はロスガニアよりも少し遠い場所にあったりするのだが、今回は馬車の旅ということもあって移動がかなり早い。
そしてダリアにドワーフの国はあとどれくらいで到着するのかと聞くと半日もすれば到着するということであり、今の時間帯は昼前ということもあって順調に行ければ夜頃には到着する計画だ。
とは言うものの、ここ数日間で馬車が進む進路上を妨害するかのように魔物がちらほらと現れたりし、上手いことかち合ってしまっているため計画通りに行くかどうかわからない。
ルガルからの旅の途中で出会った魔物達は最初こそはゴブリンやホーンラビットなどのコウ達にとっては敵ではないような魔物だったが岩山の景色になるに連れてダリアが当初言っていた通り徐々に危険な魔物となっており、オーガやトロルなどの人を襲うような魔物が数多く現れていた。
オーガに関してはある程度、戦い慣れているため楽ではあったのだがトロルに関しては厄介なものであった。
何が厄介だったのかというとまず驚異的な再生力と痛みに強い強靭的な精神そして分厚い肉の装甲を持っていたことだ。
ある程度、致命傷になるような攻撃をしたとしても肉を切らせて骨を断つようにトロル達は怯まずに攻めてくるのでタチが悪く、また一撃で仕留めきれないと驚異的な再生力によって傷はたちまち癒えてしまう。
しかもイザベルに関しては手元にある武器はヒビが入っているため、魔法での援護となっていたのだが、分厚い肉の装甲を持つトロル達に得意な風魔法を使用した所であまり肉に阻まれ、相性は良くなかった。
とまぁ色々とあったものの、もうすぐでドワーフの国に到着するのでゆっくりと馬車内でコウ達は何をするか予定を立てていると走っていた馬車が停止する。
「やばいっす!コウさん達の出番っす!」
そしてダリアの焦る声が聞こえたためすぐに扉から飛び出るとそこには鳥のような身体持ち、頭は醜悪な老婆の顔をした魔物の群れが獲物を狙うかのように空をぐるぐると飛び回っているのであった...。
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