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238話

 王都で行った闘技大会程の規模ではないがそれなりの観客がひしめき合う会場の裏側で今か今かと審査が開始されるのを他の参加者と共に待っていた。


 それにしても参加者は約70人近くの人数が参加しており、男女問わず誰でも参加できると張り紙に書いてあったが平民や普通の冒険者などが衣装を用意できる訳もない。


 そのため街の人口からしてみれば思ったほどの参加者はおらず意外に上位を狙えたりするのではないかと思ってしまう。


 そして最優秀賞などは女性受けしそうな賞品であるためか参加者の殆どは女性ばかりであり、コウのように男性が参加しているのは少ない。


「それにしても女の人ばかりだな...」


「ふむ...男で参加して見た目も良さそうな君は強敵になりそうだ」


 多少なりとも男の衣装を着たものはいるが女性ばかりに囲まれているため、なんだか場違いな気持ちになっているといきなり隣から見知らぬ人物から喋り掛けられた。


「誰...?って...凄い格好だな」


 その男性の格好は明らかに他の者達とは一線を(かく)しており、顔は悪くないイケメンであるのだが、全身を真っ赤な服ということでどこかしらの赤い彗星を連想させるような人物である。


「そうだろう!そうだろう!これは特注で作ってもらった物だからね!しかも...」


 格好について触れると語りだすように喋りだしたので、これはあまり関わらないほうが良いであろう人物だとコウの中の直感が(ささや)き、放置した方が良いのかもしれない。


 まぁこのような催し物なのだから様々な性格の人物がいるのだろう。


「そういえばイザベル達は何処だろう」


 語りが止まらないその貴族の目を盗みこっそり離れて参加者の中をぐるりと見渡すとイザベルとライラの2人を並んでいる人達の隙間から確認出来たが、黒いコートで着ている衣装を隠しているためどんな衣装で参加しているのかわからない。


 またコウがこのファッションショーに参加していることについて2人には伝えてはいないし、彼女らからしてみればコウは観客として見に来ているのではないかと思っていたりする。


 ちなみにコウの今の格好は普段被っている青色の外套ではなく、胸の中心部には真っ赤なブローチを装飾品として添えられ、口元が付近まですっぽりと隠せるフードが付いた足先まで隠すことが出来る黒い外套であり、この場に来る前にエルフィーが呼んだ者から薄っすらと化粧を施されていた。


 一応、審査の際に真っ赤なブローチ部分へ魔力を流すようにとエルフィーから言われているので隠し種があるようだが、本当にこのような格好で特別審査賞が果たして狙えるのだろうか疑問が残る。


 まぁ特別審査賞が取れるかどうかについてはエルフィーが用意してくれた衣装次第ということになるだろう。


 しかしそれにしてもそんな外見は男性か女性か見抜きづらい衣装なのに先程の人物はよくコウが男だと見抜いたものである。


 暫く待っていると会場の入場口からは司会進行役の声が聞こえると同時に見に来ているであろう多くの観客の歓声が聞こえ、王都で参加した闘技大会のことを あぁこんな感じだったなぁとふと思い出す。


 今思うと多くの人々が集まって見られたりするような大舞台に出たりするのはそこまで緊張しないので苦手ではないのかもしれない。


「1番の方!会場へ入ってください!」


 そしてついに会場へ入るように指示が聞こえたため、先頭に立っている女性が入口に向かって歩き出すのでどうやら衣装の審査が始まったようである。


 因みにどういった審査の仕方かというとまず最初に受付した際の番号を振られているため、自身の番号を呼ばれた者は会場内に入っていく。


 そして会場内で参加者全員が大勢の観客の前で自身が着ている衣装のアピールを行ったのちに審査となるのだが、その審査方法は観客参加型となっていた。


 観客の手元には投票する紙を1人1枚だけ渡されており、自身の気に入った衣装を着ている人が各々持っている投票箱へそのまま入れるという形となる。


 コウの番号というと中間よりも上ということで出番もまだまだ先であり、観客の気分が味わえるように会場内が見える場所で次々と衣装をアピールする参加者を見ながら待機していた。


「おっ...次はイザベルの番か」


 そして次に呼ばれたのはコウのよく知っている人物であるイザベルのようで観客達が良く見える場所まで移動すると衣装を隠すように身に着けていた黒いコートを一気に脱ぎ捨て自身の着ている衣装を自信満々に魅せつける。


「俺が選んだ服じゃないか」


 どんな衣装だったかというとコウが選んだ花の刺繍があしらわれた真っ黒のロングドレスであり、コウの見立て通り銀色の髪が真っ黒の布地に映え、冒険者業をしているためか身体が鍛えられ、すらりとしている体型に似合っている。


 イザベルは白薔薇騎士団の団長ということもあって観客の女性冒険者達からは一定数の人気があるため会場内からは黄色い歓声が聞こえる。


「イザベルがあの服だとしたらもしかしてライラも...」


 イザベルの番が終わると次の参加者は受付を同タイミングでしていたためライラの番らしく、同じように黒いコートを脱ぎ捨てるとコウの予想通り、こちらもまた数日前に選ばされた時の白を基調としたノースリーブワンピースであった。


 こちらもまたイザベルと同じように似合っているが、ノースリーブのワンピースということでライラのとある一部分の主張が激しくなっていたりしており、スリットも入っていたらしくかなりセクシーな衣装ということで今度は会場内の男性陣からは大きな盛り上がりを見せた。


「もう少しで俺の番になりそうだし準備しなきゃ」


 とりあえずは2人の晴れ姿を見れたということでコウとしては満足である。


 またイザベル達の番号は30番台であったため、そのうち自身の番号を呼ばれるはずだと思いコウは会場内を見れる場所から移動していつでも呼ばれても良いように入口付近で待機することにした。


「では56番の方!会場へお願いします!」


「よし...行くか」


 そしてついにコウの番号が呼ばれたということで特別審査賞を手にするために頬を両手で叩いて気合を入れると観客で埋め尽くされているであろう会場の入口向かって一歩踏み出すのであった...。


いつも見てくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m


次回の更新は9月16日になりますのでよろしくお願いします。

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