232話
翌日の昼頃。コウ達一行を乗せたダリアの馬車はアルトマード王国の王都からドワーフの国に向かってガラガラと車輪が音を鳴らし、走り出していた。
「のどかな旅っすねー馬車の乗り心地はどうっすかー?」
「揺れも少ないし良い馬車だな」
「いやーよかったっす!皆さんが乗る前に調整したっすからねー」
御者の席から馬車内を覗ける小窓へちらりと顔を出し、自身の馬車の乗り心地を確認してくるダリアに不満点が無いことを伝えるとホッとした表情をしていた。
どうやらコウ達が馬車へ乗る前に上手いこと調整してくれていたようであまり舗装されていないじゃり道を走ったとしても振動を少なくするようにしてくれていたらしい。
また馬車内には柔らかい綿が詰められているクッションも人数分あるため、護衛依頼を受けているとは思えないほどのいたせり尽せり状態である。
どうしてコウ達がドワーフの国へ当日ではなく、翌日に出発したのか経緯を少しだけ振り返えさせてもらうとする。
昨日ダリアと鍛冶屋で別れた後、コウ達は王都内で旅に必要である食べ物や消耗品を買いつつ、ジュディと交渉しているイザベルがいるであろう白薔薇騎士団の屋敷へ向かった。
するとイザベルは既に話はまとまっていたようでドワーフの国へ向かう荷造りを始めていたが、隣で一緒に荷造りの手伝いをしているジュディは眉間に皺を寄せ、諦めた顔をしながら手を動かしているため一悶着あったようである。
そして荷造りをしているイザベルをコウ達も一緒に手伝いながらドワーフの国へ向かえるようになった経緯を話しているといつの間にか時刻は夕方頃。
この時間帯からは夜盗や魔物達が活発になり、動き出す時間ということもあって翌日の朝に王都を発てば良いのでは無いかとジュディから提案された。
確かに態々そんな時間帯に出るほど急いでいる訳でもないし、昨夜は裏ギルド関連のことで忙しかったため今日1日ぐらいはゆっくりと柔らかなベッドの上で寝たかったのイザベルやライラに確認すると問題ないとのこと。
「団長。ドワーフの国へ向かうのは明日なのでしっかりと仕事をしていけますね」
「うっ...」
弾む気持ち抱き、明るい表情で荷造りをしていたイザベルの肩に無慈悲な言葉と共にジュディは ぽんと片手を置くとイザベルはしまったと思ったのか顔が若干引きつり、明日に出発するということにしたのを後悔することとなる。
これはジュディなりの仕返しも含んでいるのだろうが出来るかぎり今も机の上に残っている書類をイザベルに処理させて多少なりとも不在期間の負担を軽くしたいのだろう。
そしてそのことを安らぎの森亭にいるダリアへ伝えると少しこちらもまだやることがあるため問題ないということになったので翌日の朝に出発することになったのだ。
そんな様々な経緯があったため、今現在に至るという訳である。
「そういえばこのメンバーでどこか行くのも久しぶりだな」
「確かにそうですね。ダンジョンに行った時ぶりでしょうか?」
「あの時は楽しかったですよね~」
このメンバーで旅をするのはいつぶりだろうかと記憶を掘り起こすとイザベルの言う通りダンジョン都市アルクへ行った時ぶりである。
確かあの時は王都の闘技大会で優勝した際に出来る限りの範囲で願いを叶えてくれるものであったためコウがダンジョンに行ってみたという願いをイザベルが叶えてくれた。
その時はそれなりに多くの魔道具を手に入れることが出来たダンジョン探索であり、色々と出来事はあったが今でも楽しかったことは記憶として覚えている。
とすると今回の旅も前回の旅同様、楽しいものにしたいのでこの世界にいるかどうか分からない神様に少しだけ祈っておくのがいいだろうか。
「そういえばフェニちゃんは何処行ったんですか~?」
「あぁフェニなら身体を動かしたいみたいで外を飛んでる」
先程までフェニはコウの膝上でずっと寝ていたのだが、たまには身体を動かしたかったのか金色に輝く美しい羽根を伸ばすと窓から外に出て馬車の上空周りをぐるぐると飛んでいた。
ちなみにコウ達の知らぬところで運動と称してフェニは走っている馬車へ近寄ってくる知能の低い魔物達に向かって得意の雷魔法を放ち、的当てゲームをするかのように倒していたりする。
そのおかげでコウ達一行は何事もなく、スムーズで平和な馬車の旅が出来ていたのだ。
「コウさん。馬車をちょっとだけ止まらせてもらうっす」
そして暫く道なりに馬車は進んでいると小窓からダリア馬車を止めるという旨を伝えられたため走っていた馬車はスピードを落として行く。
コウは何故だろうと思い、窓から少しだけ身を乗り出して馬車の前方を確認するとそこには泥にハマって身動きの取れていない貴族が乗るような馬車が道を塞いでいたのであった...。
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