231話
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「こんな所で会うなんて思わなかったっす!」
「えーっと...」
「忘れてるなんて酷いっす!確かに自己紹介はしてないっすけどルーカスさんの一番弟子ダリアっす!」
コウの中では過去に出会ったことのある人物だなと喉元までは出掛かっていたのだが、思い出せずに悩んでいると泣きそうにしながらルーカスの一番弟子であるダリアは自己紹介という自己アピールを必死にしてくる。
「わかったわかったダリアな!覚えたから寄るな!」
「本当っすか?次会っても忘れないでくださいっすよ?」
目に涙を溜めて鼻から鼻水をたらりと垂らしているため、コウとしては鼻水をつけられても嫌なのでじりじりと寄ってくるダリアから距離を取りつつも適当に宥めることにした。
「そういえばダリアは何でこんなところにいるんだ?」
「あ〜それはっすね~この鍛冶屋で頼まれた物を卸してたんすよ」
宥めるのも面倒になってきたので適当に話題を振ると泣いていた演技をすっとやめたダリアが先程までいた場所へ向かって指をさし、カウンターの上には鍛冶で使用するであろうと思われる様々な道具について說明してきた。
どうやらこの鍛冶屋に何処かしらで入荷してきた鍛冶道具を卸していたらしく最近の商売事情について色々と熱弁してくる。
「いやぁ~ドワーフの国で作られたものは需要が高くて最高っす!」
「ドワーフの国?」
「そうっす!今卸してる鍛冶道具がドワーフの国で作られた物なんすよ!」
最近の商売事情を熱弁しているダリアの話をラジオ感覚で聞き流しているとダリアとの会話の間にドワーフの国という単語が出てきたため、コウの耳はピクリと反応しもう一度聞きなおすと、どうやらダリアがこの鍛冶屋へ卸していた鍛冶道具についてはドワーフの国で作られた物のようだ。
つまりダリアはドワーフの国と取引ができる関係であり、尚且つドワーフの国への行き方についても知っていることとなる。
「いや〜でもまた行きたいっすね〜新しい取引先も開拓したいっすから」
そしてダリアがドワーフの国へ行きたいということはコウ達と同じ気持ちということになり、もしかするとこれは渡りに船というやつかもしれない。
「次はいつ行くんだ?」
「ドワーフの国っすか?今回で在庫も捌けたんですぐにでも行きたいところっすけど...」
ダリアに次行く機会はいつなのか尋ねると今すぐにでもドワーフの国へ行きたいということであったため、更にコウ達にとっても都合が良いがなんだか歯切れが悪い。
「なにか問題でもあるのか?」
「問題といえば問題なんすけど冒険者ギルドに護衛の依頼を募集しようと思ったら今は忙しいからって断られちゃったんすよ」
「あー...なるほどな」
「それなりの強さを持った護衛がいないと危険な魔物が多くてドワーフの国へ行くのは大変なんす」
確かに今の冒険者ギルドは捕まっていた女性冒険者達を元の場所へ送り返すのに忙しく、緊急の依頼以外を受け付けている暇はないようだ。
そのためダリアはドワーフの国へ行く際に護衛する冒険者を雇うことができずにいるため困っているらしい。
ただし他に護衛を雇う方法はないこともない。
例えば傭兵がいい例だろう。彼らは冒険者ギルドなどの組合には属しておらず護衛として雇う場合は直接の契約となる。
つまりそのような護衛を雇う方法は冒険者ギルドを通さずにコウ達冒険者にも傭兵などと同じよう依頼をすることが出来なくもない。
では何故、冒険者ギルドに多くの人が依頼するのか?だったら直接どんな冒険者にも依頼すればいいじゃないかと。
そのことについてはもし名も知れぬ冒険者がもし依頼に失敗したとしても冒険者ギルド側から依頼者に対して補填が入るため、多くの人は冒険者ギルドに依頼をするのだ。
ただコウ達のように実績も信頼もある高ランク冒険者への直接依頼ともなれば話は別であったりする。
「もしよかったら俺達が護衛をやってもいいぞ」
「本当っすか?それならすっごく助かるっすけど...報酬はどれくらいっすかね...?」
ダリアが不安になるのはコウ達はBランク冒険者ということもあるし何よりもここ最近では頭角を現してきたというのもあって報酬が高くなるのではないかと考えているようだ。
「報酬か...考えてなかった。相場ってどれくらいなんだ?」
「えぇ...Bランク冒険者パーティーの護衛依頼なら日当金貨10枚から20枚ってとこっすね」
「じゃあ今回は日当金貨5枚でいいかな」
今回はコウ達にとって態々場所などを調べる必要もなく、ドワーフの国へ行けるのでそこまでして多くの報酬を貰おうとは思っていない。
そしてコウが相場の半分で護衛依頼を受けても良いと答えるとダリアは驚きのあまり口を大きく開けて硬直していた。
ふむ...それにしてもやはり商人という人と関わり合う仕事ということで綺麗な歯並びをしてきらりと白い歯が輝いている。
そんなあんぐりと口を開いているダリアの目の前で手のひらをフリフリと振ると自身が硬直していたのに気づいたのかハッとした表情をして頭を下げてきた。
「失礼しましたっす!でもそんな安く護衛依頼を受けてもらってもいいんすか!?」
「まぁ俺達にとってもメリットのあることだしな」
「だったらお言葉に甘えるっす!是非お願いしたいっす!」
お互いに利益のあることなので握手をがっちりと交わし、コウ達にとって冒険者ギルドを通さない初めての直接依頼となる。
「じゃあ俺達も準備があるからまたな」
「わかったっす!準備ができたら自分は安らぎの森亭にいるんで来てくださいっす!」
ダリアの護衛という名目でドワーフの国へ行く手段を見つけることができたのでまた旅の支度をする必要があるだろう。
そして今もドワーフの国へ出掛けるということについて副団長のジュディと交渉をしているであろうイザベルに行く手段を見つけたことを伝えるためにとりあえずは白薔薇騎士団の屋敷へコウ達は戻るのであった...。




