229話
あれからというものコウ達は地下に囚われていた女冒険者達を朝になる頃には全員を救出し終えていた。
救出の際には人手が必要ということであり、ディザーが手を回してくれたお陰で人海戦術ができたりしたが、それでも入り組んだ地下道ということで囚われている女性冒険者を探すのに時間はかかったりした。
囚われていた女冒険者達の殆どは王都にある冒険者ギルドが身元を確認して元々活動していた場所へ馬車などを使い無償で送り返してくれるようなのでディザーに全てを託していたりする。
また地下道が貴族街にある屋敷へ通じていたのもやはりというか王都の貴族が一枚噛んでいたようでそれについても今回、王都内で暴れることを許可してくれた第一皇子のアンドリューへ報告が既にされているらしい。
もしコウが別の出入り口を探していなければ発覚するのが遅くなってしまい一枚噛んでいた貴族に逃げられていたかもしれなかったため王都の膿を出してくれたことに感謝していたとのこと。
色々とあったがコウ達はイザベルを迎えに来てくれたジュディの馬車に乗って一休みするために白薔薇騎士団が拠点としている屋敷に向かっていた。
なんだかんだ昨日から寝ていないためコウ達は疲れており、ゆりかごのように揺れる馬車の振動で左右に座っているイザベルとライラは既にすやすやと夢の世界へ旅立って膝にもフェニが寝ていたりする。
そして左右で寝ている2人の頭が馬車の揺れによってコウの小さな肩へ乗せて寄りかかるように倒れてくるがそこまで気にすることでもないし、わざわざ起こすのも可哀想なのでそのまま小さな肩を貸すことにした。
まぁ美人2人に肩を貸すことはある意味役得かもしれない。
そんなコウもうつらうつらと睡魔に襲われながらも耐えていると馬車がゆっくりと止まりコンコンと扉をノックされたのち開けられると御者の役割をしていたジュディが立っていた。
「ふふっ...コウ君以外はぐっすり寝ているようだね」
「とりあえず見てないで2人を起こすのを手伝ってくれ」
ジュディはそんな2人に寄りかかられているコウを見るとくすりと笑って微笑ましい表情で見ているのでジト目をしながら助けを求める。
「起こすのは可哀想だろう?私は団長を運ぶからライラさんはコウ君に任せたよ」
ジュディは寝ているイザベルを軽々とお姫様抱っこして馬車から下ろすとそのまま屋敷内に入っていく。
そしてコウも同じようにライラをお姫様抱っこすると寝相が悪いのかいちいち抱き枕に抱きしめるように絡まれてしまうが心頭滅却して煩悩を捨て去る。
ジュディの隣を歩きながら屋敷に休む許可を貰いとりあえず1日だけだが、白薔薇騎士団の屋敷へ休ませてもらうことになるのであった...。
■
昼頃までコウ達は白薔薇騎士団の屋敷で休ませてもらったお陰か体の疲れも多少は取れた気がする。
ライラ達は何処だろうと思い屋敷内にいる団員に話を聞くとどうやらイザベルの仕事部屋にみんなは集まっているらしいので起きたばかりのコウも向かうことにした。
とはいえ屋敷内は広くコウはイザベルの仕事部屋の場所が分からなかったため話を聞いた団員にお願いして案内してもらい部屋前に到着すると数回扉をノックする。
すると「どうぞー」と中からは聞き慣れた声が複数聞こえ、扉を開けるとそこにはイザベル、ライラ、フェニの2人と1匹がまったりと過ごしていた。
「あら?コウさんおはようございます」
「おはようございます〜」
「キュイ!」
既に朝ではないがお互いに起床の挨拶を交わすとコウも混ざるように部屋内にある柔らかなソファーに座って机の上に置いてある菓子を1つだけつまむ。
「そういえばあいつらはジールさん達とどんな知り合いだったんだろうな」
「ジールさん達に聞くのはどうでしょうか?」
「あ〜...一応帰る前に聞いたんだけど濁された」
確かにイザベルの言う通り裏ギルドの者との関係を聞けば良い話なのだが、ジールはいつの間にか一足先にローランへ帰っており、残っていたディザーに聞いても話を濁されるだけであった。
まぁ誰にでも言えないことが一つや二つあるだろうし、そこまで深く追求する必要はないのかもしれないがそれでも皆も気になっていたりするらしい。
「そういえばコウさんってドワーフの知り合いはいたりしませんか?」
「ロスガニアに行った時に話したぐらいでいないな...なんでだ?」
「それが...」
イザベルは話を切り替えるように部屋の隅においてあるレイピアを持ち出すと鞘から抜き出して刀身を見せてきた。
若干だがヒビが入っており、このまま使っていればいずれ壊れてしまうだろう。
ドワーフの知り合いがいないか尋ねられた理由は昨晩、戦っている際にフェニから恩恵を受けるといつもよりも身体の動きが良くなったため、調子に乗って思いっきりレイピアを振るったらしい。
それが原因だったのかレイピアの刀身にヒビが入ってしまったので修復したいのだが、王都の鍛冶屋に持っていっても人族では完璧に修復するのは無理ということを言われたとのこと。
また王都内にはドワーフの鍛冶屋はなく、もしドワーフがやっている鍛冶屋に行くとしたらロスガニアかドワーフの国に向かうしかない。
「思入れがあるレイピアなので何とかしたいのですが...」
「なるほど...だからドワーフに頼りたいのか」
ドワーフは鍛冶のプロだ。人族に修復出来ないようなものであっても簡単に修復できるはずである。
しかしドワーフは基本的にエルフ同様、気難しい性格ということで相手しづらくブラスのように気さくなドワーフは少ない。
「そうなんです。ドワーフの国に入るのにも大変らしいのでここは諦めるしかなさそうですね」
しょんぼりと肩を落とすイザベルの力になってあげようと思い何とかならないか考えているとコウはロスガニアに行った際、ドワーフのブラスに言われたことをふと思い出すのであった...。
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