216話
身につけている防具が新人の冒険者が着るような物ということで少しだけ心もとないため、収納の指輪からいつも身に纏っている外套を羽織りながら檻の外に出る。
檻の外に出ると両隣にもコウが入れられていた檻があり、左隣には誰もいないが右隣の檻中には女性冒険者がここから出ることを諦めているようで檻の隅でうずくまってすすり泣いていた。
またこの檻に入れられる前に来る途中で目隠しをされていても捕まっているはずの女性冒険者達の泣き声やら助けを求める声などが聞こえていたのでここ以外にもいるだろう。
そう考えると現状どれくらいの女性冒険者が捕まっているのかが分からない。
「助けていかないといけないけど...う~んどう助けるかな」
ただ助けるといっても闇雲に助けて引き連れながらこの場所を歩き回ったとしても、もし裏ギルドの者達とかち合ってしまっては引き連れている女性冒険者達を全て守れるわけではないのでどうにかして安全に逃げれるような通路を確保しないといけない。
そして今回、潜入作戦ということでいつも道を探したり先導してくれるフェニはおらずイザベル達に預けているため1人で何とかしなければいけないので少し大変だろうか。
「とりあえず助けるのは後回しだな。安全通路の確保だ」
裏ギルドの男達が走っていった方向へ向かえばきっと出口へと繋がっているはずであるけども流石にその方向には敵である裏ギルドの者達が集まってイザベル達と戦っているはずなので通る訳にはいかない。
もしかしたら別の出入り口があるかもしれないのでコウはその出入り口を探すために男達が走っていた方向の真逆へと進み歩いていくのであった...。
■
少し前に時間は遡る。
ギルドマスターであるディザーと共にイザベル達はコウが誘拐されているのを確認するとその跡をバレないように少し離れた位置から追跡していくととある場所に到着した。
スラム街の奥には城壁があるのだが、そこの城壁近くに貴族が住むような大きな屋敷であり、コウを抱えた裏ギルドの者は屋敷の裏にある小さな掘っ立て小屋へと入っていっていた。
大きな屋敷自体はスラム街が近いためなのか誰にも買われておらず住んでいるような人がいるような気配はない。
そのため手入れも一切されず、草はボーボーに生えているし屋敷は老朽化してしまっている。
「あの小屋が地下通路への出入り口だ」
「なるほど~地下に集められてるんですね~」
「私達も行動しましょう」
王都内で騒ぎを起こすのは良いのだろうか?という疑問はあるだろうがギルドマスターであるディザーが既にこの国の王族である第一皇子のアンドリュー・フォン・アルトマードに話を通しているらしく暴れても大丈夫だと許可は得ている。
幸いにもスラム街のため周囲の建物も古く人はいなさげではあるのでどれだけ暴れても被害はそこまで出ず、多くの人が住んでいる場所からは少し離れているので騒ぎにもなりにくいはずである。
「どうやって燻り出しますか~?」
「それはこいつを使う」
ディザーの手のひらには魔石に似たようなものがあり、その魔石には謎の魔法陣みたいなものが掘られていた。
ただし見せられたところで何に使うのか?どうやって使うのか?が分からないためイザベル達は頭を傾げてしまっている。
「なんですかそれ?」
「見たほうが早いだろう」
ディザーは手のひらにある魔石を大きな屋敷の前にある草がボーボーに生えてきっていた広い庭に向かって思いっきり放り投げ、その魔石は地面へ石ころのようにころころと転がり落ちる。
すると地面に落ちた衝撃のせいなのか一瞬だけ白く光り輝くと大きな爆発を巻き起こし、爆風が巻き起こった。
そんなイザベル達はいきなり起きた爆発にびっくりしてしまい腰を抜かしてその場でぺたりと座り込んで目を丸くしていた。
そして爆発が起きた場所を見ると地面は半径1mほどが抉れており、イザベルやライラ達が使えるような魔法程の威力はないがそれでも魔法が使えないものが投げるだけでそこまでの威力が出せるなら驚異な物ではある。
「爆発するなら先に言って下さい!」
「びっくりしました~...」
「文句を言ってる場合じゃないぞ」
爆風によって乱れた髪を直しつつ立ち上がり爆発を起こしたディザーに向かって文句を言っていると今度は小さな掘っ立て小屋から黒い外套を身に纏った裏ギルドの者達がわらわらと飛び出てきた。
地上で謎の大きな爆発が起きれば誰だって何が地上で起きたのか確認するために出てくるのは当たり前である。
そしてわらわらと飛び出てきた敵方もイザベル達の存在に気づいたようで武器を取り出し、排除するために次々と襲いかかってくるのであった...。
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