215話
女性冒険者達を救出するためディザーの考案した作戦を元に少数精鋭の部隊が冒険者ギルドにあるギルドマスター室へと集まっていた。
今回の作戦は何と聞かれると簡単に言えば二手に部隊を分けて囮役を敵の懐に潜入させて女性冒険者達を救出させるのと外側で好き勝手に暴れて敵を燻り出す作戦であった。
ただ敵の懐に潜入させる行為はあまりにも危険である。
では誰を囮役にしたのか?
最初にイザベルが囮役を買って出ようとしていたのだが、イザベルでは顔が既に王都では知れ渡っているため裏ギルドでは警戒されているだろうということで却下された。
そして次にライラはどうだと意見が出たもののこれにはイザベルがそこまで危険を犯してほしくないと思ったのか大反対したためこれもまた却下。
しかし少数精鋭部隊の中で他に出来そうな者がいなかった。
じゃあコウはどうだろうか?と言う意見も出たりした。
確かに実力は申し分ないので適任と思われたがまず男であるし、先の戦争ではそれなりに目立っているのでディザーから却下されるもライラは何かを思いついたのかイザベルに耳打ちを済ませるとお互いに顔を見合わせニマニマと顔を笑っていた。
きっと何かしらの妙案が思い浮かんだのだろう。
「なんだよ。何か思いついたのか?」
「いえ~私はこう見えて最近おしゃれが好きなんですよね~」
「まぁまぁコウさん。試すだけですから!」
なんだか悪い予感がするのでこの場から少し席を外そうとするといつの間にかイザベルが後ろに立っており、逃げられないように羽交い締めされる。
「大丈夫ですよ~最初は少し恥ずかしいだけですから~」
「おい!何する気だ!」
「ディザーさん。少しお時間をいただきますね」
「なるべく早くにしてくれ」
まだ夕方ということで人通りは多くコウはイザベルとライラに腕がっちりとホールドされて拘束されながら街中を歩くと冒険者ギルドの近場にあったとある場所に到着する。
それは女性物の服を専門に取り扱っている服屋であり、中に入るとずらりと可愛らしい服があちらこちらに置いてあった。
ここに来た瞬間にコウの中ですぐに察しがつく...これはもう逃れられないと。
そして服屋に入ってある程度時間が経っただろうか?
陽は沈み、夜が現れたぐらいの時間にコウはイザベルとライラに腕をがっちりとホールドされた状態でギルドマスター室に再び訪れていた。
「私の目に~間違いはなかったです~!」
「とても可愛らしいと私は思いますよ」
コウの特徴的な青い髪はストレートロングの金髪へと変わっており、服も男物の簡素な服で全身を覆う青色の外套を身に纏っていたが今回は駆け出しの女性冒険者を装うために上半身は可愛らしい服の上に革鎧を纏って下半身はひらひらとしたミニスカートを履いている。
正直言ってすごく恥ずかしい。
こんな姿をジールに見られてしまえば確実に弄り倒してくるだろう。
幸いにもジールがいないのが救いであるが目の前で笑いをこらえているディザーにはジールへ女装したことを話させないようにする必要がありそうではある。
イザベルとライラに関しては何故か完璧に一仕事を終えたような表情をしており、絶賛されているが何も嬉しくはない。
「よし...では囮役は今から簡単な依頼書を持って裏路地に行け」
「演技は大事ですよ~!」
「コウさんなら出来ると信じてます」
「はぁ...やりたくない...」
これも白薔薇騎士団の新人団員や新人の女性冒険者達のためだと思いコウは応援されつつ、ため息を付きながら重い足を動かして冒険者ギルドの外へ出ていく...。
■
王都内で多々行方不明事件が起きているので冒険者ギルドから新人の女性冒険者達にあまり路地裏などの暗い場所を夜に歩き回らない様にという話がされているため、ここ最近は裏ギルドの者達も誘拐するのに苦労していたりする。
「おっ...今日はいるじゃねぇのよ」
(釣れたな)
今現在、女装したコウは清掃用の箒を持ってわざと暗い路地裏を歩き回りながら掃き掃除をしていたが裏ギルドの者達から見れば明らかに鴨が葱を背負って来た感じである。
「よっと...お嬢ちゃん。こんな暗い場所にいるとあぶねぇのよ」
軽く掃き掃除をしていると建物の上から黒い外套を身に纏いフードを深く被った男が飛び降り現れたため、コウは演技をするかのようにわざとらしく大きくビクッと肩を震わせ驚いた顔をする。
深くフードを被っているため相手の顔は分からないがきっと裏ギルドの者だろう。
「ほらほら 今からおじさんが良い場所まで連れてってやんのよ」
男は手に目隠しと猿轡に使うであろう黒い布切れと両手両足を拘束するための鉄の手錠を持ってじりじりと近づいてくる。
その場から声を出して逃げ出そうと思ったが声を出してしまっては男だとバレてしまうので敢えて口をパクパクとさせるなど表情をして演技しながら普段よりもグッと走る速さを抑えながら路地裏から逃げ出すように走り出した。
「おっ?追いかけっこは嫌いじゃないのよ」
土地勘がわからないため、とりあえず路地裏をあちらこちらに向かって走り続けているといつの間にか袋小路になっている場所へと辿り着く。
「さぁ...追いかけっこも終わりなのよ」
袋小路になった場所に到着したということでこれ以上無駄な抵抗をしなくて済むようになり、コウはバレないよう無理やり欠伸をして目に涙を溜め後に振り向いて素直に両手を上げて降参のポーズをすることにした。
これでとりあえずは諦めた女性冒険者に見えるだろうか。
「それにしてもあんまり声を出さないのよ」
(あれ?もしかしてばれそう?)
「そういえばお貴族様は何も言わない従順な子が好きって言っていたのよ」
コウが喋らないことに一瞬だけ疑問を抱いたようであるが目の前の男は雇い主の言っていたであろう言葉を思い出したのか納得し、一瞬だけヒヤッとしたコウは心の中でホっと一息をつく。
そしてコウは目隠しと猿轡を受け入れて手足を拘束されると裏ギルドの者と思われる男に肩で担がれながら路地裏を走っているのか何処かへ運ばれていく。
運ばれている間は男から色々なことを暇つぶしとして話されたがそこまで大した情報は得られなかった。
また目隠しをされているので今の場所は分からないが外にいた時に聞こえていた風の音などはなく、コツコツと歩く音が反響するような音に変化し、女性のシクシクと泣いている声や助けを求める声が聞こえてくるのできっと集められている場所に到着したのだろう。
「ふぅ~これで今月のノルマは達成なのよ」
ギィっと鉄の何かが擦れるような音がした後に突然、コウは布団とはいえないが何か布のような物が敷いてある固い板の上にドサっ降ろされる。
目を覆うように付けられた黒い布と声を出さないように付けられた猿轡、そして手足に付けられていた鉄の手錠を取り外されたのできょろきょろと周囲を確認するとそこは薄暗い地下牢のような場所であった。
「じゃあ買い手がつくまで待ってんのよ」
男が鉄格子の扉に鍵を掛けると同時に何処からか大きな爆発音が鳴り響き、地下牢が揺れてパラパラと天井から細かな石が落ちてくる。
この大きな爆発音と振動はきっとディザー達がこの集められている場所の外で敵を燻り出すために暴れだした証拠だろう。
(それにしても派手にやりすぎじゃないか?)
大きな振動によって天井から細かな石がパラパラと落ちてくるのでここは崩れたりしないよな?と思ってしまう。
そんなことを考えていると鉄格子の扉前を複数の黒い外套を身に纏った男達が走り急いでどこかに向かっているのが見えた。
「なんなのよこの騒ぎは!?」
コウを連れてきた目の前の男もこの騒ぎがなんなのか気になっているようでそのまま複数の男達が走っていった方向へと向かって同じ様に走り出していってしまう。
暫く、待っていると裏ギルドの者達も出払ったのか足音は聞こえず女性冒険者の声しか聞こえなくなったのでそろそろコウも行動することにした。
(行ったみたいだな...俺も行動するかな)
意思疎通のために付けている小さな青い水の雫の形をした宝石が装飾されたイヤリングと真っ黒なチョーカーは物珍しい装飾品だと思われていたのか外されずに済んだのは運が良かったといえる。
まぁ新人の冒険者が高い魔道具を持っていると思わないのだろう。
もし外されていたらこの世界では意思疎通が筆談だけになってしまうため捕まっている者達を救出するのは苦労してしまう。
収納の指輪に関してはもし相手が知っていてバレると厄介なために先に取り外してミニスカートの裏側にある隠しポケットの部分へ落とさないように紐で括り付けて隠しており、紐をちぎって取り出すと指に嵌め直す。
そしてコウは収納の指輪から相棒のサンクチュアリを取り出すと鉄格子の扉を斬って壊し、ディザーとの打ち合わせ通り女性冒険者を救出するため行動開始するのであった...。
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