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213話

 翌日、コウ達一行は朝早くから馬車に乗ってとある場所へと向かっていた。


「もう少しで王都に到着しますよ」


 小窓から顔を出して馬車の中を覗く御者からコウ達が向かっていた目的の場所を告げられた場所は王都。


 馬車についている窓から外を見ると少し前に帝国と戦争したばかりだというのに既に城壁などが完璧に復興された状態の王都が見えてくる。


 また以前のようにやたらめったら置かれていたバリケードは見当たらず、城壁に配置された投石機や王国兵士達も数は少なくなっていたりした。


「わぁ~久々に来ましたね~」


「ここに来た時は戦争中だったもんな」


「キューイ!」


 何故、コウ達が王都に向かっていたかというとローランの親しい人達へロスガニアのお土産は既に渡し終わったということでイザベルやエリスなどの親しい人物にもお土産を渡しに来たのだ。


 まぁそれ以外にも現状、王都で起こっているという誘拐事件にイザベルの白薔薇騎士団が被害を受けていないかなどの確認も含めてというのもある。


 城門の近くに到着すると馬車はゆっくりと停止して外に出てBランクということで特別入口に向かい受付を行うもすぐに入ることが出来たので高ランクというのはやはり素晴らしいものだと実感する。


 そしてコウ達は白薔薇騎士団が拠点としている屋敷へと向かい貴族街を抜けて到着するといつもよりも門番の人数が多くなっており、一部見ない顔もいたりしたのでもしかしたら新しくクランに入った者達なのかもしれない。


 とはいえいつものように男勝りの女性であるミルサも門の前に立っていたがコウ達に気づいたようで手を振られたので振り返す。


「やぁ久しぶりだねコウ君」


「あぁ久しぶりだなミルサ。イザベルはいるか?」


「今なら暇していると思うよ。団長の元へ案内しよう」


 普段は何かしらの面会状がなければ門を通すことはないのだが、今回はすんなりと男であるコウを通しているのでそれを見た他の新しく警備している者達は不思議そうな顔をしていたりする。


 何故、コウがすんなりと門を通れたりするのかはイザベルがミルサに対してコウが来た際には基本的に丁重に持て成すように言われているためであるのだが、コウ本人はそんなことは知らない。


「警備する人が多くなったな。ミルサも偉くなったのか?」


「あぁ最近は物騒だからね。私も警備隊長とかいうのになってしまったよ」


 どうやら最近、王都で起こっているという誘拐事件に対して不安を抱えている団員も多いらしく、そのため警備する人数を増やしているらしい。


 またその警備をするにあたってまとめる人間が必要ということで長年、白薔薇騎士団の門を守ってきたミルサが評価されたため、それなりの立場の人間になってしまったようだ。


 ただ前と違って色々と人を指揮やまとめたりする立場になってしまったためなのかそれなりに苦労が多いようでなんだか少し疲れた顔をしてしまっている。


「まぁこれでも食べて元気出せよ」


「串焼き?よくわからないけどありがとう」


 元気が出るようにミルサへ串焼きのお土産をここでも取り出して数本手渡し、食べながらあまり他の団員に話せないような愚痴を聞き、広い庭園を歩いていると目的の場所である屋敷へと到着する。


 屋敷周りにいる白薔薇騎士団の団員は見知った顔も多くコウやフェニのことを覚えてくれていたようで手を振られたり、フェニはおやつとして食べている甘味などを貰ったりして快く受け入れられていた。


 屋敷の中に入ってイザベルの部屋に向かうため、ホールにある綺麗に清掃された中央階段を登っていくが屋敷内にいる人はいつもよりも少ない気がする。


「団長。コウ君が来たので案内したのですが開けてもよろしいでしょうか?」


「勿論いいですよーどうぞー」


 ミルサはコンコンとノックした後に入っていいか確認すると今回はすんなりと部屋の中に入っていいと軽快な返事が返ってきた。


 以前は部屋の扉を開ける前に何故か少しだけ待たされ、中からはイザベルがエリスに指示を出してバタバタと音を立てながら片付けをしていたが今日は違うようだ。


 部屋の中に入ると目の前にある机の上には前みたいに山積みのような書類はなく、綺麗に片付けてあるのですんなり通された理由が何となくわかった。


 椅子に座っているイザベルは後ろにある窓から入る太陽の光が銀色の髪を照らし輝かせながらゆっくりとお茶を飲みながらリラックスしている。


 ただいつも小判鮫のようにぴったりとイザベルの近くにいるはずのエリスがいないのはなんだか珍しい。


「皆さんお久しぶりですね。お掛けになってゆっくりして下さい」


「あぁ久しぶりだな」


「お久しぶりです~会いたかったですよ~」


「キュイ!」

 

 各々は久しぶりということで挨拶を交わしながら座ることを高そうなソファへと腰を掛けるとイザベルが持て成すように黄金色の良い香りのする紅茶を淹れてくれた。


 少し歩いて喉が乾いていたため、ティーカップを持って口に運び一口飲むと少しだけ苦味を感じてしまい口元が少しだけ歪んでしまった。


「やっぱり苦かったですか?すみません少し淹れるのが苦手で...」


 どうやらいつもはミルサに給餌を任せているためなのか自身は紅茶を淹れるのが苦手らしく少しだけしょんぼりと肩を落としながら謝罪をしてきた。


「そんな気にすることじゃないと思うけど」


「そうですよ~私なんて淹れれないですからね~」


「淹れれないんだったら練習したらどうだ?」


 ライラの一言にツッコミを入れるとその場の空気は和み、申し訳無さそうな顔をしていたイザベルも笑顔に変わっていた。


 それにしてもイザベルにも苦手なことがあったりするんだなぁと思い意外な一面を見れたのはなんだか得した気分である。


「あぁそうだ忘れてた。これお土産な」


「わぁ...可愛らしいものですね。ありがとうございます」


 思い出すようにコウはロスガニアで買ったお土産である羽ペンを立てるための木彫りで出来た猫のスタンドを収納の指輪から出して手渡すと喜んで受け取ってくれたので買ってきてよかったと思える。


 そして暫く雑談としてロスガニアの土産話をしていたが、いつもよりもイザベルの声に元気が無いような気がし、聞いて入るのだが他に悩み事でもあって他のことが気になっているのか若干、上の空であった。


 そしてイザベルの顔をよく見ると目の下に若干だがクマのようなものが出来ているので疲れているのかもしれない。


 そんな疲れている状態の時に来てしまったのはもしかしたらあまり良くなかったのではないだろうか。


「なんかいつもより元気ないな」


「何かあったんですか~?」


「キュイキュイ?」


「えぇすみません。少し悩み事が...」


 イザベルの様子が普段よりも上の空であり、コウだけではなくライラやフェニも疑問に思っていたようだ。


 今まで友人として付き合った時間は短いが、もし何か悩みごとがあるのならば話を聞くぐらいはしてあげたい。


 ただ大方コウの中ではイザベルの悩み事について予想がついており、白薔薇騎士団の屋敷へ入る前に門番の人数を増やしていたり、エリスが見当たらないあたりきっとここ最近王都内で起きている女性冒険者を狙ったものなのだろうと予想できていた。


「だったら俺達も頼ってくれ。そんなに頼りないか?」


「そうですよ~!話したほうが楽ですよ~」


「キュイキューイ!」


「皆さん...ありがとうございます」


 コウは恥ずかしそうに言うとライラ達もうんうんと頷きながら同調し、そんなコウ達の言葉に少しだけ肩の荷が降りたのかぽつりぽつりと白薔薇騎士団の現状を話し始めていく...。


いつも見てくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m


次回の更新は7月26日になりますのでよろしくお願いします。

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