205話
コウ達はロスガニアにある冒険者ギルドへ到着すると建物の路地側に取り付けられた小窓からライラとリアムの2人が並びながらこっそりと中を覗き込む。
そんな2人は街中の一般人達から見たらかなーり怪しい人物達に見えてしまうだろうか。
「コウよ。我の隣が空いているぞ」
「早く並んでください〜」
「わかったわかった。俺も見るって」
ちょいちょいと指を折り曲げするリアムとライラに呼ばれるので恥ずかしながらも狭い路地へと入り、一緒に並んで小窓を覗いていく。
屋内には様々な獣人の冒険者達が動き回っているので注意深く中を見渡しながらツェリを探すも見当たらない。
「今日はいないんじゃないか?」
「依頼中ですかね〜?」
「む...!いたぞ!」
1番に見つけたのはリアムのようで小声で喋りながら酒場のカウンターに向かって指をさす。
指をさす方向に視線を向けるとそこにはのんびりと酒場のカウンターでダラけながらミルクをちびちびと飲むツェリの姿がそこにはあった。
流石はツェリのことが好きなリアムであり、よく見つけられたことに感心してしまう。
「ふむふむ〜ツェリさんはミルクが好きかもっと〜...」
ライラは少し前に賭けで勝ち取った収納の袋からインクがついた羽ペンと紙を取り出し、さらさらとメモし始める。
暫くツェリの様子を見ているとミルクを飲み切ったのか酒場のカウンターから離れて冒険者ギルドの出入り口に向かっていた。
「む...何処かに行くみたいだぞ」
「後を追いかけてみましょ〜」
ライラは収納の袋から深く被れるような帽子を取り出して被り、ライラは軽い変装しながらコソコソと建物の物陰に隠れながら尾行をしだす。
その2人の姿を見たコウはストーカーというやつではないだろうかと思ってしまう。
「バレるので〜コウさんもこっちに来てください〜」
「俺はいい...もがぁっ!」
コウはコソコソとしている2人の後ろをついてゆくように道の真ん中を歩いていると唐突にライラから腕をぐいっと引っ張られ、ふくよかな部分に吸い込まれていく。
力強くだきしめられているためか鼻と口を強く押さえられ息ができない。
しかも引き剥がそうにも魔道具である手袋を嵌めているライラに力で勝てるはずもなく、もがきながら背を叩くしかない。
「もぉ〜暴れないでくださいってぇ〜」
「ぷはぁ!息ができなかったんだよ!」
「我の横で乳繰り合うでないわ」
もがきながらライラの背を叩くと何とか解放してくれたので新鮮な空気を目一杯吸い込み息を整えていた。
そんな2人のいちゃつきをジト目をしながら隣から見つめるリアム。
そして周囲を歩く獣人の男達は羨ましそうに見ていたようだが、一部のパートナーを持つ者は叩かれていたり、足を踏まれたりしている。
「隠れないと今度は離さないですよ〜?」
「わかったからその手を戻せ」
ライラはコウを脅すように手をにぎにぎとしているので素直に言うことを聞くことにした。
ツェリとの距離を一定に保ちながらついてゆくと次に辿り着いたのは大きな煙突がもくもくと煙を出す鍛冶屋であった。
「鍛冶屋って何しにきたんだ?」
「冒険者ならお世話になるとこですよ〜」
一般的な冒険者ならばよく世話になる場所が鍛冶屋である。
武器の刃こぼれや普段身に纏っている防具の破損、はたまた金物など様々な物を修理または修復するため多くの冒険者達が立ち寄ったりする。
「俺は行ったことないけど」
「あ〜...コウさんは普通ではないので〜」
コウが普段から愛用しているサンクチュアリや身に纏っている外套は勝手に修復するため、わざわざ鍛冶屋に行く必要があまり無い。
そのためコウは今まで鍛冶屋には立ち寄ってはいなかったのだ。
そしてコウとライラは小話しているとリアムは我先に鍛冶屋の中を見れるような小窓を探し、見つけると1人で木箱が多く積まれた不安定な足場から覗いていた。
ライラとコウも一緒に乗って覗き込むと足元は少しだけぐらついたりしたが、外部からの干渉が無ければ崩れることはないだろう。
中を覗き込むと獣人以外にも背が約1メートル程度の髭をこんもりと蓄えた小さな者達がせっせと鉄を打ち働いている。
「おぉドワーフがいっぱいだ」
「鍛冶屋ですからね〜」
別にドワーフを見に来たわけではないのでコウはツェリのいる場所に視線を向ける。
どうやらツェリは受付でドワーフに腰へ刺さっているナイフを鞘ごと渡していたので愛用の武器をメンテナンスしてもらうため、鍛冶屋に訪れていたようだ。
そんなコウは小窓から鍛冶屋の中を覗いていると空から聞き慣れた「キュイキュイ!」という鳴き声が一瞬聞こえたので空を見上げる。
「ん?フェニ?」
今日も1匹でロスガニアを散歩していたフェニが偶然にも空からコウを見つけ出会えたため、嬉しかったのだろうか。
コウ目がけてフェニが嬉しそうに急降下してきていた。
「フェニ!ちょっと待...」
急降下してくるフェニをなんとか止めようとするが残念なことに間に合わずコウの胸へフェニはダイブを決め込むと衝撃が起きたために不安定な足場がグラつき出す。
「フェニ!」「わぁ〜!」「むぉっ!?」
木箱が崩れ落ちる瞬間、コウ達は三者三様の反応をすると同時に木箱は崩れていくもリアムは持ち前の身のこなしを駆使していの1番に乗っている木箱を蹴って上手く離脱した。
しかしリアムが木箱を蹴ったためか、コウとライラの足元にあったはずの木箱は無くなり、2人も木箱を蹴って逃げようとしたが残念ながら空を切る。
そしてガラガラと大きな音を立てながらコウとライラの2人は地面へと落ちていってしまう。
「痛いです〜!」
「そんなこと言ってないで早く退いてくれ...」
「キュイイ...」
木箱の崩落が収まると何故かコウはライラの下敷きになっていたが幸いにも2人と1匹は怪我をしていない。
「なんだなんだ!って木箱が崩れてやがる!」
「本当だにゃ!...ってコウじゃにゃいか」
そして大きな音を立ててしまったため、その原因を見にきたのか鍛冶屋の中からツェリやドワーフがコウ達の前に現れた。
そのためツェリには尾行がバレてしまい後をつけるといったことは終わりを迎えるのであった...。
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