表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
203/748

203話

「てめぇはあの時のガキ!」


 獣人の男はコウを見るなり顔を真っ赤にしており、怒りの矛先が変わったのかずんずんと地面を踏みしめながらこちらへ向かってくる。


 コウとしては別にこの場から逃げだそうと思えば逃げれなくもないがロスガニアで何度も絡まれるのは面倒だと思いこの場に残ることにした。


「知り合いであるのか?」


「雰囲気で察してくれ」


「冗談である」


「何をごちゃごちゃ言ってやがる!」


 2人で呑気に話しているのが気に食わなかったようで獣人の男は目の前に立つとコウの胸ぐらを掴もうと左手を伸ばすも隣に立っていたリアムが獣人の男の伸ばした腕を掴み止める。


 コウとしては胸ぐらを掴まれた瞬間に正当防衛として反撃しようと考えていたが、まさかリアムが止めに入るとは思っていなかった。


「誰の腕を掴んでんのかわかってんのか?」


「誰の友人に手を出そうとしているのか理解しているのか?」


 両者の間でバチバチと火花が散っているのが見えるが獣人の男が相手しているのはロスガニアを治めている人物であり、なんだか可哀想に思えてしまう。


 まぁ外套を羽織り、フードをまで被っているため顔が分からないのはしょうがないし、まさかこんな場所にそんな偉い人物がいるとは誰も思わないだろう。


「俺が用があるのはお前じゃねぇんだよ!」


 そして緊迫した空気を破るように獣人の男はコウからリアムにターゲットを変え、今度は掴まれていない右手で引き剥がそうと伸ばす。


 しかしリアムは手を出してきたのを確認した瞬間、手を出される前に高速の拳を振って顎先に掠らせると獣人の男は一瞬で白目を剥いて地面へ膝から崩れ落ちた。


「やりすぎじゃないか?」


「そうであるか?」


 実際、ロスガニアの1番偉い人物に手を出そうとしていた割には気絶させられるだけで済んでいるのはまだ優しい部類かもしれない。


「レオンにでも後処理を頼むとするか」


 リアムは胸元から鈴を取り出してちりんちりんと振り鳴らすとものの数分でどこからともなくレオンが現れた。


「お待たせしました。どう致しましたか?」


 リアムの前で片足をつき、いつものおちゃらけた感じではなく真面目モードのようである。


 人前だからなのか?それとも鈴を鳴らし呼んだからなのだろうかはわからない。


「この男の"教育"を頼むぞ」


「承知致しました」


 レオンは一言だけ残すと気絶している獣人の男を担いで屋根の上へ飛び上がり何処かへいってしまった。


 獣人の男は体格がそれなりに良いはずなのに担いでよくもまぁ屋根まで飛び上がっていけるものだ。


 性格はアレだが、改めてレオンは人外じみているなと思わされる。


 因みに後日談ではあるが獣人の男は綺麗な目をしながらロスガニアのゴミ拾いをしている姿が目撃されたとかなんとか...。


「君!すっごく強いんだにゃ!助けてくれてありがとにゃ!」


 ツェリはリアム手を取るとぶんぶんと感謝しており、いつもであれば堂々とした立ち振る舞いをしているリアムは何故か下を(うつむ)いている。


「う...うむ。我は大したことはしていないので気にすることはないぞ」


「助かったにゃ!じゃあ私は今から依頼があるからまたにゃー!」


 ツェリはこれから依頼があるようで慌ただしく大通りに向かっていき、人混みに紛れて見えなくなってしまった。


「俺らも行こうか」


「う...うむ」


「ん?どうしたんだ?」


 王宮に戻るため歩き出そうとするもリアムはツェリが向かっていった方向に小さく手を振っており、話しかけてもなんだか反応が鈍い。


 ツェリと出会ってからリアムの調子が狂っているため何故だろうとコウは首を傾げると1つの答えにたどり着いた。


 もしかしたらリアムと恋話していた際に出てきた人物はツェリだったのではないかと。


「なるほど...ツェリが一目惚れの相手か。また出会えてよかったな」


「むぅ...茶化すでない」


 リアムを茶化しながら王宮へ戻っていると道の片隅に謎の人集りができていたが気にせず通り過ぎようとすると「次の方どうぞ〜」と奥から聞き覚えのある声が聞こえてくる。


「まさか...」


 人集りをかき分けていくと案の定コウの見知った人物がそこにいた。


「ライラ...何してるんだ...」


 ライラの前には木のテーブルが置かれ、その上にはそれなりの枚数の銅貨が積まれている。


 そんなライラの前には体格の良い獣人達が列を成して並んでいた。


「あ〜コウさんじゃないですか〜何って腕相撲ですよ〜」


「あぁそう...」


 どうやら先日の一件でライラはこの辺りでは有名になったようで街中をのんびりと観光していたら力自慢の獣人達が腕相撲を挑んできたとのこと。


 そして有名になったことを利用して腕相撲でお金を稼いでいるらしく木のテーブルの上に置かれているのは今まで挑んできた挑戦者達から巻き上げたものだろう。


「お互いに癖の強い身内がいて苦労するな」


 肩にぽんと手を置かれ、同情されるがリアムのいう癖の強い身内というのはきっとレオンのことだろう。


「そうだな」


 いちいちライラにつっこむのもなんだか疲れるのであまり触れずにそっとしコウはその場を離れることにするのであった...。




いつも見てくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m


次回の更新は7月5日になりますのでよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ