201話
「魔石から魔力を引き出すって言ったって魔石があるかわかんないんだろ?」
いつも使っている魔力ならば自由自在に出すことができるのだが、魔石の魔力なんてものは引き出すことはさっぱりできない。
「いや...コウは無意識であるが亜技を使えたので魔石はある可能性が高い」
しかし魔石があったとしても魔力を引き出す事ができなければ意味がない。
「じゃあどうすれば?」
「まぁ我に外套を脱いで背を向けるがよい」
言われた通りに外套を脱いでリアムへ背を向けると背中に手を置かれる。
そして次の瞬間、どんっ!と胸辺りに小太鼓を取り付け、思い切り叩かれたような衝撃が走った。
「うおっ!何するんだ!...ってなんか周りがひんやりする?」
あまりの衝撃に驚いてしまいコウは後ろにいるリアムへ振り返るが自身の周りがひんやりとしていることに気づく。
「魔石から魔力を無理矢理引き出してみたが成功であるな!」
いつも使っている魔力は冷たい流水が腕の上を通る感じであるが魔石から出ている魔力は冷気が身体全体を包み込むような感じであった。
「無理矢理って...どうやったんだ?」
「魔石がありそうな場所に我の魔力を供給してみたのだ!」
コウの体内にあるであろう魔石は使われていないためか常に上限まで溜まっており、また何かしらの原因で引き出せないように栓をしている状態のようなものだ。
そんな状態の魔石へ無理矢理、外部から魔力を供給するとどうなるか?
魔石の魔力は溢れ出るために逃げ場を探し、何かしらの原因でされている栓は強制的に抜かれてしまったため、魔石から常に魔力を垂れ流す状態となった。
「因みにコウは本当に人族なのか?」
「いやまぁ人族のはず...それよりこの魔力の動かし方が分からないんだけど」
魔石の魔力を垂れ流しているため感じることはできたが、身体を包んでいる魔力を上手く動かすことができずにコウは苦戦していた。
コツが何かないのだろうかとリアムに聞くも残念ながら慣れと想像力の一言で一蹴されてしまう。
約10分ぐらいだろうか?魔力を動かそうと四苦八苦していると段々、コウの周りにあった冷気は風に流されるように無くなっていく。
「あれ?もしかして魔石から魔力が引き出せてない?」
「もう一度我の魔力を供給してみるか?」
「あー...できれば頼む」
もしかしたら魔石に栓が再び蓋をしてしまったのではないだろうかと思いもう一度だけ無理矢理、魔石から魔力を引き出して貰うことにした。
そして再び背中に手を置かれるとリアムから魔力を供給され、同じような衝撃が胸あたりを走るも先程のように冷気は出てこない。
「どうなってるんだ?」
「ふむ...魔石の魔力が空っぽではないのか?」
確かに...リアムの言う通りコウの魔石の上限が低く既に全ての魔力を使ってしまっているなら引き出すことが出来るわけもない。
というか操作できずに垂れ流し状態だったために魔石の魔力切れも早かったのだろう。
「じゃあまた魔石に魔力が溜まるまでお預けってこと?」
「うむ。仕方ないが終わりである」
魔石へ魔力が溜まったとしても再び栓をした状態へとなってしまう筈だ。
せっかく魔石からの魔力を感じ取ることができたのにまさか上限が低くいためすぐにガス欠になって動かすコツすら掴めなかったことにコウはなんだか残念な気持ちになる。
「まぁ良いではないか。魔石があると分かっただけでも」
「むぅ...色々と試してみたかったな」
とはいえいつも自由自在に使っている魔力も使えるようになるにはそれなりに時間が掛かったのを思い出す。
そう考えると魔石の魔力も一朝一夕で使えるようになる訳も無く、自由自在に操るには時間がかかるだろう。
「根気良くやるしかなさそうだな」
「では気分転換にロスガニアを観光したらどうだ?」
そういえば依頼を終えた後は本来ロスガニアを観光しようと思っていたのをコウは思い出す。
一緒に行こうと思っていたライラはコウが亜技を教えて貰うということで既に王宮から出て観光へ行っていた。
そしてフェニも同じように単独行動をしているようで朝には窓から飛び立っていた。
コウも同じく観光へ行ってもいいが1人でロスガニアを観光するのはなんだかつまらない。
レオンに街案内を頼めば食事の件もあるために嬉々として案内してくれるだろう。
ただリアムと交友を深めるのも悪くない選択肢であるため、もし忙しくないのであればロスガニアをリアムに案内して欲しいコウは思っていた。
「因みにリアムはロスガニアに詳しいのか?」
「勿論だ。王たる我が詳しく無くてどうする」
リアムは腰に手を置き、胸を張りながら自信満々に言い放つ。
「じゃあリアムが街を案内してくれないか?」
「我は良いが...しかし街に行くと騒ぎになってしまうのだ」
「顔隠せばバレないんじゃないか?」
コウは脱いでいた外套をリアムに着せてフードを被せるとすっぽりと顔は隠れてしまう。
更に尻尾なども隠すことができるのでこれならばリアムの容姿は街中でバレにくいだろう。
「これでよし!じゃあ観光案内してくれ!」
「待てコウよ!」
リアムはコウを制止しようとするもグイグイと手を引かれながら王宮から出ていき、ロスガニアの街中へ繰り出すのであった...。
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