200話
無事に200話到達することができました!
処女作でまさかここまで書けると思いませんでした。
これも日々見て下さった読者の方々のお陰になります!
ありがとうございました!
次回の更新は6月29日になりますのでよろしくお願いします。
リアムは一国の王だ...それはもうとんでもない条件に違いない。
亜技を教わる代わりとしてどんな条件を言われるのかコウはごくりと生唾を飲み込み覚悟して身構える。
「うむ...そのだな...」
ただリアムが条件の内容を言おうとするもなんだか歯切れが悪い。
そんな言いづらい条件なのだろうか?
流石にライラやフェニが欲しいとかいう話であるならば亜技は諦めて断るしかない。
そうこうしているうちに扉の奥からガラガラと何かを運ぶ音が聞こえてきた。
そして次々とコウの目の前に湯気がふわりと立ち昇る料理が並べられてゆく。
「そんな難しい条件なのか?」
運ばれた出来立ての温かい料理をもぐもぐと頬張りながらコウは質問を投げかけた。
「そのだな...ゆう...んが欲しいのだ」
「え?すまん聞こえなかった」
肝心の部分が小声になってしまい聞き取れなかったのでコウはもう一度確認する。
「我は友人が欲しいのだ!」
友人?友人ってあの友達とかいうやつだろうか?
このロスガニアという大きな国を治める者がまさかそのようなことを悩んでいたとは思ってもいなかった。
もしかしたら今まで下手に出なくていいなど言っていたのは彼なりにフランクな接し方をしようとしていた努力なのかもしれない。
友人が欲しいとはなんだか年相応であったためコウは抑え気味に笑ってしまった。
「むぅ...我は何か可笑しいことを言ったか?」
リアムはむすっと頬を膨らませ、コウの反応に不満そうな表情を表した。
「いや...変なことは言ってない。俺でよければ是非友人になって欲しい」
コウはリアムにそう答えると先程まで不満そうに膨らませていた頬は元に戻り、今度は口元が緩み嬉しそうな表情へと変わっていた。
「でもいいのか?もしかしたら俺が悪い人族かもしれないだろ?」
リアムは一国の王なのだ。
その立場を利用しようとする者は多いはずであり、コウはそのようなことはしないのだが、心配のために一応警告しておく。
「勘というやつだ。しかも我の目は良いぞ?」
一国の王なので人を見抜く力が長けているのかもしれない。
確かにレオンを筆頭に王宮内で勤めている者達は基本的に優秀な者達が多く、人族である自分達にも分け隔てなく優しくしてくれていた。
レオンの性格はあれだが...。
「コウよ!明日から亜技を教えるからな!」
「あぁまた明日よろしくな」
リアムは気恥ずかしさを隠すようにその場から離れ、コウは並べられた食事を食べていると今度は代わりとしてレオンが入ってきた。
「あんな嬉しそうな陛下を久々に見たよ。ありがとう」
「レオンさん?どうしたんだ急に...」
レオンは頭を下げながらお礼を言うのでコウは目を丸くしてしまう。
「それはね...」
レオンの口から話された内容はこうだ。
リアムの年齢はまだ若く、同年代の友人はいなかったらしい。
いなかったというよりかはできなかったが正しい。
このロスガニアには貴族制ではないため貴族はおらず友人になれるような同年代はいない。
またロスガニアの民である同年代の獣人と仲良くしようにも敬われるばかりで親しい友人すらできなかった。
そしてローランに出向いていたレオンから帰りの報告で同年代、実力もそれなりにあるコウと出会ったという話を聞くと嬉しそうにしていたらしい。
「だからこれからも是非仲良くして欲しいかな?」
「過保護な親みたいですね〜」
「私にとって可愛い男の子は保護対象だからね!では失礼!」
嵐のようにレオンは去ってゆき、残されたのはコウとライラそして寝ているフェニだけだ。
「やっとゆっくり食べれそうだ」
「これとか美味しかったですよ〜」
先に食事を終えたライラと雑談しながらロスガニアで初めて食べる料理を楽しみつつ、時間は過ぎてゆくのであった...。
■
翌日の朝。朝食を終えた後にコウは手合わせを行った場所に来るようにリアムから言われていた。
「コウ!こっちだぞ!」
「あぁ今行く!」
既にリアムは待っていたようであり、大きな声で呼ばれたためつい小走りで駆け寄ってしまう。
「じゃあ今日からよろしく頼む」
「うむ!我に任せたまえ!」
亜技を教わる人物としてはこれ以上にないくらいの人物なので大船に乗ったつもりになってしまう。
「まず亜技とは己の肉体に魔力を浸透させることによって使えるものだ」
「見た目も変わるみたいだな」
「うむ。獣人は見た目が獣寄りになるのだ」
リアムは実演するかのように亜技を使って左手の見た目を変化させてゆく。
「ではコウよ。人族が亜技を使えなくて獣人である我が使えるのが何故か分かるか?」
よく考えてみるも人族と亜人の違いなんて見た目ぐらいしか変わらない。
では魔力どうか?
リアムは獣人にしては珍しく魔力を持っているが人族と獣人の魔力は違いがあるのではないだろうか?
「魔力の質とか...?」
「ほぅ中々良いところを突くではないか」
リアムは感心したようで人族と亜人が使用する魔力の違いと魔力の作り出し方を詳しく説明してくれた。
まず人族は基本的に大なり小なり魔力を持っており、また魔力を作り出す器官がある。
そしてその器官から作り出された魔力は基本的に魔法や魔道具などに使用するようにできているらしく肉体に浸透させても特に何も変わらないらしい。
それに引き換え亜人...いや獣人は魔力を作り出す器官はない。
では何故、リアムが魔力を必要とする亜技を使えるのか。
「魔力を持つ亜人には魔石が身体の中に持っておる」
「魔石って...あの魔石?」
「うむ。魔物の体内にある魔石だ」
魔力を持つ亜人は体内に魔石を持っているため、その魔石の魔力を引き出して亜技が使えるのだとか。
ではその魔石から使用する魔力の性質はどうなのか?
魔石からの魔力は肉体に浸透させると肉体へ結び付くようになるらしい。
また魔道具や魔法なども使えるため万能魔力と言った方がわかりやすいだろうか。
「でも魔石って魔力が空っぽになったら終わりだよな?」
「それが魔石は身体の中にあるとこの世界の魔力を蓄えるみたいなのだ」
この世界には人の身体から作り出した魔力とは違う魔力が満ちているようだ。
その魔力が魔石へと供給されるため魔力が尽きることはないとのこと。
まぁ魔力の供給には時間がかかるし上限もあるらしい。
「つまり大自然の力であるな」
「じゃあ俺の中にも魔石が?」
「胸を切り開けば答え合わせができるが...」
コウの胸にリアムから とんっと亜技を使用している左手を置かれ、驚きながら飛び退いてしまった。
「ははっ!冗談である!では魔石から魔力を引き出して貰う」
座学は程々にして次はコウの中に魔石があると仮定して亜技に使用するための魔力の引き出し方を教えて貰うのであった...。




