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2話

 コポコポと音を立てて気泡のようなものが下から上へと昇っていく培養槽の前に1人の青い髪の男が青色の本を片手に立っていた。


 それは何処かの青年の夢の中の光景と同じであり、前回と違うところといえば青色の本を持ち、これから何かをするとこなのだろう。


「魔法を発動させる」


 青い髪の男が青色の本を開き片手に持ちながら一言呟くと同時に、開いた本の文字が少しづつ光輝き、持っている本の背表紙へと少しだけ皺ができていくので男の手にも力が入っているのが感じ取れる。

 

 この男が一体何をしているのか?ただ男は真剣な顔で培養槽の周りに描かれた見たこともない模様に異常が起きないかどうか見渡していた。


 その見たこともない模様は均等に描かれているため、例えるならば魔法陣というのが正しいだろう。


「これでまた...自分の寿命を犠牲にしてもなんとしても...」


 男は魔力を高め魔術を発動させると培養槽の周りに書かれた魔法陣が輝き、培養槽の中に入っている液体がボコボコと泡が立っていく。


 目を開けられないほどの輝きが部屋を包み込むと培養槽の中に入っている少年の身体がビクンと痙攣するように反応し、少年の背中側へ魔法陣が少しずつ刻まれていくと同時に培養槽の周りに書かれた魔法陣が少しずつ消えていく。


「うっ...まだか?早く見つかってくれ...」


 男は苦しそうにしながらも魔法の発動を止めずに持っている本が端から燃えていき、何かを焼き炙った鼻につく様な匂いが周囲には広がっていく。


 その不快な匂いの正体は今も燃え続けている本を持っている男の手のひらの皮が焼ける匂いだろう。


 培養槽の少年の背中に魔法陣が完全に刻まれると本も燃え尽き、また周りに書かれた魔法陣も消えると同時に少年の両手がピクピクと動き口から少量の泡が漏れる。


 これではまるで死んでいたものが生き返ったような...そんな気がする光景だ。


「ふぅ...背中の魔法陣も完璧だ。後は経過を観察して成功していることを願うだけだな」


 そう男は呟くと近くにある木製で出来た、揺り籠のような椅子に疲れたように座り、息を吐くと少しだけ仮眠するような感じで目を瞑る。


「まだ時間が掛るはずだ...」


 何かを待つように男は少しづつ意識を手放し寝息を立て、泥のように眠ってゆく...。


 暫くすると海に落ちた青年の意識が少しずつ戻ってきた。


 どれぐらいの時間がたったのかは青年にはわからないのだが、海に落ちたのに意識が戻るというのはまだ生きているという事だ。


 それだけは青年の薄い意識の中でも理解ができるのだが、体が羽のようにフワフワとし浮いているような感覚なのは違和感を感じる。


 目を開けようにも瞼がまるで重りでも付けられたような感じのためか目を開けられずにいた。


(なんだろう...眠たい...もう少しだけ眠ろう...)


 青年は心の中でそう呟きながらまた深い眠りの底へ意識を引きずり込まれるのであった...。


「そろそろの筈だ...早く目を開けてくれ」


 魔法を発動してどれくらいの時間がたったのか...少なくとも数日は経過しているようだ。


 青い髪の男は、まるでピクニックの前日のようにそわそわとし、培養槽の前に立ちずっと青い髪の少年を見つめ続ける。


 男の手のひらは白い包帯のようなもので巻かれており、本が燃えた際に怪我をした火傷だろうか?


 魔法を発動させる前は培養槽の中でゆらゆらと死体のように浮かんでいただけなのだが、今は謎の液体に浸かりながらも肩で呼吸しているのがわかる。


 そして青い髪の男の子の目が瞼が少しだけ動き出し薄っすらと開きだす。


「おぉ...目が覚めたか!成功だ!私は間違っていなかった!」


 震えるように拳を握り、培養槽の前で男は喜び目には少しだけ嬉し涙を流すと腕でごしごしと拭っていく。


 ピシピシと培養槽にヒビが入っていき、ヒビの入った部分から培養槽の液体が少しずつ漏れて無機質な床を濡らしてしまい、後の掃除が大変そうだ。


 そして最終的には、パリーンッ!とガラスが割れる音と同じ様に大きな音を立て青い髪の少年が部屋の床に培養槽の液体とともに落ちてくる。


「おっと...危なかった...大事な息子に傷をつけるとこだった」


 男は落ちてくる少年を自分の体で受け止めながら大事そうに抱えた。

 

 普通だったら培養槽のガラスや培養槽の液体が降りかかる筈だが、男と少年には降り掛かってこない。

 

 2人を囲うように障壁のようなものが出来ており、きっと男が何かの魔法を使ったに違いない。


「おかえり...息子よ...」


男は愛おしそうに培養槽から出てきた少年を大切に抱きながらそう呟いたのであった...。


(うっ...体が重い...)


 海から落ちた青年はそう思いながら目を薄っすらと開く。


 ずっと目を閉じていたためか視界に入る景色がぼやけて上手く見えない。ただ自分が海に落ちて溺れたはずなのだが意識があるということは生きているということを理解していた。


(なんだろう...)


 少しずつ目が慣れてきたのか視界がはっきりとしていく、そして青年は驚愕した。


 なぜなら青年の目の前はガラスのようなもので囲まれており、首や身体を動かせなく足先が床についているような感覚もない。


 この状態で驚かない人は自分の感情を失った者ぐらいではないのだろうか。


 容器の外には自分よりも遥かに年上で青い髪をし、西洋人のような見た目をした男が立っており、自分が起きたことに関してとても喜んでいるのがガラス越しにわかる。


 目の前のガラスにヒビが入っていきパリーンッ!と大きな音をたて割れるとそのまま謎の液体が出ていく方向に力が入らないため抵抗もできず吸い寄せられ青年は容器の外へ液体と一緒に落ちていく。


 容器のガラスが散らばった床に身体は落ちていくと思い衝撃に添えるべく強く目を閉じる青年だが、実際は痛みも感じず誰かに受け止められるような感覚が身体を包む。


「◆◆◆◆...◆◆◆◆...◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆」


 男が自分を抱きかかえながら謎の言語を呟くとコウは目を薄っすらと開き周囲を見渡す。


 日本では聞いたこともない言語を聞きくと青年の頭の中で必死に言語を理解しようとするのだが理解できず、目を動かして周りを見ると自分の周囲は謎の障壁のようなものが出来ていた。


(なんて言ったんだ?なんだあのガラスのような物は?いつできたんだ?)


 さっきまで男の立っている場所にはそんなものはなかったのを知っているだが自分が落ちるまでの間、目を瞑っていた為に何が起きたのか青年には全く理解が出来なかったし多くの情報で混乱する。


「◆◆◆◆...◆◆◆...」


 男が再び謎の言語で優しく青年に語りかけてくる。


 まぁ実際には何を言ってるのかわからないが青年は自分に喋りかけてきたんだと理解でき、現状無防備な自身にこの男は何もしてこないため外敵ではないのだろうと思う。


 そして安心すると急に睡魔が青年を襲い、男に抱きかかえられながらも再び意識を手放しつつ、深い眠りに落ちていくのであった...。

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