176話
暗がりから出てきた男達はどう見ても雰囲気からして常人ではない。
まず真ん中で立っているリーダー的な存在の男は腰元に長剣を2本身に付けており、茶短髪で年齢は30代後半ぐらいの傭兵といった雰囲気を感じ、何処かで見たなと思ったら傭兵や冒険者達をチャリオットに乗って率いている者であった。
右隣にいる者は腕に小型のクロスボウを装着し、おかっぱで誠実そうな青年に見えるが腰元にある幾つもの小瓶には先程の矢尻に塗ってあった毒のようなものが紫色の液体が入っており、矢を撃ってきた張本人で間違いないだろう。
最後に左隣にいる男はイザベルと同じく長髪の銀髪であまり喋らない無口そうな男であり、口元を黒いマスクで隠しているので表情はわからない。
ただ両手には子供一人分の大きさをした縫い針のような針を持ち、両方の縫い針の根本は鎖のようなものでお互いに繋がれて既に何人かを殺しているのか針の先端から新鮮な赤い血がぽたりと地面に滴り落ちていた。
「もしかしてあいつらか?」
「うむ。彼奴らだな」
「私は狙われているようですね」
3人の話を聞いている限り、イザベルは誰かから狙うように指示されているらしい。
「誰かから恨みを買ったりしたのか?」
「記憶にはないですけど...」
イザベル本人は恨まれるようなことはしていないと言うが嫉妬されることは多いだろう。
貴族であり、冒険者としても活躍しているのだから知らず知らずの内に恨みを買っていたりしてもおかしくはない。
「というか何処かで彼らを見た気がしないでもないですね...」
「知り合いなのか?」
「う~ん...あぁ思い出しました!彼らは確か元Aランク冒険者だった者達ですね」
イザベルは過去の記憶を思い出すように考える素振りを見せるとすぐに思い出したようだ。
目の前にいる3人組は過去に冒険者をしていたらしくAランクと中々に高ランクの人物であった。
とはいえ何故、そんな人物達が"元"になるのか?普通ならば多少素行が悪くても剥奪されることはない。
話を詳しく聞くとどうやら彼らは高ランクで実力があったが、各々はあまり人には言えないような残酷な犯罪を起こしてしまっために冒険者の権利を剥奪され、今は犯罪者として追われる身になったらしい。
ここ数年、姿を現していなかったため何処に行ったのか見つからなかったが帝国側へと逃げ隠れていたようである。
そんな彼らの情報は真ん中のリーダー的な存在の男は"狂剣ラルドロフ"。
そして右隣の小瓶に毒を詰めている男は"調毒師リィン"。
最後に左隣の無口な男は"血針のルッチ"と呼ばれている男達である。
「あちゃ~バレちゃったっすね」
「まぁ良いじゃねぇか。とある貴族様が俺らを無罪にしてくれるらしいからよ」
「...無意味」
彼らの背後には貴族がついているらしく残酷な犯罪を無罪に出来るという事はそれなりに力があって名のある貴族となる。
多分だが、帝国軍の動向を見逃して跳ね橋を掛け、城門を開いた"裏切り物"は王国側から帝国側へ寝返った貴族であり、彼らの背後いるはずの貴族と同一人物だろうか。
つまり彼らさえ捕らえれば情報を吐かして背後の貴族に繋がる筈である。
「ふむぅ...では私が狂剣の相手をしようかの」
「ほぉ~過去最強と言われた王国騎士団 元団長のダグエル様が俺の相手をしてくれるとは嬉しいねぇ」
どうやらダグエルは同じ剣使いとしてリーダー格であろう狂剣ラルドロフの相手をするらしく、お互いは腰元にある得物を抜く。
コウは闘技大会でダグエルと手合わせした際、ただの爺さんだと思っていなかったがまさか王国騎士団 元団長という人物と聞いて驚きの話である。
「ほっほっほ 過去の話ですな。とりあえずは目の前の小僧を手解きするかの」
「ほざけ!老兵が!」
お互いに軽口を叩き合うがすぐに目つきが変わり、ダグエルとラルドロフはぶつかり合うように剣を交えると硬いもの同士がぶつかる大きな音とともに周囲の空気が震え、風が巻き上がる。
剣の打ち合いを見る限り、過去にダグエルと闘技大会で手合わせした際はかなり手加減をされていたのが見て分かる。
お互いに好敵手を見つけたかのようにニヤリと笑みを浮かべながら楽しそうに何度も打ち合っているのでそのままダグエルに任せておいた方が良さそうではある。
「...銀髪を捕縛」
「いやいや!ルッチさん絶対に殺すじゃないっすか!あの強そうな子供を殺ってくださいっす!」
「...いいだろう」
残された元Aランク冒険者の2人はイザベルをどちらが捕らえるか話をしているようだが、とりあえず話はまとまったらしい。
コウも昼間に多くの人へ目立つような大規模な魔法を使用している為、見た目に騙されず目の前の2人には警戒はされているようだ。
「コウさんはルッチと呼ばれる男をお願いします」
「ん...わかった。殺したら駄目だよな?」
「そうですね。なるべく情報は欲しいので殺さないでいただけると嬉しいです」
こちら側も話がまとまり相手が決まったが、この場では既にダグエルとラルドロフが戦いを始めている為に場所を変える必要があるだろう。
「じゃあ可愛い女の子は僕とデートっすね!」
「はぁ...気色悪いですけど移動しますか」
「おかしいっすね~昔は喜んで色んな女の子が付いてきたのに...」
その場から消えるようにイザベルとリィンは街の大通りへと移動し、取り残されたのはコウとルッチの2人であり、顔の半分は隠されているため表情は分からないが視線からわかり易い程の殺意が伝わってくるので相手はやる気満々のようだ。
「...ついてこい」
同じ様に場所を変えるためルッチと呼ばれる男は一言呟くと街の中へ歩いて行くのでコウは警戒しつつも見失わない程度の距離を保って後をついていくのであった...。
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