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165話

 時は経ち3日後、イザベルが王都に拠点としている白薔薇騎士団の屋敷に一通の手紙が届く。


 それはコウが数日前に書きイザベル宛に出した手紙であり、無事に届いたようだ。


「イザベル様。コウさんから手紙が届きました」


「あら?珍しいですね。なんでしょうか?」


 イザベルはエリスから手紙を受け取り、封蝋されている部分を剥がすため裏へひっくり返して見るとそこにはきらきら光るラメが散りばめられた真っ赤な花の形をした封蝋で閉じられており、手紙の端には拙く書かれたコウの名前がある。


「ふふっ可愛いらしい封蝋ですね」


 手紙を傷つけないようにペーパーナイフを封蝋の部分へと差し込み開いて中身を確認する。


 最初はコウから初めて手紙が来たということなので少しうれしい気持ちだったのだが、中身の内容についてはそんな恋文的な甘い内容ではなくむしろ眉をひそめるような内容であった。


 その内容についてはライラの故郷であるクルツ村が帝国の貴族に雇われた傭兵に襲われたことやモーガスという貴族が裏に関わっていることなどについて書かれており、近々起こるはずの帝国との戦争へ行く際には一緒について行って良いかということだった。


「私の知らないところでそんなことが...」


 つい先日起きた出来事がイザベルのところまで情報がいってるはずもないのであり、親しい友人で恋仲間でもあるライラの故郷が襲われたとなると腹立たしく今すぐにでもモーガスへ文句を言いに行きたいところだ。


 とはいえ文句を言いにいったところで傭兵達が証言したとしても1つの証拠にはなるが決定的な証拠にはならず、知らぬ存ぜぬでシラを切られ突っぱねられるだけなのが容易に想像できるためここはグッと堪える。

 

「ふぅ...手紙の内容を考えないとね。申し訳ないけど紅茶を淹れてくれるかしら?」


 エリスに紅茶を淹れてくれと頼むと2つ返事で機嫌良く紅茶の準備をしてくれるので紅茶の準備をしてくれている間にコウへ手紙の返事を返すために日頃から愛用している羽根ペンで紙に筆を走らせるのであった。


「そろそろ手紙が届いたかなぁ」


 部屋の窓側にある椅子に座って窓の縁に片肘をついて外の通りを流れる人々を見ながらポツリと呟く。


 手紙を送った後は当分ゆっくりしようとコウは考えていたのでここ数日は宿でゆっくりしたり、たまに図書館へ行ったりと有意義な休日を満喫していたのだが、手紙のことを考えるとつい返事の手紙がいつ送られてくるのかソワソワして待ち続けてしまう。


 ライラは冒険者ギルドの受付嬢であるサーラやミラと仲良くなったらしく、ここ数日は冒険者ギルドに行って話に華を咲かせているようである。


「キュイ!」


「あぁフェニも出かけるのか?遅くなる前には帰ってこいよ」


「キュキュイ!」


 フェニについても最近は外に出掛けており、どこに行っているかは分からない。


 まぁ部屋の中に籠もって埃かぶっているよりはマシだろうと思うので止めはしないが夜が遅くなる前には帰ってくるようにと一言伝えて部屋の窓を開くと大きく返事をして飛んでいってしまう。


「みんな出かけたし俺も出かけるかなぁ~それにしてもゲームも何もないのは暇だ」


 コウにとっての娯楽は少なく本を読むか、町を歩いて食べ歩きするか、ウィンドウショッピングするかぐらいの選択肢しかないのである。


 別にライラと一緒に冒険者ギルドに行って話の輪に混じっても良いのだが、女性しかいない中にコウ1人男が入ったとしてもなんとなく居心地が悪い。


 とりあえず行く宛はないが部屋に籠もっていてもしょうがないのでコウはさっと着替えて宿の階段を降りていくとミランダが掃除を行っていた。


「あら?コウさんもお出かけですか?」


「まぁ暇つぶしに外をぶらぶらするだけだよ」


「なるほど...もしよろしければちょっとしたお使いを頼んでも大丈夫でしょうか?」


 正直、外をぶらぶらと目的もなく歩き回るだけなのでミランダからのお使いぐらいならば受けても良い。


「お使いしてくださるなら夕食にちょっとしたサービスをしますよ」


「悪くない話だな。で...なんのお使いなんだ?」


「この手紙をミルミートという肉屋に届けて欲しいのと冒険者ギルドへこちらの依頼をお願いします」


 ミランダから手紙と細かく記載がされた依頼書を渡され、中に目を通してみるとどうやら宿の裏手にある庭の草むしりを冒険者ギルドに依頼するようだ。


 基本的に新人の冒険者は最初から討伐といった危険な依頼を受けずに町中でのお願いや薬草採取などの簡単な依頼を最初に受けることが多いのでこれは新人の冒険者のための依頼だろう。


「じゃあ行ってくる」


「はい。お気をつけていってらっしゃいませ」


 手紙と依頼書は無くしてしまわないように収納の指輪へと仕舞い込み、ミランダのお使いを終わらせるためにまずはミルミートという名の肉屋を目指してぶらぶらと歩くのであった。

いつも見てくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをいつもしてくださる方もありがとうございますm(_ _)m

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