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162話

「水球!」


「おっと!させねぇよ!」


 コウは自身の横に複数の水球を作り出そうとするが、ロウェルから丁度水球を作り出そうとする場所に向かって小石が投擲される。


 すると途中まで作り出されていた水球が投擲された小石によって干渉されてしまい形を保てずに弾けてしまう。


(なんであの男は俺が魔法を出す位置が把握できるんだ?)


 コウはロウェルと戦う最中、頭の中で考え事をしていた。


 先程から殺さないよう捕らえるために若干威力を抑えた水球を何度か作り出そうとしていたのだが、毎回ロウェルから投擲される小石によって邪魔をされていたのだ。


 まるでコウが魔法を出す位置が分かっているかの様である。


 しかもただの小石ならば例え作り出される位置がわかったとしても飛んでくる小石は作り出されている魔法の間を透過してしまう筈であり、形を保てず弾けてしまうことはないのだ。


 最初は小石に何か種を仕込んでいるのではないかと思ったのだが、ロウェルはそこらに落ちているただの小石を拾って投げているだけなので魔法が阻害される理由がさっぱり分からない。


「むぅ...無傷で捕まえるのは難しそうだなっと!」


 種がわからない以上考えても仕方ないのでコウは魔法を使うのを諦めると数歩で距離を詰め、横薙ぎの一閃をロウェルに向かって振るう。


 ロウェルは自身の剣でコウのサンクチュアリを受け止めるが、あまりにも重い一撃だったのか立っているその場から数m程離れた場所へと押し出されてしまった。


「ふぃ~化け物みたいな腕力しやがって...魔力の量もおかしいだろ」


「生まれつきなもんなんだよ!」


 追撃のため横へ振り切ったサンクチュアリへ魔力を込めて刃の穴から水を勢いよく出し、ロウェルへと再び一気に近づく。


「なんだそりゃ!」


 まさか得物を横に振り切った体勢から一気に詰めてくると思っていなかったのかロウェルは驚きの表情をする。


 しかしロウェルもギリギリ紙一重でコウの両手持ち縦振りを横に躱し、身体が真っ二つにならずに済む。


「避けるなよ!」


 縦に振り下ろされたサンクチュアリは地面を砕き土や石を周りへと散らばせ、土埃が舞っている間にロウェルはコウから再び距離を取るように遠ざかる。


「いや避けなかったら俺は死んでただろ!」


「盗賊に慈悲は無い」


「いや俺を生け捕りにするんじゃないのかよ...」


「そういえばそうだった」


 土埃が晴れるとコウは地面に刺さっているサンクチュアリを引っこ抜き、ロウェルは文句を言いコウは元々の目的を思い出したかの様にハッとした表情をする。


 たしかに殺してしまっては情報などを聞き出せず本末転倒になってしまうところであった。


 それにしても盗賊にしては動きが今まで有象無象の戦ってきた盗賊達と違い、反応や判断が段違いであるため帝国側にいた頃は結構な厄介者だっただろうということを感じる。


 お喋りは終わりといった感じでコウは地面に軽く靴をトントンと鳴らし、再び武器を構えロウェルも同じように武器を構える。


 そしてお互いに周りの環境音が気にならないくらいに集中していくのだが、先に動いたのはコウであり、一歩二歩三歩とサンクチュアリを肩に担ぎ近づいていく。


 コウはロウェルに近づくと今回は殺さない様に機動力を奪うため膝より下の足へと狙い定めて地面スレスレに横薙ぎの一閃を振るう。


「あらよっと...って地面が凍ってやがる!」


 ロウェルは軽くジャンプして横薙ぎを回避するが地面スレスレを通過する際にコウは穴から水を出し、着地する前に地面を凍らせていた。


 コウによって凍らされた地面に着地するとロウェルは足を滑らせてしまった様で体勢が背中から地面に落ちるかの様に崩れる。


「ここだ!」


 背中から地面へ落ちつつあるロウェルに向かってコウは殺さないようにサンクチュアリの刃を振るうのではなく、石突の部分で頭部に向かってすくい上げるように振るい気絶を狙う。


 直接頭にでも当たれば殺さずに脳震盪ぐらいは起こせるはずと思っての判断だった。


「舐めんな!」


 しかしロウェルも一発食らってしまってはアウトだと理解しているためなんとかしてコウの振るうサンクチュアリから逃れるために地面へと自身のシミターを地面に刺して身体を捻り直撃は避けるが、石突の部分に片目についていた黒い眼帯がほんの少しだけ掠ってしまい引っ掛かり外れる。


 そして反撃としてロウェルは蹴りを一発お見舞いし、コウはサンクチュアリの持ち手部分でしっかりとガードをするが衝撃で後ろへと押し出された。


「むぅ惜しい」


「あぶねぇな!はぁ...眼帯も外れちまったじゃねぇか」


「珍しい目をしてるんだな。何か特別な力でもあるのか?」


「さぁどうだろうな?良い男には秘密がいっぱいあるからよ」


 眼帯が外れた部分をロウェルは手で抑えていたのだが、抑えてた手を退けると瑠璃色の瞳が現れ、コウは物珍しそうな目で魅入ってしまう。


 左右で瞳の色が違うのでオッドアイというやつだろう。


 もしかしたらあの目のお陰で魔法がどこに出るのか分かり阻害できているのかもしれない。


「それにしても魔法は使えないし手加減して殺さないようにするのは難しいなっと!」


 魔法が使えないなら使えるような状況へ持っていくまでである。


 地面をサンクチュアリで抉り、ロウェルに向かって大量の砂利を飛ばすと同時にコウは再び詰め寄ってサンクチュアリを無数に振るうが全てを上手く受け流されてしまう。


 受け流されている間にコウはいくつかの水球を作り出そうとするが、まるで曲芸師の様にロウェルは足元に落ちている石を蹴り阻害してくる。


 魔法にも集中力を割いているせいかロウェルの反撃として振るわれるシミターが少しづつ、コウの身体に掠り傷つけていく。


「まだまだ戦闘の経験が足りねぇな!そろそろ俺はお前の動きに慣れてきたとこだぜ!?」


「経験が足りないなら補うまでだ!"フェニ"出番だ!」


 1対1ではこれ以上埒が明かないと判断したコウは上空に元々待機させていたフェニへと呼びかけると上空から「キュイ!」と一言鳴き声が聞こえた後、バチバチと音を鳴らし一直線にこちらへ急降下してくる。


「なんの音だ!?」


「じゃあな!寝てろ!」


 ロウェルは急に上空から聞こえた音につい釣られてしまい一瞬だけコウから視線を離してしまった。


 その一瞬の隙きを見逃すわけもなくロウェルの腹部に向かって蹴りを一発入れると吹き飛ばされ、空中を舞いコウはすぐにその場から逃げるように離れる。


「なっ!」


 コウに蹴られたことによって空を強制的に見上げさせられたロウェルの瞳に一瞬だけ映ったのは金色の鳥の魔物が電気を纏いながら目と鼻の先に現れる光景。


 フェニの雷を纏った羽先がロウェルにほんの少しだけ触れると同時にバチンッ!と大きな音が鳴り、ロウェルは少しだけうめき声を上げて視界が暗転し、意識は真っ暗な海の底へと引きずり込まれるのであった...。

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