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153話

 肌色。それが朝、目が覚めた時にコウの目の前に広がっている世界の色だった。


(無防備すぎる...)


 現在の時刻は朝、ライラとは向かい合わせの状態で柔らかなベットの上に2人で寝ており、コウの目線は丁度ライラの胸部の位置と重なっていた。


 しかも胸部の服はかなり広がって素肌が見えており、何とは言わないがもう少ししたら見えてしまいそうな程である。


 そして体勢を変えようにも背中を両手でがっちりと掴まれており、動けずその場から逃げることは出来ない。


 見た目は子供に近いといっても中身であり精神は高校生の年齢だ。これではほぼ生殺しのようなものである。


 ライラも寝ているため多少なりとも触れてもバレないのではないのか?という邪な考えが浮かび、もしかしたらコウの頭の上では天使と悪魔が戦っているかもしれない。


(冷静になれ俺。目を閉じて無になるんだ)


 このままでは悪魔が勝ってしまうと思い、自分を落ち着かせるため深呼吸をするとほんのりとライラの付けている甘い香水の匂いが漂ってくる。


 そして頭の上ではライラのすーすーとした寝音が感じられ余計に意識してしまう。


(駄目だ...というか早くライラは起きろ!)


 そんな事を心の中で思っても願い叶わずライラは起きる気配すらない。


 色々なものを我慢しつつ、何とかこの状況を打破出来ないかを考えると1つだけ思いつく。


 それは近くで寝ているフェニにライラを起こしてもらう事だ。


 コウは小さな声でフェニの名を呼ぶと気が付いた様で後ろからもぞもぞとベッドのシーツと羽が擦れる音が聞こえる。


「キュイ?」


 コウの声は聞こえたのだが、肝心の本人は横になって寝ている様に見えたのでフェニは疑問に思ったのかコウの顔を覗き込める場所まで移動する。


(フェニ!ライラを起こせ!)


 ちらりとフェニの覗き込む顔が見えて目があった瞬間にコウはライラを起こす様に小さな声で指示をすると理解したのかライラの顔元まで移動して起こす様に小さな嘴で軽く突きだす。


「キュイ!キュイ!」


「ん〜〜〜?なぁんですか〜〜?もぉ〜〜...」


 顔をフェニの小さな嘴で小突かれ鬱陶しかったのかコウの背中をガッチリと掴んでいた両手を離し、顔周りを手で払う。


(ナイスだフェニ!)


 背中から両手が離れた瞬間、ここぞとばかりに反対側へ一気に逃げるように転がるとベッド自体あまり広くないせいか転げ落ちてしまいどしんっ!と部屋の中で音が鳴り、コウの口からは蛙を潰した様な声が出た。


「いてて...解放されたし朝食でも食べに行こうかな」


 床に打ちつけた後頭部をさすりながらコウはささっと着替えるとまだ寝ているライラを放置して1階へフェニと共に向かうのであった...。


「そろそろ機嫌を直してくれ。悪かったって...」


 コウ達一行は朝食を食べたのちに宿である小鳥の止まり木を出てギルドへと向かって歩いていた。


 コウの隣にはムスッとした表情のライラがおり、朝起こさず放置されて朝食へ行ってしまったのが気に食わなかったらしく不満そうにしていた。


「むぅ〜次はちゃんと起こしてくださいよ〜?」


 自分で起きるという選択肢は無いのだろうかとコウは思ったが決して口には出さない。


 口は災いの元である。


 そうこうしている内に冒険者ギルドへと到着すると依頼書が貼ってあるボードにはあまり人がおらず、なにやら別の場所のボードの前に人集りが出来ていた。


「なんだあれ?まぁとりあえず依頼を受けるか」


「何かあるんですかね〜?」


 疑問に思いつつ、まだ漁られていない依頼書が貼られたボードを手短に漁り良さげな依頼を手に入れたのでコウは受付まで持っていく。


「次の方どうぞー」


 前に並んでいた人の依頼の受注が終わったのか、いつもの聴き慣れた声が聞こえ一歩前へ出ると久々に見るサーラの姿がそこにはあった。


「久しぶりだなサーラ。あの人集りは何だ?」


「あ!コウさん久しぶりです!あ~あれはですねー」


 依頼書とギルドカードを手渡しながら詳しく話を聞いてみると、どうやらアルトマード王国の隣にある帝国と戦争するそうで冒険者ギルド側にも依頼として兵士を募集しているとのことだ。


 勿論、依頼という事なので報酬が出るらしく参加するだけで1人頭金貨2枚また食事や寝床は用意してくれるためそれなりに美味しい依頼だ。


 ただ若い冒険者が依頼を受けても無駄死にする可能性が高いためランク制限されており、最低でもCランクからとなっていた。


 コウも依頼を受けれるとはいえ帝国に特に恨みがあるわけでも無いし、金貨2枚ならばトレントを狩ったりすれば稼げる程度なのでわざわざ戦争に参加する意味が無く、コウにとってもあまりそそられる依頼では無い。


「そういうことだったんだな」


「平和な方がいいんですけどね!ところで今回は捜索系の依頼なんですね」


「いつも討伐系の依頼を受けてたしたまにはこういうのも良いかなって」


 サーラは依頼の手続きを話しながら済ませていると、珍しくコウが捜索系の依頼を受けていることに気づいた。


 今そう回のコウが依頼は南にある森で伐採の依頼を受けた複数の冒険者が数日立っても帰ってこないので捜索及び生存し、救出可能ならば救出をして欲しいという内容だった。


 南の森といえば、そこまで強い魔物もおらず精々Cランク程度であり、森の奥まで行かない限り遭遇しないはずなので冒険者ギルドが不審に思ったらしい。


「はい!これで受付は完了です!」


 受付が終わったようでサーラからギルドカードを手渡されると後ろの人も並んでいるため、その場からすぐに離れるように横へとずれていく。


 するとサーラが「気をつけてくださいねー!」と大きな声で見送ってくれたので、受付の周りにいる冒険者からの視線が針のように刺さるのでコウは適当に手をひらひらとさせ返事をすると早足でギルドを出るのであった...。

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