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148話

 コウはフェニと共に朝食を食べた後、隣の部屋にいるイザベル達の準備が終わるのを1階にある宿の受付周囲の壁に背をもたれさせながら待っていると2人は階段をトントンと足音を鳴らし降りてきた。


「お待たせしました〜おはようございます〜」


「すみません。待ちましたか?」


「いんやそんな待ってないかな。さてと...行くか」


 そしてイザベル達と合流すると受付でチェックアウトを済ませて暫くお世話になった宿から出るとイザベルが手配してくれた馬車の元へと向かう。


 宿のサービスは最初から最後まで満足いくものであってお土産として人数分の昼食を用意してくれており、チェックアウトする際に手渡してくれた。


 もしアンケート用紙などがあればコウは星5つの記入をしていただろうか。


 朝からアルクの街並みは賑わっており、露天などは急いで開店の準備をしていて忙しそうである。


 ちらほらと開いている店もあったのである程度の物資を購入し、ローランへ帰るための準備は万端だ。


「あれが呼んでいた馬車ですね」


 アルクの正門を抜けて街の外に出るとイザベルが指をさすので、そちらの方向を視線を向ける。


 視線を向けた先にはアルクへ最初に来る際に乗ってきた馬車が待機しており、御者はコウの姿を覚えていたようでペコリと綺麗なお辞儀をすると馬車の扉を開き「お待ちしておりましたお乗り下さい」と言われるのでコウ達は乗り込んでいく。

 

「全員お乗りになられたようなので出発します」


 御者台の後ろには乗り込んだ人が見える小窓が付いており、その小窓から御者が顔を覗かせ出発の合図をすると馬車はゆっくりと走り出す。


 馬車に付いている窓からはアルクの街の姿が遠く離れていき、小さくなっていくのはなんだか寂しくも感じた。


 先程まで晴れていた空は馬車が進むにつれて少しだけ雲がかかり、これから雨でも降るかもしれない。


「どうしたんですか~?」


 窓の外にある小さくなっていくアルクの街を眺め少しだけ寂しそうな顔をしているのにライラは気づいたのか声を掛け訪ねてきた。


「何でも無い。ただ...少しだけこの旅が長く続けばいいなって思っただけだ」


 イザベルとライラの2人は少しだけ驚いた顔をするがすぐにくすっと笑い、コウは自身が言ったことについて何がおかしいのか分からず少しだけ表情がムッとしてしまう。


「むぅなんだ悪いのか?」


「いえ~全然悪くないですよ~」


「そうですよー私達も同じ思いですから」


 2人に何が悪いか問いただすと肯定するような事を言われてコウはムッとしていた表情から変わって少しだけ気恥ずかしいような感じでぽりぽりと頬を掻き、再び窓の外を眺めだす。


 コウの表情がころころと変わる姿を見る2人はお互いに顔を見合わせくすっと笑いのだが、コウは気にしないことにした。


 馬車の中ではそんなやり取りをしつつ、馬車はローランと王都に向けて走り続けるのであった...。


 コウ達一行は馬車に乗ってローランそして王都に向けて6時間程ぐらいは既に走っており、いつの間にか空からは雨が降り注いでいるため小窓へ雨粒が斜めに張り付く。


 御者は黒い合羽の様なものへといつの間にか着替えていて、馬車を引いているウォーターホースは雨が降っているお陰なのか馬車の進みの調子はいいようだ。


「ん...?なんだあれ?」


 コウは馬車の窓から雨が降り続ける外を眺めていると雑木林の奥から黒い影の様なものがこちらにばさばさと飛んで向かってくるのが見えた。


 よく見ると黒い蝙蝠の様で大体フェニと同じぐらいの大きさで赤いルビーのような宝石の目をしており、鋭く尖った白い牙がちらりと口から飛び出しているの。


 どうやら獲物として狙っているのはこの馬車を操作している御者とウォーターホースのようだ。


 御者台が見える小窓からコンコンと御者が小窓をノックして後ろの迫ってくる黒い蝙蝠達に指を向けどうにかして欲しいらしく訴えかけてくるのでコウは重い腰を上げる。


「うーん馬車を止めて戦うのも面倒くさいし...とりあえずこのまま窓から魔法でも打つか」


 横に付いている窓を開くと雨が馬車の中へ風と共に少しだけ入り込むが仕方ないだろう。


 窓の外に顔を出して馬車の後ろを追ってくる黒い蝙蝠達に指先を向け「氷矢」と呟くと氷で出来た少し太めの矢が生成され、次々と打ち出されていく。


 これはダンジョンでキラーホーネットと対峙した際に考えた魔法であり、飛んでいる相手なら有効だったので今回も使ってみることにしたのだ。


 しかし馬車が揺れている環境下で尚且、相手は空を飛び回る蝙蝠だ。当たるわけもなくひらひらとかわされてしまう。


 いくら氷矢の飛ぶ速度が早くても当たらなければ意味がない。


「当たらん...さてどうするかなぁ」


 このまま悩んでいても後ろから迫りくる黒い蝙蝠はいずれこの走り続ける馬車に追いついてしまうだろう。


「しょうがないですね。ここは私が風魔法でなんとかしょうか?」


 イザベルの風魔法ならば馬車の後ろから向かい風のように風を吹かせれば黒い蝙蝠は追いつけずに諦めるはずだ。


「あぁ任せてもいいか?」


「良いですよ。では早速...」


 コウはイザベルへ黒い蝙蝠の対処を任せようとすると横からフェニが顔を出し、イザベルが窓から顔を出そうとしているのを邪魔するように窓の縁へ止まり「キュイ!」と一言鳴く。


「なんだフェニ?邪魔したら駄目だろ?」


「キュイイ!キュイッ!」


「もしかしてここは自分に任せろとでも言ってるのか?」


 どうやら最近、フェニ自身の見せ場がなく全然活躍できていないため今回は譲ってほしいようだ。


 とはいえ戦闘の経験として丁度よい相手ではあるのでフェニに任せても良いかもしれない。


「よし分かった。無理はしないこととちゃんと馬車に戻ってくるんだぞ!」


「キュイッ!」


 フェニはコウの話をしっかり聞くと窓の縁から外へ飛び出し迫りくる黒い蝙蝠達へと向かって飛んでいくのであった...。

いつも見てくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをいつもしてくださる方もありがとうございますm(_ _)m

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