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129話

 目の前の男はマリファスと言って二つ名持ちのAランク冒険者らしく、手を前に出し握手をコウへと求めてくる。


「俺はコウでCランク冒険者をやっている。よろしく頼む」


 別にコウとしては、わざわざAランク冒険者に敵対する気は毛頭なく、挨拶をしつつ素直に握手を交わす。


 マリファスの手は見た目によらずかなりゴツゴツしており、力強い何かを感じる。


「うんうん、よろしくねぇ。ところでイザベル君は今日ここで休憩していくのかな?」


「一応ここで今日は休憩していく予定ですね」


「そうなのかい?まぁ君の顔も見れたしゆっくりしていくといいよぉ」


 要は済んだかのかベースキャンプの中心部へとステッキで支えつつ、魔道具のような義足を付けた右足をガチャガチャと鳴らしながら歩き出す。


 コウ達はマリファスの後ろ姿を見送っていると何かを思い出したかのように止まりこちらへ振り返る。


「あぁ忠告だけど、この街であまり悪いことはしないでねぇ。"いつでも僕は見てるから"」


 そう言い残すと再びマリファスは歩き出し、人混みの中に入っていくが背が高いせいでかなり目立つ。


 忠告と言われても別に悪いことはするつもりはないが、いつも見ているとはどういうことなのだろうか?


「変な人だったな。まぁ悪そうな人ではないだろうけど」


「えぇ別に悪い方ではないですよ?私は昔に色々とお世話になりましたから」


「独特な雰囲気の方でしたね~」


 不思議な人との出会いはあったが、とりあえず今は休憩できる場所を探さないといけない。


 イザベルに聞くと一応、この近くにテントなどを設置できる広場があるらしいのでそちらへ向かうことにする。


 広場に移動する最中にマリファスという人物が、どの様な人なのかをイザベルへと質問すると答えてくれた。


 どうやらマリファスはこのベースキャンプ地の管理をしている人物で中心部にある遠見の塔というベースキャンプ全てを見渡せるような高い建物に住んでいるとのことだ。


 勿論、クランも作っているようでクラン名はオブザーバーというらしい。


 何故、展望の二つ名を持っているかと言うとマリファスは遠くまで見渡すことが出来るようで、しかも噂によるとその見ている場所へ魔法を使用することも可能と聞いているが、イザベルは実際に見たことがないらしい。


 今回はイザベルがベースキャンプに到着した時に遠見の塔から気づき、旧知の仲ということでわざわざ足を運んでくれたのかもしれない。


「なるほどな。だから"いつでも見ている"か...」


 そして広場に辿り着くと多くの冒険者達がテントを設置しているが、まだまだテントを張れるスペースはあるようだ。


「ここにするか?」


「そうですね。私は問題ないです」


 一番隅っこの場所へ前回組み立てて、そのまま仕舞ったテントや陣幕を収納の指輪の中から取り出すと次々に設置していく。


 後ろには大きな大木の根が生えており、他の冒険者達に覗かれるような心配もないがマリファスからは見られてしまうのでは?と思ってしまう。


 まぁAランク冒険者であり、紳士的そうな人物だったのでそんな事をするわけもなさそうだが、一応余分に買っておいたテントを張り、中へ浴槽とトイレを設置していく。


 前回のように周囲の見張りもする必要もないだろうし、魔物避けの魔道具も必要ないので今回は全員がゆっくりと出来るだろう。


「そういえば物資とかは補充していくのか?」


「う~ん...あっ!次の階層で必要な物を忘れてました...。今から買いに行きましょう」


 テントを設置してから物資の補給などをコウは思い出しイザベルへ聞いてみると、どうやら買い忘れがあったらしい。


 次の階層で使うものだったらここ以外ではもう買えないのでライラとフェニに留守を頼み買い物へと向かう。


 このベースキャンプでは第1階層のベースキャンプと同じように冒険者兼商人がおり、通り道で露店があったりする。


 ただしダンジョン内でしかも第2階層目ということなのか普通のポーションなどでも割増金額なのがなんとも言えないが、危険を犯してここまで来ているのでそこはしょうが無いだろう。


「ここなら売ってそうですが...あっ!ありました!」


 数件ほど武具などを売っている露店を巡ると、どうやらお目当てのものを見つけたらしい。


 イザベルが手に取っていたものは大きめのふわふわとした外套であり、普通の人の身長ならばすっぽりと入ってしまうようなものだった。


「それが必要な物なのか?」


「えぇ、次の階層は砂漠ですからこれが必須なんですよ」


 この外套はスリープシープという魔物から作られたもので着ると暑さや寒さに強く一定の温度を保ってくれるらしい。


 とはいえコウには既にハイドから貰った高性能な外套がある為、必要はないがイザベル達には無いので2着ほど買って収納の指輪の中へと仕舞っておく。


「じゃあ戻るか」


「そうですね。ライラさんも待っていますし」


 コウ達が留守をしているライラとフェニの元へ戻ろうとすると、何処からか大きな怒号が聞こえてくる。


 そしてコウ達の隣を風のように駆け抜けていく、シーフのような格好をした冒険者が一瞬で通り過ぎていく。


「そこの盗人を捕まえてくれ!」


 どうやら店の物を盗まれたようで1人の冒険者兼商人が周りに助けを求めていた。


 コウは盗まれたものを取り返そうと思い動こうとすると、シーフのような格好をした冒険者の足元の地面が蠢き包み込むように捕らえる。


 周りの冒険者も動揺しているようなのでここにいる人達が捕らえたわけではないようだ。


「一体誰が...?」


 周りを見渡していると警備兵の様な格好をした人達がきて捕らえられた盗人を拘束していく。


「やぁ。また会ったねぇ」


 そして暫くすると後ろからほんの少し前、耳にしたことのある声とガチャガチャとなる音が聞こえてくるのであった...。

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