105話
Sランクとは冒険者の中で最も強く、世の中に貢献した者のみ到達できるランクである。
そしてSランクは基本的に国に縛られておらず自由であり、神出鬼没とさえ言われている存在だ。
しかも現在アルトマード王国内ではSランクは2人しかいないのだが、その神出鬼没な存在の内の1人が大きな岩の上に立っていた。
「Sランク...?」
「うむ。Sランクじゃな!」
確かにあの赤龍やワイバーン達への攻撃はそんじょそこらの人間ができるような攻撃ではないだろう。
寧ろ人間離れの攻撃と言っていいのだが、見た目が人形のように可愛らしい少女のためか本当にSランクなのか疑問に思ってしまうのだ。
コウはジールへと本当にこの少女がSランクなのだろうか?という目線で訴える。
「すまんが、本当にこの人はSランクだ。俺の師匠でもある」
「まじか」
ジールが認めているということは、この大きな岩の上にいるエルフィーと名乗った少女は本当にSランクなのだろう。
そしてジールの師匠ということにならば、見た目は少女なのだが実年齢はかなり年上ということになる。
「ふむ...」
エルフィーはコウを見ると腕を組みながら目を細め興味深くじっくりと大きな岩の上から観察するように見てくる。
「な、なんだよ?」
「お主の身体を見る限り事情があるようじゃな?後はお主の肩にいる魔物は珍しいから大切に育てるといいかの」
エルフィーはコウへと一言残すと踵を返し歩き出す。
姿がブレて一瞬でこの場から煙のように消えると、先程までいたのが幻だったのではないのだろうかと錯覚してしまう。
まさに神出鬼没とはこういう事を言うのだろうか?
まぁ先程までいたエルフィーは幻などではなく、しっかりとこの戦場にいた赤龍やワイバーン達を倒すなどの良い成果の爪痕を残していた。
しかし良い成果の反対にエルフィーがワイバーン達を撃ち落とした場所は街の中であり、あまりよろしくない爪痕も残しているのだ。
とはいえ街が瓦礫の山になるよりはマシなのだが...。
「とりあえずは事後処理だな」
「やめてくれコウよ...頭が痛くなる」
コウの一言にジールは頭をがしがしと掻き、これからの街の復興や赤龍とワイバーン達の死骸の処理に頭を悩ませるのであった...。
■
「ここにもワイバーンの死骸か。よっと...」
時は経ち夕暮れ時にコウは街中を歩いており、ワイバーンの死骸を見つけるとすぐに収納の指輪の中へ入れていく。
何をしているかと言うとジールから街に落ちたワイバーン達を集めろと指示が出されていた。
というのもコウには収納の指輪があり、それを使えばいくらでもワイバーン達は集められ更には腐敗などを止められるのだ。
そして死骸の後には大量の赤いペンキを塗りたくったような血の跡があり、暫くすると血の跡の場所に他の冒険者達はわらわらと集まり、一生懸命に血の跡を掃除していく。
実際、どれだけのワイバーンの死骸を集めたかというと100体は既に超えているだろうか。
「ふぅ...殆どは回収できただろ。一旦ギルドに帰ろうか」
「キュイ!」
コウは一旦ギルドへと帰ってどれだけ集めたかを報告しに行こうとワイバーンの死骸を集めるために酷使した重たい足へと鞭を打ちながらギルドへと歩き出す。
ギルドへと向う最中にコウはエルフィーが最後に残した言葉をふと思い出す。
あの言葉はまるでコウの身体は作られた物だと理解しているような言い方のようだった。
そしてフェニに関しては珍しいものと言っていたのでフェニは普通の魔物とは違う存在なのかも知れない。
色々とエルフィーに聞きたいことはあったのだが、話しかける間も無く煙のように消えてしまったため今になって後悔が残る。
「まぁいつかまた会える日が来るといいんだが...」
そうこうしているうちに冒険者ギルドへと到着し、扉を開けて中へと入っていく。
ギルド内も今回の事後処理で忙しそうにギルド員は動き回り、仕事をしていた。
「あっコウさんお疲れ様です。ギルドマスターならいつもの部屋ですので報告はそちらに行って下さい」
「ん、わかった」
ギルドの階段を登りギルドマスターの部屋へと向いドアをノックするといつものようにドアの奥から返事が聞こえてくるので部屋の中へと入っていく。
部屋の中に入るとそこにはギルドマスターの座っているはずの机には大量の書類が山積みにされており、あの大きなジールの姿は見えない。
「ジールさんに指示されたワイバーンの死骸集めを終わったんだが」
「コウだったか!お疲れさんだな。とりあえず死骸は定期的に納品して貰うから頼むぞ」
どうやらワイバーンの死骸は多く市場に流すと混乱を招くため小出ししていく方針であり、腐らないようにコウの収納の指輪の中へと当分は仕舞っておいてくれとジールから頼まれた。
一応、ジールからの依頼ということなのでギルドからは定期的に倉庫代としてお金を貰えるらしくコウとしては悪くない条件である。
「それにしても凄い書類だな」
「巨大な魔石はローランの広場から出てきたからそれの処理とか色々だな。ったく...頭が痛くなる」
あの赤龍が産まれた原因の魔石は広場から出たらしい。
まさかあんなものが街に埋まっていたとは誰が予想できるだろうか。
「報告も終わったし帰るか」
このままこの場所にいても何か別のことを更に頼まれそうな気がしたため、コウは軽く挨拶するとささっとギルドを出て自分が泊まっている宿でゆっくりするべく向うのであった...。
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