103話
場面は変わりコウが防衛している南門。指揮をしているのはローランの冒険者ギルドマスタージールである。
何故、ギルドマスターであるジールが指揮をしているかというと、純粋に指揮をできるものがいないためだ。
コウにやらせれば良いのでは?という話もあったのだが、コウ自身戦闘に関しての実力はあるのだが、指揮の実戦はなく、まだ若いCランクということもあったので元Aランク冒険者のジールが指揮を取ることになっていた。
それならば東門を防衛していたライラも指揮はできないのでは?という話もあったのだが東門には多くのBランク冒険者やCランク冒険者を割いていた為、そこまで指揮者は必要ないのだ。
まぁ悪くいえばお飾りの指揮者というものだろうか。
「目の前のオークの大群が俺たちの相手だ。やれるか?」
目の前には大群のオークが迫っており、中心部には普通のオークより身体が倍の大きさの上位種と見られるオークが我が物顔でローランの土地を踏み荒らしていく。
「やれるか?じゃなくてやるしかないんだろ?」
コウは身体を解すように準備運動をしつつ、ジールに言うと「そうだったな!」と大きな声で笑い出す。
「よぉし!投石部隊!投石開始!」
ジールは片手に大剣を持ちながら合図をすると他の門と同じ様に投石を開始し始めた。
投擲された大きな石は空を舞い、まるで小さな隕石のように大地に降り注いでいく。
下にいるオーク達はゴブリンやアンデット達と同じ様に押し潰されていくがオークの上位種は右手に持っている鉄の塊でできた歪な形の棍棒で弾き返していた。
「次ぃ!魔法部隊と弓矢部隊攻撃開始!」
次に魔法部隊と弓矢部隊の攻撃がオークの集団へと襲いかかる。
魔法に関しては様々な魔法が撃ち出されており、コウも魔法を使えるため氷槍を撃ち出したりしていた。
この遠距離攻撃の連続でオークの大群は半数まで減っており、残りは各々が各個撃破していく形になるだろう。
「お前らケツに気合込めろ!Dランクは門を守護!Cランク以上は俺と一緒に遊撃に出やがれ!」
ジールの指示に冒険者達は一斉に従い動き出す。
コウも従うように遊撃として前線へと走り出し、目の前のオークの大群へと突っ込んでいく。
肩にいたフェニは空へと飛んでいき自身が唯一使える雷の魔法を打ち出して、周りの冒険者達を支援するような形となっていた。
「はぁっ!」
目の前から迫りくるオーク達をサンクチュアリを振るい1体づつ、切り倒していくが数が一向に減っていく気がしない。
辺り一帯は血の海となっており、濃厚な血の匂いで鼻が馬鹿になっていて麻痺していた。
きっとこの血の匂いは服に染み付き当分は取れないだろう。そんなことを思いつつ、コウはオーク達を切っていくとサンクチュアリには血と肉の脂が付着し切りづらくなっていく。
そして大量のオークを切り捨てていた為か、死骸のせいでどんどん足場は悪くなっていっていくのでオークの死骸を飛び石のように踏んで周りにオークがいない足場の良い場所へと一旦退避する。
「凄い脂だな...」
手入れしないよりはマシだろうと思いつつ、オーク血と肉の脂でギトギトになったサンクチュアリにコウは自身で作り出した熱湯を掛けて洗い流していく。
ある程度、洗い流し綺麗になり、殆どのオークが他の冒険者達に倒されてきたのでコウはそろそろオークの上位種を探そうとする。
すると何処からか何か風を切る音がし、振り返るとコウの方向に向かって大きな岩が飛んできた。
「あぶなっ!」
ぎりぎり回避に成功すると飛んできた岩はそのままコウの近くにいたオーク達を巻き込みながら轢き殺していく。
もし自分もあれに当たっていたら同じことになっていただろうと思うと、少しだけ背筋にヒヤリとしたものが流れる。
「あれは投石機の岩だったはず...何処から?」
飛んできた方向を確認するとオークの上位種が先程まで飛ばしていた大きな岩を自身の武器である鉄の塊でできた棍棒で冒険者の方向へ、バットを振うように振るい大きな岩を飛ばしているのが見えた。
普通のオークと戦っている冒険者達は視界外からの大岩を避けるのに必死で一部の冒険者は飛んできた大きな岩に巻き込まれている者もおり、被害は大きい。
「これ以上被害を出さないように潰さないとな!」
コウはすぐに上位種であるオークの元へと走り出し、周りの警護しているオーク達を切り捨てていくとオークの上位種と対面する形となった。
前回、戦った時の上位種のオークと同じ様に威圧感をかなり放っているが、コウは既に前回で慣れてしまったため臆すること無くサンクチュアリを振るう。
勿論、オークも実力もあるためすんなりとコウの攻撃を受け止めるとコウを邪魔だと言わんばかりに振り払う。
「前に戦った奴よりパワーもスピードも上だな」
振り払われたコウは空中で体勢を整えながら着地し前回のオークと比較し冷静に分析する。
「とりあえず純粋な1対1にするか」
そして他のオーク達に邪魔されないよう1対1の状況を作るべく真上へ水球を飛ばし破裂させ、氷でできたドームを作り出す。
作り出された氷のドームの中でコウとオークしかおらず、1対1と理解しているのか目の前にいる上位種のオークは俺とやるつもりか?と言った感じで鼻で笑う。
コウはオークに指でこっちに来いと挑発するとコウの態度が気に食わなかったのか大地を揺らしながらオークは向かってくる。
横薙ぎの棍棒が地面の砂を巻き上げながらコウに迫ってくるが大縄跳びの要領でジャンプして避けるとサンクチュアリを足に向かって振るいオークへと一撃を喰らわせた。
ただオークの脂肪や筋肉によって深くまでは傷付いてはおらず致命傷には至っていない。
対してコウはオークの攻撃を一撃でも喰らうと一発で致命傷になりうるので、大きな隙き以外はあまり派手に攻撃はできないためかこれが限界だろうか。
「氷槍2連!」
氷槍を作り出すとオークに向けて飛ばすが、2つとも地面へと叩き落とされてしまう。
しかしコウは追撃として氷の壁を作り出しオークの方向に倒れるようにしていく。
ただそんな程度の攻撃ではすぐに対応されてしまい。そのまま鉄の塊でできた棍棒をフルスイングで振るうと氷の壁は砕け散ってしまう。
オークは全ての魔法を突破したため、にやりと口を歪ませ氷の壁の奥を見るが既にコウは氷の壁の後ろにはおらず、オークの足元へと隙きを突くような形で移動しサンクチュアリを上方向に振り上げると胴体へ深く1本の切り傷を加えることに成功した。
「ブモォォォォォォォォォォ!!!」
オークも流石にコウの一撃が堪えたのか持っている棍棒をあちらこちらに振り回し、コウを振り払う。
「っ――――!」
棍棒を振り回した際の風圧でコウは吹き飛ばされ、近くにある投石機に使用した岩へと衝突するが幸いな事に骨は折れてはいないようだ。
「これ以上は埒が明かないし切り札を使うか...」
口から出た血を腕で拭うと、コウはサンクチュアリを地面に突き刺し自身の中にある膨大な魔力を周囲へと垂れ流す。
「集え水よ。全てを飲み込み喰らい尽くせ――」
コウが魔法を唱えるとサンクチュアリの刃の穴から湧き水のように水が出てきており、それはうねりながら1つの形を成し徐々に姿を表していく。
何処か1人の冒険者があれは水龍だと呟くが、その水龍には頭と首の数が8つあり、普通の水龍のそれとは姿が違う。
「水神・八岐大蛇!」
コウの後ろには氷のドームの中にぎりぎり収まる程の水で出来た水龍がおり、それはただ一点オークを見つめていた。
「ふぅ...この戦いが終わったらゆっくりしよう」
コウがオークへと向うように指示をすると、水龍は動き出し8つの頭がオークへと襲いかかる。
そのままやられる訳にもいかないのでオークは1つの頭を殴り飛ばすが水で出来ているためかすぐに再生すると、そのままオークへと喰らいつき激しい水流の中へと飲まれていく。
オークは藻掻くように水の中で暴れるが水龍の中は水の流れが激しくまるで荒れた川に飲み込まれているようで動けてはいないようだ。
指をパチンと鳴らすとパキパキと水龍は凍っていき、オークも一緒に氷漬けになっていく。
「これで終わりだ!」
コウは地面に突き刺さっているサンクチュアリを引き抜くと、刃の穴からジェット噴射のように水を出し勢いをつけて氷漬けになったオークに一気に近づくと、縦に思いっきり振り下ろしオークは一刀両断される。
上位種のオークが倒されたことにより、氷のドームは砕け散りダイアモンドダストの様に降り注ぐ。
周りのオークは自分達を指揮する者がやられたことを見て一斉に逃げ出し始めるが、逆に冒険者達は上位種のオークが倒されたことに士気が大幅に上がり、残りのオーク達を掃討していく。
全てのオークが倒されたことにより、ジークが祝勝の合図をすると冒険者達も一斉に歓声を上げた。
こうして多少なりとも犠牲はあったが南門へと進行していたオークの大群から無事に防衛を成功させるのであった...。
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