青天の霹靂とその結果
「苦手だけど苦手じゃない」の続きとなります。まずはそちらから読んでください。
染めたことのないサラサラの黒い髪に意志の強そうな目。大体無表情な彼女はいかにもクールビューティで近づきがたい印象。だけど本当はお人好しで、くだらない冗談によく笑う。えくぼが現れるその笑顔は普段のギャップもあってとても魅力的だった。
高校生になって少し経った頃、触れると彼女が少し眉をしかめるのに気がついた。抱きつくと体を少し強張らせる。私にだけかと思ったら他の女の子が触った時も少し眉をしかめていた。多分人に触られるのが嫌いなのかもしれない。少し眉をしかめつつ、何も言わない彼女に私は抱きついてサラサラの髪を堪能しまくった。
1年も経てば私が抱きついても眉をしかめることはなく、他の人が触れば眉をしかめる彼女を見て少しの優越感を抱いた。
卒業式のその日、初めて彼女から私に抱きついてきた。3年間で初めての出来事。驚く私に彼女は好きだったと伝えた。その後、何事もなかったかのように笑う彼女に何も言えずその日は帰った。それから私たちは1ヶ月以上会っていない。
スッキリしたように笑っていた彼女は私からの返事はいらないのかもしれない。それでも親友と思っていた彼女が伝えてくれた告白の返事を会えない時間ずっと考えていた。そして決心したその日、私は翼ちゃんを公園に呼び出した。
「久しぶり、髪染めたの?似合ってるね。」
茶色くゆるくカールした髪は気合を入れてハーフアップの編み込みにしてきた。白いベンチが夕日に染まってオレンジ色になってる。そこに二人で座った。距離はいつもより少し遠い。
「ねえ翼ちゃん、告白の返事は聞かなくていいの?」
ちょっとした近況報告をしあったあと一番気になっていたことを聞いてみた。
「いい返事だったら聞きたいな。」
弱々しく翼ちゃんが微笑んで言った。
「翼ちゃん、私が触るの最初嫌いだったでしょ?」
「そうでもないよ。」
口を少しすぼめたあとに笑う嘘のサイン。
「嘘つき。」
「バレてたの?」
「バレてましたよ。」
そんな会話を交わしたあと、空いていた距離を詰めた。そっと翼ちゃんの肩に頭を傾けて、腕を絡ませる。少しこわばった体と汗で濡れる手から翼ちゃんが緊張しているのが伝わる。
「告白されてからずっと考えて、考えて、翼ちゃんの隣は心地いいって思ったの。笑った顔は可愛いし、サラサラの髪も気持ちいい。翼ちゃん、私と付き合ってください。」
付き合うなんて望んでないかもしれない、だから返事を聞かなかったのかもしれない。それでも私は伝えたかった。
「女の子同士だよ?いいの?」
顔を見ると翼ちゃんは泣いていた。初めて見る濡れた彼女の瞳は光っていてとても綺麗で舐めたいなと思った。
「私は翼ちゃんのこと好きだよ。恋愛的な意味で。」
女の子と付き合うことなんて考えたこともなかった。翼ちゃんに好きだと言われて考えて考えて、嬉しくて。でも答えを請求してこない翼ちゃんにちょっとムカついて。そしてなにより会って翼ちゃんに抱きつきたかった。久々に見た翼ちゃんにときめいてきっとこれは恋だろうと再確認した。
視線が絡まり、そっと唇が重なる。離れて目が合って二人で笑った。なにもつけてない彼女の唇に私のグロスが移ってる。行こうかと立ち上がり彼女の体温を感じたくて手を差し出す。えくぼが現れる私の好きな笑顔を浮かべて彼女が私の手を絡めるように握った。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




