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 そんなことを話しているうちにヘリは視界の上へと消え、しばらくしてからエレベータのドアが開いた。

 ドアから出て来たのは仕立ての良いスーツを着た男だった。

 満面の営業スマイル。ただ僕の姿を見た一瞬だけ真顔になったように見えた。

「いつものご愛顧ありがとうござます」

 彼は営業スマイルを称えながら何の変哲もない茶封筒を凪に差し出した。彼女は何も言わずに受け取り、コーヒーの入ったカップをスーツの男に差し出した。

「モンテ・アレグレ……ブラジル豆ですか。頂戴致します」

 そう言って彼はカップとソーサーを手に取り、窓の外を眺めながらコーヒーを啜った。それはまるでわざと凪から目を逸らすための行動に見えた。

 凪は渡された茶封筒に入っていた十枚ほどの紙をパラパラとチェックするようにめくっている。しばらくそうしていたが、やがて納得したように「これでいい」と男に分かるようにつぶやき、傍らにあったバッグの中から、いくつかの札束を取り出してスーツの男に手渡した。

 男は枚数を確認するでもなく、それを素早くスーツケースに収めてから慇懃いんぎんに言った。

「またのご利用を」

 そう言うや否やそそくさとエレベーターに乗って行ってしまった。

 いやいやいや、何だよそれ。

「あの札束は何だ?」

「検索屋への支払いは現金のみ」

 そういう話ではなく額の問題だ。

 一体、いくら支払ったのだ?

「二百万」

 う、ウソだろ!?

 たかがニュースを検索するのに高額過ぎないか?

 つまり僕はクラスメートに二百万円の借金をしてしまったことになるのか。

「借金ではない。私が支払った」

 いや、だから、お前に二百万円の借りが出来たってことだろ。

「借りでも貸しでもない」

 抑揚の無い声で凪が言った。

 理由が何であれ、高校生(しかし実態は中学生)の身分で二百万円をポンと差し出す神経が理解できない。規格外過ぎてそら恐ろしい。

 ヘリポート付きのタワーマンションのフロア丸ごとを住処に一人暮らしをしていて、二百万円を貸し借り無しで同級生に提供するってどんなセレブだよ。

 しかし凪は僕の動揺など気にかける風もない。

「あなたはもう少し自分の身に執着した方がいい」

「はあ?」

「今考えるべきはことは他にある筈」

 そりゃそうだけどね。

 そんなことは分かってるんだけどね。

 しかし一般常識ってものに照らし合わせると……。

 いや、もうこの件について考えるのは後回しにしよう。確かに他に優先して考えるべきことがあるのだ。

 僕は軽いめまいを覚えつつも強引に思考を切り替えた。

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