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 着替えてからリビングに戻ると、甘くて香ばしい薫りが漂っていた。

 見ると、とてつもなく大きな一枚木でしつらえたバーカウンターで凪がコーヒー豆を挽いている。

 古くさいアンティークのミルでゆっくりと豆を挽き、ペーパードリップに粉を入れる。大きなケトルで沸かしておいた湯をコーヒーポットに移し替えてから点滴でドリッパーに落とす。

 全てが慣れた動作だった。

 自分でコーヒーをれる女子高生なんて珍しいと思うのだが、果たしてその実体は中学生だというのだから希少性はかなりのものだ。

 普通、金持ちのお嬢様というのは紅茶を嗜むものなのでは……と思ったが、それはステレオタイプで見過ぎというものだろう。

 それにしても良い香りだった。

 つうというほどでは無いけれど僕もコーヒーは豆で淹れている。毎日二杯は飲むから、高校生にしては多い方かもしれない。

 手持ち無沙汰に凪の手元を眺めていると、彼女が「座って」とカウンターにある椅子を指した。

「お兄さんと会ったよ」

「そう」

「えっと……色々聞いた」

「そう」

 結構な秘密を聞いたし、そこら辺のニュアンスを込めて「色々」と言ったのだが、凪は何の動揺も見せずにコーヒーカップの準備をしている。

「コーヒーとか飲むんだ」

「客用」

「客? 僕?」

「飲みたかったら用意するけどこれは検索屋のため」

 そう言って彼女は僕の視線を促すように窓の外に目をやった。

 彼女の視線を追うと遠目にヘリコプターが飛んでいるのが見える。もしや、あれって言うんじゃないだろうな。

「検索屋の納品はアナクロ。検索結果をメールで寄越すようなことは無い。紙に印刷して運んでくる」

 で、わざわざヘリなのか? 

 電話をしてから三十分も経ってない筈だぞ。

「検索は一瞬。そして検索屋の拠点はそこかしこに点在している」

 まるで宅配ピザだな。

「仕組みはほとんど同じ」

 真顔で凪が応えた。

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