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 でも、どうして僕のことなんか調べたのだろう?

 まさかこいつシスコン?

 歳の離れた妹を溺愛する兄という設定なのか!?

 それにしても手回しが良過ぎるぞ。

 僕がなぎと話したのは今日が始めてだし、それもつい二時間くらい前の話なのだが。

 そんな思いを知ってか知らずか彼が言った。

「君はアレが選んだ者だからね」

「選んだ者?」

「ああ、ごめん。その言葉にはそれほど深い意味は無いよ。元々アレが他人に関心を示すことは殆ど無いのだけどね。まあ今回は緊急事態ってことで君はクライアント扱いさ。とは言うものの前例の無い話だからね。リスクヘッジはかけてるけれど」

「あの……すいません。何をおっしゃっているのか、さっぱり理解出来ないんですが」

「分からなくてもいいさ。むしろ解らずにいる方が君には好都合だと思うよ。まあ、ともかくそういう訳で君のシャツのサイズを調べるついでに身辺も一緒に調べさせてもらったのさ」

「シャツのサイズ?」

 そんなものを調べるついでに個人情報まで取得されてはたまったものではない。

 しかし冷静に考えるとシャツのサイズのような身体の測定データを入手する方が一般的には難しいんじゃないか?

 だってそんなものは学校の保健室くらいにしか無い筈だろ?

 やはり学園の関係者なのだろうか?

 でもウチの学園に名刺に記してあったような「情報室」なんてあったっけ? あるのは「電算室」くらいだぞ。

 そんなことを考えていると、それを遮らんとばかりに鶇は「ほら、それが新しいシャツだ」と言ってベッドの上の包みを指差した。

 老舗百貨店の包装紙。恐る恐る破ってみると中身はえらく仕立ての良いボタンダウンのワイシャツだった。光沢のある貝ボタン。学校の購買部で売ってる奴はプラスチックだからな。出来がまるで違う。ぶっちゃけ高そうだ。そんな贅沢が出来るほど生活費に余裕は無いんだがな。

 そういえばサイフを、いや、サイフどころか荷物丸ごと学校に置きっぱなしにしてきたことを思い出した。後で取りに行くにしても、あきら達がいるから無事に残ってはいないだろうな。

 暗雲たる気分になる。

 しかし金は家に取りに帰れば済むことだ。後で支払うとしよう。

「えっと、おいくらでしょうか?」

 後払いするつもりでそう申し出ると、さもおかしそうに鶫が笑う。

「その状況にあって、シャツの支払いにまで頭が回るとは、なかなかのものだね。並の人間なら己の運命を呪うなり悲観するので精一杯になると思うのだけど。なるほど、流石というべきか。まあ、シャツは貰っておけばいいさ」

「こんな高そうなもの、頂けませんよ」

「貰っとけばいいのさ。何があったかは知らないけど、アレが他人の格好を気にかけるなんて僕は今日始めて知ったんだからね。この一件だけでも十分に驚愕に値する出来事さ。むしろ君はそのシャツを着る義務があるとさえ思うよ。僕のささやかな労力を無駄にしない為にもね」

「はあ……」

 何だか奥歯にモノの挟まったような言い方をする人だな。

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