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「いや、やめとこう」

 僕は言った。

 何せ小心者だからな。それに人の仇打ちに乗じて自分の怨みを晴らすほど思い上がってもいない。

「そう」

 特に感情を込めずに天津眼が返答する。

 姑息な手段に頼らず真っ当な方法を考えるならば、マナコが誰に対して何の怨みがあるのかを調ベ上げた上で当人に何らかの制裁を下す、というのが正しい手順だよな。

 面倒そうだけど。

「もう一度、話を聞いて確認してみるか」

「聞くだけ無駄。マナコの記憶は曖昧だしリスクの方が大きい。交渉は成立しているのだから蒸し返さない方がいい」

 彼女にそう言われると返す言葉も無い。確かに言う通りだ。

「じゃあ、一体……」

「調べるしかない」

「調べる?」

「学園に起こった事件なり事故を調べてマナコに関係するものを拾い出す。その中から彼女の仇になった者を見つけて直接制裁を加える」

「まあ、そういうことになるよなぁ。じゃあ取り敢えず学園史でも見てみるか。確か図書室に創立百周年誌ってのがあったよな」

「それは無意味。学園史には発行者の都合が悪いネガティブな歴史は記されない」

「まあ、それはそうなんだけど。マナコの着てた制服のデザインで大雑把な時代が割り出せそうだし」

「それにしても非効率」

 その通りなのではあるが他に方法が思いつかない。

 事件や事故を調べるなら、過去の新聞記事を調べるべきなのだろうが、それを行うとなると大変な労力が必要だ。恐らく公立の図書館に行けば過去の新聞がマイクロフィルムで保管されている筈だが、それらを閲覧しながら必要な記事を探すとなると莫大な時間がかかってしまう。直近の出来事ならネットで調べることもできるだろうが何十年も前の事となるとネットにデータは無いだろう。

 どうしたものか思案していると「検索屋に依頼する」と天津眼が言った。

 検索屋? 何だ? それは?

「この種の情報を集める情報屋」

 そう言って彼女は自分のスマホを取り出した。

 そんなサービスがあるとは始めて知った。

 それってやっぱり金がかかるんだよな。まあ、この際、多少の出費は覚悟できるがやはり時間は惜しい。となるとこの類の作業はアウトソーシングした方が賢明かな。

「大丈夫。一時間もしないうちに結果が出る」

 事も無げに彼女が言う。

「今のうちに着替えておいて」

 そう言われて気がついた。

 僕は真っ裸のままだった。

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