(22)
知っていたのか。
イジメを受けている素振りは他人には見せなかったのだが。
恐らく他の第三者は誰も気付いていない筈だ。
「後ろから教室の様子を眺めていれば大抵のことは分かる」
そうなのか?
もちろん、そんなに単純な話ではないと思うのだが天津眼ならば何でも見通してしまいそうな気がする。
「でもそんなに簡単に共鳴とかするものなのか? そんなことで取り憑かれたら世の中は大変なことに……」
「そうでもない。地縛霊は強い後悔や怨念を持ったまま死んだ者がなるものだけど普通は数日で消えてしまう」
「それってつまり成仏するってこと?」
「要約するとそう。だから何十年もそこに居ることが極めて異例。それだけの強い思念が無ければ生きてる人間の精神に反応などしない」
「なるほど」
「普通なら手順を踏んで精神を反応させるものを、マナコは偶然あなたの精神と反応したことを利用して自ら識神化した」
「えっと、ごめん。よく分からない。そもそも識神って何? 地縛霊とは違うんだよな」
「違う。地縛霊は自分が死んだことを受け入れない霊。場所に縛られているから動けない。識神は元が人間だとは限らない。精霊、妖怪、九十九神、神霊、何でもあり。もちろん元が幽霊であってもおかしくない。獣だろうが幽霊だろうが識神になれば差異は無いとされる。つまり識神になってしまえばそれは識神。神になるということ。さっきも言ったように本来、識神は人に取り憑いたりはしない。きちんとした手順で召喚すべきもの。宿った特別な力を発揮してもらう為にお願いして神域から光臨してもらう」
「特別な力?」
「そう。陰陽道に限らずその類の人達に識神使いは多い。つまり神憑き」
「お前もそうなのか?」
「違う」
だったら何だ……と言いかけて止める。
聞かない約束だもんな。
「で、そいつには具体的にどんな力が?」
「超常現象と呼ばれる多くのものを引き起こす能力。種類は色々あるし、個別にその能力は異なる」
「超常現象? よく言う透視とか予知とかそういうのか?」
「そういうもの」
超常現象否定派の僕としてはどうしても欺瞞に思えてしまう。そもそも予知なんか出来たら、この世を支配することだって可能じゃないの?
もし仮に僕がそんな力を持ったとしたら、権力欲なり支配欲に流されて世界を滅ぼし兼ねない。だったら他の個人を持つのがけしからんと思うのが当然だ。
「どうしてマナコは識神になろうとしたんだ?」
「地縛霊である限り彼女の復讐は果たされない」
「識神になれば果たせると?」
「神を憑けた者が力に魅了され、欲に籠絡すれば意のままに操ることができる」
なるほど。
「古今東西その種の例は枚挙にいとまがない……か」




