表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/33

(20)

 見ると黒髪で細面の美人だった。そいつは不敵に笑いながら座っている僕を見る。なまじ、美人なだけにその不自然な笑みのいびつさが際立って見えた。

 そしてそいつは――自らをマナコと名乗った者は――それまでの滑舌の悪さが嘘のように滔々(とうとう)と喋った。

「でも、もう大丈夫。私がこの人を助けたの」

 そう言って眼を細めて座っている僕を見つめる。

「…………」

 何故だか天津眼は返事をしない。

「だから私は自由。手も足も眼球だって動かすことが出来る」

 そこでマナコは天津眼に向き直ってこう言った。

「私は復讐する。嘘で塗り固められた歴史を壊してやる。そうして全てを覆す。全部、暴いて復讐してやる!」

 激しい口調だった。

 歳の頃は僕らと大差は無いであろう黒髪美人の口から、「復讐」などと聞かされるのはあまり気分の良い話では無い。事の異様性は差し置いたとしても、彼女の言葉の異様性で身の毛がよだちそうだ。

 しかし天津眼は相変わらず顔色一つ変える様子も無い。

 ただ淡々とマナコに語りかけた。

「あなたがこの人を助けた?」

「そうよ、私はこの人を助けたわ」

「でも彼は誓約を行ってはいない」

「…………」

「あなたは喚び出されていない」

「……でも助けたわ」

「あなたは祟りたい?」

「いや……だって……それは……どうして?」

 それがどういう意味合いのネゴシエーションなのか僕には知る由もないが、マナコが明らかに動揺しているのは分かった。

 むしろ一本調子で感情に抑揚の無い天津眼の方の凄みが増すように感じられた。

「あなたの望みは復讐すること」

「……そうよ」

「わかった。裁定は行わない。誓願は叶える。代わりにわきまえて」

「でも……それは」

 どういう訳か女はうらめしそうに座っている僕を見た。

「もう一度だけ言う。弁えなさい」

 天津眼の言葉が命令調になった。口調も表情も相変わらずだった。しかし、そこには相手を圧倒させるだけの何かがあった。これに比べれば時折、彼女が教室で見せる威圧感などまるで子供の虚勢のようなものだ。

 随分と長い沈黙の後、マナコは諦めたように弱々しく言った。

「……分かった」

 返事をすると彼女は出現した時と同じようにいつの間にか居なくなっていた。一瞬前までは居た筈なのに、いつの間にか居なくなっていたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ