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 改めて部屋を見回すとやはりホテルのようだった。正面は全体が窓になっている。恐る恐ると外を見るとすごい光景だ。いわゆるオーシャンビューってやつ。

 足元には港湾施設やら人口海浜があるが、ほとんど全面が海である。遥か彼方に水平線と、その上にへばりつくように雲が沸き立っているのが見えた。

 よく分からないけど、これってスカイツリーの展望室くらいの高さはあるんじゃないの?

 窓は開かない構造になっているものの何かの弾みで割れてしまったらどうなるんだろう? そう思うと窓の側に寄ることさえ躊躇してしまう。今まで大した自覚は無かったが、どうやら僕は高所恐怖症だったらしい。

 ここは一体、何階なんだろう?

 窓から見上げてもその上にフロアがあるのかは分からない。

 もしや最上階ってことは無いだろうな。もし最上階だとしたら、人気アーティストの噂は誤認ということになる。

 色々と興味は尽きなかった。

 しかし今は余計なことを考えている暇は無い。

 問題解決に勤しむべく天津眼の指示に従うことにしよう。

 そういえばガウンに着替えても下着は付けててもいいんだよな?

 いつもより丁寧にシャワーを浴び、タオル地のガウンに着替えると、まるで測っていたかのように彼女がやってくる。

 そして別の部屋に案内された。

 その部屋には窓が無かった。間接照明だけなので薄暗い。

 煙くて甘ったるい匂いがして、少しせそうになった。

 こうを焚いているのだ。

 出来ればマスクをしたい所だが香には意味があるのだろうから我慢する。

 どうやらここが儀式・・の舞台となるらしい。

 それは確かに儀式めいた演出空間だった。

「ガウンを脱いでそこに座って」

 薄明かりの中、部屋の中央に肘掛け付きの椅子が一脚だけ置かれたあるのが見えた。言われた通りにガウンを脱いで椅子に座ろうとすると「全部脱いで」と彼女。

 ガウンの下にはパンツがある。まさかこれを脱げというのか!?

「脱いで」

 取りつく島もなく言う。

 いや、でも……。

 精神的葛藤は多分にある。

 しかし、ここで「出来ない」と拒否して振出しに戻るのも面倒なので仕方なく僕は脱いだ。脱ぐと急いで椅子に座って足を閉じた。音が体の外に漏れてるんじゃないかというくらいに心臓がバクバクと鳴る。

 これだって一歩間違えば立派なイジメである。

 その一方でクラスメートの女の子の前で全裸にさせられるという恥辱を受けて僕のマゾ気質が開花したらどうしよう、とかアホなことを考えたりした。

 天津眼はいつもと変わらない。

 こちらの緊張などお構い無しに、ゆっくり近付いて来て僕の頭に手をかざした。

 全裸の僕は恥ずかしさで失神しそうだ。

「目を閉じて」

 相変わらずの無機質な口調で彼女が言う。

 僕は黙って従い、目を閉じた。

 するとその瞬間に平衡感覚が無くなって倒れ込んだような気がした。

 気がした?

 そうなのだ。

 気がしただけなのだ。

 倒れ込んだような感覚はあったのだが僕の体は椅子に座ったままだった。まるで体と感覚が切り離されてしまったかのような奇妙な感じ。そんな奇妙な失調感のまま何分過ごしただろう。もしかしたら、少し眠ってしまっていたかもしれない。

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