(13)
しかし彼女は表情を変えず話を続けるのだった。
「このまま取り憑かれてしまえば、あなたは人格を失う」
「は? なに? それ?」
「肉体は維持されてもあなたの心が無くなってしまう。そうして別の人格に支配される」
「はあ?」
「私があなたを助ける。ただし、条件が三つ……」
「ちょ、ちょっと待った!」
展開が早すぎるぞ。
「条件とか言うけどさ……、その……お前が言うことが間違ってるってことも有り得る訳だし」
そう言うと天津眼はまた少し困ったような表情を見せた。
確かに「得たいの知れない何か」が僕の胸を這い回っているのは僕も見た。しかしそれは彼女が仕掛けた奇術だという可能性だってある訳だ。
「信じてもらうしかない。それにあなたの身体は分かっている筈」
体は分かっている?
邪なことを妄想してしまいそうな言い草だな。
『ぐへへへ、口では拒否しても躰は分かっているようだな』的なアレか?(ドレだ?)
いや、冗談を言ってる場合じゃないので自重するけどさ。
「どういう意味なんだ?」
「体調……良くなった筈」
体調? 体調って……あっ!
言われて気がついた。さっきまでの頭痛が消えている。正常な状態に戻った……というより正常以上に調子が良い。
「頭痛が治った?」
薬なんか飲まされてないよな?
「さっきの頭痛は今の現象と関係あるのか?」
「心を乗っ取られようとしているのだから、頭が痛くなるのは当然」
そうなのか?
「心」というか「思考」は脳で行っているのだから、理屈としては間違っていないような気もする。何だか言いくるめられているような気もするのだが。
「じゃあ、さっきのは……僕の胸に……その、何というか……く、口を付けたのは……」
口に出すのは何だか照れる。詰まりながら話していると彼女が即答した。
「動きを封じた。ただし一時的なものだから早急に手を打たないとアウト」
動きを封じた?
ということはアレは僕を助けるための行動だったということなのか?




