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 状況を整理しよう。

『僕は同級生の女の子から人目に付かない部屋に連れて来られた挙げ句、無理矢理上半身を脱がされて、目をつぶれと迫られた』

 まとめるとこんな所か……って、どんなエロゲーだよ!

 シチュエーションだけを語ればよこしまな妄想に走ってしまいそうだ。しかしどう考えても僕が今置かれている状況はそういう淫らな密事が繰り広げられる伏線ではないと思う。

 むしろ電波女子の怪奇的見立て殺人の犠牲者ってところが今の僕には妥当な配役って気がする。目を閉じた瞬間に隠し持っていたナイフで彼女からメッタ突きにされるとか、そんな感じ。

 恐る恐る天津眼の様子を伺ってみると、やはり少し戸惑ったような表情を浮かべたままだ。

 僕は今までに彼女そんな表情を何度も見たことがある。

 そしてそれはある意味では、切なくなる瞬間でもあった。

 どういうことか?

 クラスで孤立している天津眼は手持ち無沙汰に教室の隅に一人でポツンと居るのが常で周囲に無関心を装って静かに窓の外を眺めたりしている。しかし、それは退屈しているのではなく孤独に堪えているのだということを僕は知っていた。これは同じ境遇にいる者だけが感じるシンパシーだ。他の連中には分からないだろうと思う。

 孤立するということは同じ教室の中に居ても他とは全く異なる時間の中にいることなのだ。充足したキャンパスライフを送る者には「孤独に晒される一日の長さ」など想像出来る筈が無い。

 あの寂寥感に苛まれる憂鬱な午後、天津眼は少しだけ戸惑ったような表情を見せるのだった。

 彼女がまるで結界を張るように周囲の人間を寄せ付けない理由を僕は知らない。けれど彼女が、孤独を愛するが故に他人を拒絶しているとは僕にはどうしても思えなかった。

(きっと彼女には何がしかの理由があって孤独なのだろう)

 理由はそんな単純なことだった。

 彼女が電波だったとしても「いいや」と僕は思ってしまった。

 天津眼が何を思って、わざわざ授業中に僕をここに連れてきたのかは知らない。どうしてこんな奇行を働いているのかも分からない。

 でも、そんなことはもうどうでもいいと思った。

 つくづく僕も主体性の無い男である。今日一日で、どれだけ宗旨替えするというのだろう。

 しかしこれはもちろん頭痛のせいで思考がおかしくなったわけではない。密着していた彼女の鼓動を感じたせいでもない。ましてや密着した時の彼女のバストの感触が思った以上に心地よかったせいでは無い。

 ……敢えて念を押す。それだけは断じて違う。

 今日で僕はこの学園を去る。

 イジメを受け、誰からも相手にされることなく一年近くを過ごしたこの場所を静かに去るのだ。その最後の最後に同胞だったともいえる天津眼が僕に何かを望むなら、それくらい叶えてやってもいいじゃないか。

 と、そんな気分になったのである。

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