表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
985/1159

902話 出発

「気を付けてね」


ロティスさんの言葉に、笑顔で頷く。


「色々、ありがとう。また来るね」


「えぇ、待ってるわ。絶対に遊びに来てね」


ロティスさんは少し寂しそうに笑うと、私の手を握る。

ジナルさんが、そんな彼女を見て楽しそうに笑った。


「ジナル! その顔はムカつくわ!」


「元々、こんな顔だ!」


旅の準備をしている間に、何度も見た2人のやり取り。

これも、今日で当分は見納めか。


「あぁ、しみったれた顔ね」


「はぁ?」


「相変わらず仲がいいな」


シファルさんの言葉に、ジナルさんとロティスさんの言い合いがぴたりと止まる。

そして、


「「ただの腐れ縁だ!」」


本当に仲がいい。


旅に出発する日が決まり準備を始めると、ジナルさんとロティスさんが一緒にいる時間が増えた。

そうしたらなぜか、2人の言い合いが増えたのだ。

それに最初は驚いたんだけど、お父さんが「あの2人の様子をよく見てごらん」というので、よく観察した。

その結果、2人が言い合いを楽しんでいる事に気付いた。

それにホッとしたけど、結構辛辣な事を言い合うので私はドキドキしてしまう。


「またな!」


「またね。怪我には気を付けなさいよ! 教会の奴等がまた残っているんだから! あと変な物を食べない様にね!」


「分かってる! という、それはさっきも聞いたぞ?」


「えっ?……確かに言ったわね。ふふっ、元気でね」


「ロティスも」


ジナルさんとロティスさんが笑顔で握手をする。

そして、ロティスさんがセイゼルクさん達に別れの挨拶を終わらせると、カシム町から出発した。


「フィロとガガトに会えなかったのは残念だったな」


セイゼルクさんの言葉に、皆が頷く。


「急な仕事だったから仕方ないよね」


フィロさんとガガトさんも、見送りに来てくれる筈だった。

でも、大通りの飲み屋で知り合いの冒険者達が大暴れ。

暴れた経緯を聞き出して欲しいとギルマスからお願いされ、2人は捕まった冒険者達の下へ向かった。


大暴れした冒険者達は、「少し前から関係が壊れていた」とロティスさんが言っていた。

「とっととチームを解散して、気の合う仲間で新たにチームを作ればよかったのに」とも。


「チーム内がギスギスするとか、嫌だよな」


ラットルアさんの言葉に、セイゼルクさんがシファルさんを見る。

彼は、そんなセイゼルクさんに「にこり」と笑みを見せた。


「……そうだな」


慌てて視線を逸らすセイゼルクさん。


シファルさんのせいで、チーム内がギスギスした事でもあるのかな?


彼等の視線の意味が分からず、首を傾げる。


「シファルの場合は、他チームの冒険者と仕事した時にちょっとな」


ラットルアさんの言葉に、セイゼルクさんが溜め息を吐く。


「問題のある冒険者だと、シファルが何時切れるか分からないからドキドキしたよ」


「あぁ、なるほど」


私が納得して頷くと、シファルさんが小さく笑う。


「あんな屑共と一緒に仕事をさせようとしたセイゼルクが悪い。アイビーも一緒に旅をする者達の頭が悪いと嫌だろう? 自分達の言いたい事だけ言って、こっちの話を聞かないとか。魔物を倒す時に、邪魔してくるとか」


「それは、確かに嫌だね」


そんな冒険者達と仕事なんて、すごく大変そうだな。


「私は運がいいんだと思う。これまで一緒に旅をした人達は、皆良い人達だったから」


というか、すごい人達ばかりと旅をしているよね。


「仕方ないんだろう? 冒険者ギルドで、勝手に相手を組まれてしまったんだから」


そんな事があるんだ。

命を掛ける仕事だから、一緒に仕事をするチームは選べるのかと思っていたな。


「んっ? 冒険者ギルドが勝手に? それは規律違反だろう?」


セイゼルクさんの言葉に、お父さんが真剣な表情になる。


「あぁ、本来は駄目なんだが……」


あれ? 

どうしたんだろう?

セイゼルクさんが困った表情になっている。


「仲の良いギルド職員に頼まれたんだ。苦情の多い冒険者達を再教育して欲しいと」


ヌーガさんの言葉に、セイゼルクさんが小さく頷く。


「若い冒険者達を育てるのは、俺達の役目だ。だからある程度は仕方ないと思って許可をしたんだが」


「誰を紹介しても拒否しないから、いつの間にか勝手に組まれる様になったんだよな」


シファルさんの言葉に、セイゼルクさんが大きく溜め息を吐く。


「あぁ、だが前回の事があるから、もうそれもないだろう」


セイゼルクさんの寛大なところが、利用された感じかな。

でも、前回の事って何だろう?


「前回も勝手に相手を組まれていてセイゼルクが抗議したら、『これで最後だから』と、押し付けられたんだよ」


ラットルアさんの言葉に、シファルさんが楽し気に笑う。


「少し前に俺が、規律違反だからと注意したんだけどね。しかも、もうお願い出来ないと思ったのか、最後に問題児の集まるチームを押し付けてきやがった」


シファルさんをチラッと窺うと、笑顔だけどすごみを感じる。

いったいどんな冒険者達の集まりだったんだろう?


「まぁ、あいつ等は二度と冒険者になろうとは思わないだろうし、ギルド職員のアルティオも、二度と勝手に組む事はない」


セイゼルクさんが苦笑する。


「何をしたんだ?」


お父さんの言葉に、セイゼルクさん達は黙ったまま首を横に振る。

極秘なのかな?


「そうか」


お父さんがセイゼルクさん達の態度を見て、肩を竦めた。


「そう言えば、ドルイドの問題は解決したのか?」


お父さんの問題?


お父さんを見ると、なぜか不思議そうにセイゼルクさんを見ている。


「届いたふぁっくすを読んで、唸っていただろう?」


あぁ、オール町にいるおじいちゃん達からのふぁっくすだ。

おじいちゃんから届いたふぁっくすは、「連絡が遅い」と怒っていたな。

おばあちゃんからは、「心配した事と無事で良かった」だったよね。

ふふっ、初めてドルガスさんから届いたふぁっくすは、最初は心配した事で次は今までの事の謝罪。最後は奥さんが可愛いだったっけ。


ふふっ。

ドルガスさんのふぁっくすを読んだお父さんは、ふぁっくすを手に持って固まっていたよね。

返事を書いている時も、おじいちゃんとおばあちゃんはすぐに書き終わったのに、ドルガスさんへの返事は何度も書き直していた。


あんなに困った表情のお父さんは見た事がなかったから、私はちょっと楽しかったんだよね。

隣でこっそり笑っていても、いつもなら気付くのに気付かないし。

あれは、ちょっと面白かったな。


私の方は、フォロンダ領主からある程度話を聞いていた様で、ふぁっくすを送ったら無事で良かったという内容だったな。

まぁ、「遅い!」とは書かれてあったけど。


「あれは、家族からのふぁっくすなんだ」


「そうだったのか? ふぁっくすを読んで眉間に皺を寄せて唸っていたから、問題に巻き込まれたのかと、心配だったんだ」


セイゼルクさんの言葉に、お父さんが小さく笑う。


「ありがとう、大丈夫だ。ちょっと返事に困る内容が含まれていたからさ」


ドルガスさんのふぁっくすだね。

間違いなく。


「家族や知り合いからのふぁっくすだと、たまにあるよな。それを俺に言うのか? という内容が」


あるんだ。

あっ、セイゼルクさんの言葉にヌーガさんが顔を歪めた。

という事はヌーガさんも経験があるのかな?


ヌーガさんの家族……ちょっと、気になるな。


「最弱テイマー」を読んで頂きありがとうございます。

本日より、新しい章を始めます。

これからも、どうぞよろしくお願いいたします。


ほのぼのる500

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ヌーガさんの家は皆肉が好きそう。
[良い点] 普段から可愛いアイビーですけど、序盤の必死さから数々の出会いと経験を経て、周りの様子(今回は兄のノロケに困惑極まっていたお父さん)を楽しんでいるのちょっぴり黒w…じゃなくて余裕が出て来てい…
[良い点] 更新再開ありがとうございます。゜(゜´Д`゜)゜。 [気になる点] 「そう言えば、セイゼルクの問題は解決したのか?」 お父さんの問題? ↓↓ セリフはドルイドさんの名前ではないでしょう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ