899話 言ったよね?
「皆、おはよう」
欠伸をしながらソラ達に声を掛ける。
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
「ぺふっ」
「にゃうん」
昨日は、色々なお店を夕方まで見て回った。
優待カードで特別な物を買って、最後はロティスさん達を合流して夕飯を食べた。
凄く、楽しかったぁ。
「うぅ~」
両手を上げ、固まった体をほぐす。
「ぷっぷ!」
「てりゅ!」
ベッドの周りを飛び跳ねているソラとフレムを見て笑う。
「朝から機嫌がいいね」
マジックバッグからソラ達のご飯を出し並べる。
「どうぞ」
食べ始めたのを見てから、マジックバッグの中身を確認する。
「5日分ぐらいかな?」
明日は捨て場に行けるはずだから。
「今日はもう少し多めに出すね」
「ぷっぷぷ~!」
「てっりゅりゅ~!」
「ぺふっ!」
私の言葉に、嬉しそうに鳴くソラ達。
「やっぱり少なかったのか」
皆の前に追加のポーションとマジックアイテムを並べる。
今日の夜も多めにあげよう。
服を着替えて、皆と一緒に食堂に入る。
既にお父さんとセイゼルクさん達が居た。
「おはよう……んっ?」
「「「「「おはよう」」」」」
食堂に居たお父さん達に声を掛けるが、皆の表情を見て戸惑う。
「どうしたの? 顔色が悪いけど」
何かあったのかな?
んっ、待って……まさか。
「飲み過ぎ?」
「「「「「……」」」」」
私の言葉に、お父さんだけでなくセイゼルクさん達も視線を逸らす。
「終わるって言ったよね?」
優待カードで飲めるお酒があると知り、皆はあちこちのお店でお酒を楽しんだ。
結構な量を飲んだのに、この家に戻ってからも飲み始めたので少し驚いた。
私が部屋に戻るまで飲んでいたので「飲み過ぎているよ」と注意したら、皆は「もう終わる」と言った。
でも、どうやら終わらなかったようだ。
「悪い」
お父さんが申し訳なさそうな表情で私を見る。
「あっ、二日酔いに効く薬草の入った水を作るね。ちょっと濃い目に」
私の言葉に、眉間に皺を寄せるお父さんとセイゼルクさん達。
皆、知っているもんね。
二日酔いに効く薬草の複雑な苦みとえぐみと渋みの味を。
部屋に戻ってマジックバッグから薬草を取り出す。
それを持って調理場に行き、5人分の薬草の入った水を作る。
薬草の量は、適量。
さすがにあの味を知っているので、多くするのは可哀想になる。
「どうぞ」
皆の前に薬草の入った水を置き、朝ご飯を取りに行く。
白パンと、薄切りの味付きお肉とサラダ。
「挟んで食べたらおいしいはず」
椅子に座って、皆を見る。
複雑な表情で目の前のコップを見るセイゼルクさんとラットルアさん。
お父さんは飲んで「あれ?」という表情をしている。
ヌーガさんは、小さく「よしっ」というと、コップの中身を煽った。
そして、凄い表情をした。
シファルさんは、いつの間にか飲み終わっっている。
「いただきます」
白パンに、お肉とサラダを挟んで食べる。
「おいしい」
お肉に味が付いているので、白パンに沁みて良い。
「ありがとう」
お父さんが、熱いお茶を手に目の前の椅子に座る。
「どういたしまして。効いた?」
「あぁ、気持ち悪さが無くなったよ」
「そんなに飲んだの? あれ? 隈が出来てるよ」
まさか、昨日の夜からずっと飲んでいたのかな?
「あ~、話が弾んで気付いたら朝だった」
「体には気を付けてね」
「分かった、気を付ける」
朝ご飯を食べ終わり、さっぱりした味の果実水を楽しむ。
「そうだ。今日の午後1時頃にロウじいがスノーを連れて来てくれるそうだ」
スノー。
研究所から逃げ出した魔物が生んだ子。
元気かな。
「今日は、1日この家で皆と遊ぶからいつ来ても大丈夫だね」
昨日の夜、家で遊ぶか森に行くか聞いたら家を選んだ。
森の方が自由に遊べると思ったけど、家がいいらしい。
ガチャン。
「お~い。来たぞ~」
あっ、この言葉とこの声は知っている。
ロウじいさんだ。
「早過ぎるだろう」
お父さんが時計を見る。
約束の時間は午後だから5時間前だね。
「ちょっと、約束は午後でしょ?」
あれ?
ロティスさんの声だ。
「行こうか」
お父さんと一緒に玄関に行くと、ロティスさんが呆れた表情をしていた。
「クル。クル」
あっ、スノーの声だ。
何処だろう?
「あそこだ」
お父さんが指したのは、ロウじいさんの傍にあるカゴ。
そのカゴには、なぜか小さな車輪がついている。
そしてカゴの中からガルとスノーが顔を出していた。
「可愛い」
鼻を引くつかせ、周りの様子を窺っているスノー。
そのスノーがカゴから飛び出し過ぎると、ガルの前脚がスノーの頭を押さえている。
「確かに、あれは可愛いな」
いつの間にか傍に来たセイゼルクさんの言葉に頷く。
「ほれ、行くぞ」
ロウじいさんが、カゴの中からガルとスノーを抱き上げると、すたすたと家の奥に向かう。
それを慌てた様子で追うロティスさん。
「俺達も行こうか」
お父さんの言葉に頷くと、ロウじいさんの後を追う。
ロウじいさんは、この家の事を知っているようで奥にある部屋に入ると、ガルとスノーを足元に置いた。
「遊んでいいぞ」
「クル。クル」
ロウじいさんの言葉に反応するスノー。
少しの間だったけど、いい関係を築けたみたい。
「良かった」
スノーには、幸せになって欲しい。
「元気そうだな」
セイゼルクさん達が部屋に来る。
そしてスノーを見ると、嬉しそうに笑った。
ロティスさんが全員分の果実水を用意する。
「ガルとスノーは?」
ロティスさんがロウじいさんを見ると、彼は2匹を見た。
「水だけ用意してくれ」
「分かった」
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
「ぺふっ」
「にゃうん」
あっ!
ソラ達が来てしまい、慌ててお父さんを見る。
「ほぅ。これは珍しいな」
ソラ達を見て、少し目を見開いたロウじいさん。
「すまない、この事は」
「もちろん誰にも言わんよ。レアスライムを持っているとバレると危険だからな」
お父さんの言葉に、ロウじいさんが悲しそうな笑みを見せる。
「レアスライムの取引価格が高騰しているからな」
セイゼルクさんの言葉に眉間に皺が寄る。
それって裏取引の事だよね。
「今はレアスライムだけでは無いわ。ゴミ処理の能力が上がったスライムも狙われているのよ」
ゴミ処理の能力が上がったスライム?
あっ、関係を改善してスライムが頑張ってくれているんだ。
「それって、テイマーと引き離したら能力は落ちるよね?」
「だから、テイマーも誘拐するそうよ」
えっ!
「まだ誘拐が成功した事例は無いわ。でも、攫われかけたという報告が来ているわ」
ロティスさんの話に、お父さんが険しい表情を見せる。
「これからは、今まで以上に気を付けないと駄目だな。裏取引については、いつもの事だとあまり注意をしていなかった。冒険者ギルドから、危険度が上がったという情報も無かったから」
「今のところ、素人が集まった組織だからな。そうだ、アイビーとドルイドはこれからどうするの?」
お父さんがロティスさんを見た後、私に視線を向ける。
「カシメ町にある、本屋が気になっていただろう?」
あっ、占い師さんがくれた本と同じ本がある本屋さん。
「うん」
「王都に行く前に、カシメ町に行く予定にしている」
「俺達も一緒に行く予定だから」
お父さんの言葉の後に、ラットルアさんが手を上げて応える。
そう言えば、ジナルさんもカシメ町の本屋に行きたいと言っていた。
皆でカシメ町に行く事になりそう。




