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895話 終わらせる

倒れた木々を避けながら、魔物を探す。


「いたぞ」


セイゼルクさんの言葉と同時に、魔物がこちらに向かって来るのが見えた。

それをシファルさんとラットルアさんが倒す。


「ガガト、これも頼む」


「分かった」


シファルさんがガガトさんに声を掛けると、彼は魔物の状態を調べ始めた。

そして、調べ終わると魔物から魔石を取り出し袋に入れた。


研究所を破壊した昨日の夜、ジナルさんが「この周辺にいる魔物を殺そうと思う」と言った。

それについて、ロティスさんもセイゼルクさんも賛成。

もちろんお父さんと私も。


私達を襲って来た魔物は、皆つらそうだった。

倒さなければならないため、戦っている時は見ない様にした。

でも、やっぱり思い出す。

だから、苦しみから解放するためにも殺す事に賛成した。


「はぁ」


溜め息に視線を向けると、ガガトさんが魔石の入った袋を睨みつけていた。

魔物達を苦しませ続けた魔法陣が刻まれた魔石。

そんな物を放置出来ないため集めているけど、彼は持っているのも嫌そうだ。


「そろそろ終わろうか」


ジナルさんの言葉に、皆がホッとした表情をした。


「これからどうする?」


セイゼルクさんがジナルさんを見る。


「そうだな。取り合えす王都と連絡を取りたいからカシム町に戻ろう。木の魔物がどうしているのか気になるし」


そうだ、木の魔物。

フォロンダ領主がいるから大丈夫だと聞いたけど、心配なんだよね。

怪我とかしていないかな?


「そうね、あの木の魔物の事は心配だわ。王都には馬鹿な冒険者もいるから」


「えっ」


それは冒険者が、木の魔物を傷付ける可能性があるという事かな?


「大丈夫だ。フォロンダ様には、一緒に旅をしている木の魔物について報告してある。あの方の事だ、王都に行った木の魔物の様子から気付いてくれるはずだ」


「そうなんだ」


ジナルさんを見ると、なぜか嫌そうな表情をしている。


「あぁ、凄く感が働く人だから。嫌になるくらいな」


あっ、ロティスさんもジナルさんと似た様な表情をしている。

フィロさんは、視線を逸らした?

えっ、フォロンダ領主はいったい何をしたの?


「フォロンダ様と話す時は、いまだに緊張するんだよな」


ガガトさんが困った表情をする。


「そう? 俺は平気だけどな」


シファルさんが小さく笑って言うと、隣でセイゼルクさんが微妙は表情をした。


何があったんだろう?

凄く気になる。


「ククククッ?」


サーペントさんの鳴き声に視線を向けると、不思議そうに私達を見ていた。


「サーペント、もしかして出来たのか?」


「ククククッ」


「ありがとう」


ジナルさんがサーペントさんの頭を撫でる。


「それじゃ、しっかり終わらせようか」


ジナルさんの言葉に、倒した魔物を移動させる。

向かった先には、サーペントさんが作ってくれた大きな穴。

そこに倒した魔物を入れて行く。


「これで最後だな」


ヌーガさんが最後の魔物を穴に入れる。


「サーペントとポポラのお陰で早く終わったよ。ありがとう」


「ククククッ」


フィロさんの言葉に、サーペントさんが嬉しそうに鳴く。

ポポラはフィロさんに顔を摺り寄せた。


「ドルイド、頼む」


「分かった。全員、少し離れてくれ」


お父さんが剣を抜く。

そして嵌っている魔石を触ると、穴に向かて火の攻撃を放った。

穴に落ちた魔物が、一気に炎に包まれる。


お父さんがもう一度、燃え上がっている炎に向かって火の攻撃を放つ。

ぶわっと炎が空に舞い上がると、少しずつ火の勢いや弱まる。

そして、数分後には消えた。


穴の中を見る。

黒く焦げた土に残る灰。

骨も完全に燃えてしまった様だ。


「凄い威力よね」


ロティスさんが、お父さんの持つ剣を見る。


「あぁ、この威力だから使う時を考えないと、森が一瞬で火の海になると思う」


あぁ、確かに。

今の炎が森に燃え移ったら、凄い事になるだろうな。


「穴を埋めるか」


ジナルさんの言葉に、穴の傍に積みあがっている土を穴に入れて行く


「ククククッ」


サーペントさんが、体を使って大量の土を移動させ穴に入れる。

その器用な姿に、拍手をしてしまう。


「凄い」


「ククククッ」


少し自慢げに鳴くサーペントさんに、皆の表情が明るくなる。

今までちょっと暗かったから、それにホッとした。


「終わったな」


「そうね」


「……すまなかった」


土で埋まった場所を見て、ジナルさんが小さく呟く。

ロティスさんは、そんな彼の肩をポンと軽く叩いた。


「帰ろうか」


「あぁ、そうだな」


荷物を持ち、全員でカシム町に向かう。


行きはサーペントさんと木の魔物に乗って少しでも早く。

帰りは、ゆっくり。


しばらく歩くと振り返る。

もう研究所のあった場所は、木々で見えない。

見えるのは、大量の魔物に襲われた崖。


「あっ」


崖を見て、声が漏れる。


「どうした?」


お父さんが私の視線の先を見て、息を吞んだ。


「何か見えるのか? えっ!」


ラットルアさんも私達の視線の先を見て、声を上げた。


「どうする?」


ロティスさんの声が少し震えている。


崖の上。

そこには、数匹の魔物の姿があった。

その魔物達が研究所にいた魔物だと、その体を見てすぐに分かった。

皆、どこかおかしかったから。


「あの魔物達は……」


ジナルさんが苦しそうな表情をする。


「あっ! 子供がいる!」


数匹の魔物の後ろから、小さな存在が飛び出した。

そして、元気に走り回り出した。

その子供達を守る位置に、魔物達が動く。


「大丈夫そうだな」


ジナルさんが嬉しそうに笑う。


「うん、きっと大丈夫だわ」


ロティスさんの言葉に、フィロさんとガガトさんが笑って頷く。

セイゼルクさん達も、走り回っている小さな魔物を見ると笑顔になった。


「行こうか」


ジナルさんに促されて歩き出す。

しばらく歩くと、肩から提げていたバッグが揺れた。


「もう、いいかな?」


振り返っても、もう崖は見えない。


「いいだろう」


ソラ達が入っているばっぐを開けると、勢いよくソラとフレムそしてソルが飛び出してくる。


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


「ぺふっ」


元気な3匹の姿に、皆が笑顔になる。


「さて、帰りは……5日ぐらいかかるかな?」


ジナルさんの言葉にロティスさんが笑う。


「行きは早かったもんね。あの速さは二度と経験したくないわ」


「えっ? 楽しかったけどな」


お父さんの言葉に、ロティスさんの頬が引きつっている。

そしてハッとした様に私を見た。


「アイビーも平気だったわね」


「うん」


今回は、研究所に向かっていたから嫌なドキドキ感があったな。

次は、あの速さをただ楽しみたい。


「ククククッ」


「んっ? もしかして乗せてくれるの?」


「ククククッ」


「行きみたいに早くは出来る?」


「ククククッ」


「待って、帰りはゆっくりでいいと思う」


必死のロティスさんに、思わず笑ってしまう。

そんなに怖がる必要は無いと思うんだけどな。


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― 新着の感想 ―
自白剤を使った見張り役、「後で研究所と一緒に燃やそう」と言われていましたが、研究所の爆破は閉鎖とほぼ同時で、思い出されてもいないようでしたので、放置されているよう…な。 魔物の火葬時に一緒にいれたので…
[一言] エピソード977と978で894話と895話の筈が984話と985話になっています。
[気になる点] 研究所の中に居た身なりの良い若い男(サーペントさん見て即気絶した奴)どうした?まさか研究所と一緒にドカン?前回あった得体の知れない魔力は何?騒動の原因であろう公爵は何処行った?大きな問…
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