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879話 赤い光

お父さんの邪魔にならないように気をつけながら、近付いて来る木の魔物を見る。


あれ?

あんな感じだったかな?

私を襲った木の魔物は、もっと恐ろしい魔物に見えた。

もっと大きくて、目ももっと鋭くて。


確かに目の前にいる木の魔物は、一緒に旅をしている木の魔物より怖い印象を受ける。

でも、何か違うような気がする。


ヒュッ。


木の魔物が、ジナルさんに向かって根で攻撃する。

動きは鈍いが、根の動きは速い。

彼がそれで怪我をするはずは無いけど、少し不安になる。


「この木の魔物、なんだかちょっと……」


「あぁ、変だな」


セイゼルクさんの言葉に、ジナルさんが頷く。


2人の会話に首を傾げる。

やっぱり何か違うの?


「その木の魔物、さっきの奴等と一緒にいたんだ。奴等は、何かを使って木の魔物を操っていたように見えた」


「青い髪の男だ。そいつが、手の中に納まる物を見せると怯えていた」


ガガトさんとフィロさんの言葉に、周りを見回す。


「青い髪の男? あの岩の傍に、倒れている奴か?」


ヌーガさんが指した方を見ると、確かに青い髪の男性が倒れいる。


「確かめて来るよ。フィロ、手の中に納まる物で間違いないな? 他の特徴は思い出せないか?」


セイゼルクさんの言葉に、フィロさんが少し考える。


「あぁ。握り込める大きさだった。他は……赤い色だったと思う」


「分かった。行って来る」


「頼む。あっ、あぶないっ!」


セイゼルクさんが移動しようとすると、それを目掛けて根が襲う。


「大丈夫だ」


根を避けるセイゼルクさんは、そのまま目的の場所に走りだした。

木の魔物の根が彼に向かって伸びようとすると、ジナルさんが攻撃を仕掛けた。


「お前はこっちだ」


木の魔物は、すぐにジナルさんに向かって攻撃を仕掛ける。

彼は根を避けながら本体に近付くと、枝にぬかって剣を振り下ろした。


バサッ。


「ぎゃぁぁあ」


木の魔物は雄叫びをあげると、数本の根でジナルさんに襲い掛かった。

それを1本1本、対処していくジナルさん。


「ぎゃぁぁ、ぎゃぁぁ」


根が切られる度に苛立った様子を見せる木の魔物は、次々と根を増やし攻撃する。


「手伝う」


「俺も」


増えた根を見てヌーガさんとラットルアさんが、ジナルさんの援護に入る。

3人の攻撃で、根は次々と落ちていく。

が、いっこうに攻撃が終わらない。


「なんだ、この根の数は。おかしいだろう!」


ジナルさん達を襲う根の数は、既に20本以上。

木の魔物について本で学んだが、根の数は多くても10本前後だったはず。

20本以上はおかしい。


「奴等に何かされたのか?」


ヌーガさんの言葉に、ギュッと手を握る。


あの木の魔物は、研究所の被害にあった子なのだろうか?

でも、襲ってくる以上は倒さなくてはならない。


ヒュッ。


シファルさんの放った矢が、木の魔物の幹に深く刺さる。


「ぎゃぁぁあ」


今までとは違う。

どこか悲鳴のような鳴き声に、息を吞む。


「なんだ? 赤い光?」


矢の刺さった場所が赤く光り出すと、木の魔物の様子が変わった。

地面に何度も値を叩きつけ、何かを耐えている。


「どうしたんだ?」


そんな木の魔物の様子に、ジナルさんが戸惑った声を出す。


「見つけたぞ。何? どうしたんだ?」


赤い石のような物を手に持ったセイゼルクさんが、木の魔物を見て唖然とする。


「ぎゃぁぁあ」


赤い光りが輝きを増すと、木の魔物が苦しそうに暴れ出す。


ヒュッ。


私の傍にいた木の魔物が、苦しんでいる木の魔物に向かって根を振り下ろした。


バシッ、パラパラ。


根が、赤い光の傍を叩く。


ヒュッ、バラバラ。


もう一度、攻撃を仕掛ける木の魔物。

2度の攻撃で、木の魔物が赤く光っている場所を狙っているのが分かった。


ヒュッ……バシッ。


シファルさんが矢を放つが、根で弾かれてしまう。


「駄目だな」


「俺が行く。ヌーガ、ラットルア、根を頼む」


ジナルさんが、2人に声を掛けると木の魔物に向かって行く。

木の魔物は、苦しそうにしながらも、ジナルさんに向かって根を伸ばす。


「行くぞ」


「あぁ」


ヌーガさんとラットルアさんが、ジナルさんに襲いかかる根を切り落としていく。

が、根が倍に増えてしまう。


「俺達も行こう」


「分かった」


セイゼルクさんとシファルさんも、2人に続き根の対処に向かう。


「くっ」


ジナルさんの剣が、赤く光る幹に深く刺さる。


「きゃぁぁぁああ」


悲鳴が森に響き渡る。

その声に、耳をふさぐ。


バキバキバキ。


「がぁぁぁあ」


周りにあった、気持ち悪い感覚がふっと消える。


木の魔物を見ると、赤く光っていた場所が黒くなっていた。

そして、それが木の魔物の全身に広がっていく。


「ぎゃっ」


傍にいる木の魔物が、悲し気に鳴く声が聞こえる。


「ぎゃっ」


えっ?


黒くなっていく木の魔物から、落ち着いた鳴き声た聞こえた。


「ぎゃっ」


「ぎゃっ」


「ぎゃっ」


「ぎゃっ」


数回繰り返すと、悲し気に鳴いた木の魔物は根を大きく持ち上げると振り下ろした。


バゴッ、バラバラバラ……。


「あぁ、くそっ」


その様子を見ていたジナルさんが、悔し気な声をあげる。

セイゼルクさんは、彼に近付くと肩をポンと叩いた。


全員の気持ちが落ちくと、大怪我をしていたロティスさん達とその場を離れる。


「じゃ、後で」


ジナルさん達に手を振ると、お父さんとロティスさん達。

それにサーペントさん、シエルと一緒に移動する。

ソラ達は、なぜかまたバッグの中に戻ってしまった。


「うん。また後で」


ジナルさん達は、後片付けをするらしい。

おそらく、倒された木の魔物や襲って来た人達を調べるのだろう。


「ここで良いか」


お父さんが見つけたのは、小さな川が流れる静かな場所。

川辺には、白い花が沢山咲いていた。


「もう大丈夫なのか? 普通に歩いていたけど」


お父さんがロティスさんとフィロさんを見る。


「問題なしよ。怪我が酷かったし、血も流しすぎたから後遺症を心配したけど、それも大丈夫そうだし」


ロティスさんの言葉に、フィロさんも頷く。


「そうか。ソラ達は?」


お父さんの言葉に、ソラ達が入っているバッグを開ける。


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


「ぺふ」


ソラが勢いよくバッグから飛び出す。

続いてフレムとソルが。


「さっきはどうしたんだろうね」


先ほどの場所でのソラ達の様子は、いつもと少し違った。

どこか、落ち着きがなかった。


私の言葉に、お父さんが首を横に振る。


「木の魔物が怖かったの?」


私の言葉に3匹の体が傾く。

違うのか。

となると……襲って来た人達?


「倒れていた人達?」


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


「ぺふっ」


正解なんだ。


「彼等は死んでいたわ。それなのに、怖かったの?」


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


「ぺふっ」


ロティスさんの言葉に、3匹は鳴くと同時にプルプルと震えた。


「そう。怖かったのね」


3匹の様子にロティスさんが、険しい表情を見せた。

そしてため息を吐くと首を横に振った。


「休憩しましょ。なんだか、疲れちゃったから」


ロティスさんの言葉に、マジックバッグからゴザを出す。


「疲れた時には、甘い物だろ」


お父さんの出したお菓子に、ロティスさんが嬉しそうに笑う。


「襲われた時に、荷物をほとんど駄目にしてしまったからお腹が空いていたのよね」


そういえば、ロティスさんもフィロさんもマジックバッグをそれぞれ1つしか持っていない。

これからどうするんだろう?


ジナルさん達がいる方を見る。

小さく息を吐き出すと、お菓子に手を伸ばした。


私は隠れていただけなんだけど、疲れたな。


「最弱テイマー」を読んで頂き、ありがとうございます。

3月16日より、錦糸町マルイにてPOP UP SHOP & 展示会の開催しております。

お時間がありましたら、可愛いアイビーに会いに来てください。

宜しくお願いいたします。


アニメも、あと2話。

原作と違う部分もあり、色々な意見がございます。

でも、アニメ版のアイビーも頑張っておりますので、応援を宜しくお願いいたします。


ほのぼのる500

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 木の魔物との決着付近で、どちらの木の魔物の事かが分かりにくくなっていたのと、決着がついたのが良く分からなかった。 あまり何が起きているか分からないことが今まで無かったので、珍しく感じた…
[一言] 研究所にいた魔物達が死んでいく度にやるせない気持ちになりました。でも死ぬ事で救いになってるなら仕方がないのかなぁ。木の魔物ののやり取りに泣きそうでした。早く魔物達が呪縛から解放されるといいな…
[良い点] 改造された木の魔物がいるという事がわかった点 [気になる点] 改造された木の魔物が、アイビーと同行してくれていた木の魔物の赤い所への攻撃によって救われて黒くなって死んだだけなのか? 改造さ…
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