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855話 ロアンさんとドットさん

ガガトさんが紹介してくれたお店で購入したマジックバッグを持って、捨て場に向かう。

お薦めのお店だけあって、マジックバッグの量が凄かった。

しかも、今まで使っていた大容量の2倍も入るマジックバッグまであって驚いた。

もちろんすぐに購入。

しかも3個も。

これでソルのマジックアイテムを、沢山持ち運べるようになる。

ソルに話すと、嬉しそうに買ってきたマジックバッグの上でプルプルと揺れていた。


あっ、また揺れた?

ソラ達の入っているバッグが、今日はよく揺れているような気がする。

確認すると、バッグの中でソルが楽しそうに揺れていた。

もしかして、昨日の嬉しい気持ちがまだ続いているんだろうか?


「ソル、嬉しいの?」


「ぺふっ! ぺふっ!」


いつもより鳴き声が高めだ。

これは、そうとう嬉しい時だよね。

それにしても、どうしてこんなに嬉しんだろう?


あっまさか、今まで食べていたマジックアイテムの量では足りていなかったとか?

もしそれなら、可哀そうな事をしてしまったな。


「よしっ、今日はマジックアイテムを沢山拾おう!」


私の急な宣言にお父さんが驚いた表情をする。

そして、小さく笑った。


「その揺れはソルか?」


私の宣言が聞こえたのかバッグが大きく揺れた。

それに気付いたお父さんが、バッグを指す。


「うん。今日は朝から機嫌がいいの。いや、マジックバッグを見せてからかな」


「ははっ。昨日の夜は買って来たマジックバッグから離れなかったもんな」


そう、寝る時もマジックバッグの上だった。


「捨て場で、皆を出せるかな?」


「どうかな? 協力者の様子を見てから判断だな」


協力者か。

ロティスさんの娘さんと、その相棒。

あれ?

そういえば、娘さんの名前を聞いていないな。


「アイビー、どうした? 眉間に皺が寄ってるけど」


お父さんが不思議そうに私を見る。


「ロティスさんの娘さんの名前を、お父さんは聞いた?」


昨日のロティスさんと交わした会話を思い出す。

なにか、変だよね?

一度も娘さんの名前を言わなかった。

喧嘩しているから?

でも、娘さんの仕事は把握しているんだよね?


「あ~それは、家族を守るために言わないんだと思う」


「えっ?」


「ロティスの詳しい経歴は知らないけど、たぶん裏の仕事もかなりこなして来たんじゃないかな。そういう雰囲気がある」


雰囲気?

それは、裏に関わった事のある人が持つ特有のものかな?

私では気付けないんだろうな。


「ぽろっと名前を言ってしまうと、その名前を持つ者が狙わたりする。だから、裏の仕事をしている時は、家族や知人。知り合いの名前でも言わないようにするんだ。たぶん、それが癖になっているんだと思う」


「なるほど」


名前を言うだけで、その人が狙われるか。

裏の仕事って、本当に大変だと思う。


「あそこだな」


お父さんの視線を追う。

そしてその広い捨て場の規模に、目を見開く。


「凄く……大きいね」


今までにも大きな捨て場はあった。

でも、ここまで大きくは無かった。

捨て場の奥が見えない。


「カシム町に住む人は、多いからな。そこに冒険者達や商人達まで集まって来る。これぐらいは必要だったんだろう。最近はゴミの処理能力が上がっているようだけど、少し前までは落ちていたはずだから」


「そっか。あっ、ロティスさんの娘さんだね」


捨て場の入り口辺り、こちらに視線を向ける男女がいた。

その女性が、間違いなくロティスさんの娘さんだ。

だって、ロティスさんにそっくりだったから。

まぁ、ロティスさんを若くした感じではあるけど。


「今日はありがとう。えっと、話はどこまで聞いているのかな?」


お父さんの言葉に、女性が1歩前に出る。


「母に協力してくれる方達ですよね。テイマーである事は聞いていますが、それ以外については何も聞いていません。あと、私達を見て判断すると思うと言われています」


昨日の夜、ジナルさんから彼女と相棒についてお父さんが聞いた。

答えは、信用しても大丈夫と言うものだった。

何でも、フォロンダ領主の下で力をつけた人達らしい。


「そうか。とりあえず自己紹介をさせてもらうな。俺はドルイドだ」


「娘のアイビーです」


軽く頭を下げる。


「私はロティスの娘でロアン」


そっとソラの入っっているバッグに触れる。

揺れる事なく静かな状態にホッとする。


「相棒のドットだ。よろしく」


ドットさんの紹介の後も、バッグは静かなまま。

お父さんを見ると、小さく頷いた。


「今日は宜しく頼む。あと、アイビーがテイムしている子達を出したいんだけど、良いか?」


お父さんの言葉に、ロアンさんとドットさんが安堵した表情をした。


「はい、どうぞ。信用して頂けて良かったです」


バッグを開けると、ソラ達が飛び出して来た。

その様子に、ロアンさんもドットさんもかなり驚いている。


「凄い色。ドット、あの子を見て。黒! 黒のスライム!」


バンバン。

バンバン。


ロアンさんが、ドットさんの肩を叩きながらソルを見る。

というか、痛そうな音なんだけど、大丈夫なんだろうか?


あっ、大丈夫じゃないみたい。

痛そうな表情をしている。


「ロアン、力を加減してくれ」


「あっ。ごめん、つい」


ちょっと恥ずかしそうな表情をするロアンさん。

その可愛らしい表情に笑みが浮かぶ。


今のやり取りから、ロティスさんに向かって剣を向けるとは思えないんだけど。

何か事情でもあるのかな?


「「しゅわ~、しゅわ~」」


ソラとフレムが早速ポーションを食べ始めたようだ。

捨て場に、気の抜けた音が響く。


「何の音だ?」


ドットさんが捨て場を見渡す。

そして、ソラとフレムを見て……そのままジッと見つめた。


「えっと、早いな」


ドットさんの言葉に、ロアンさんが無言で頷く。


それはきっと消化する速さの事だろうな。

ソラもフレムも、他のスライムに比べるとものすごく早いから。


「きゅしゅわ~、きゅしゅわわ~、きゅしゅわ~、きゅしゅわわ~」


「「えぇ~」」


ソラが剣を食べると、ロアンさんとドットさんが驚いた声を上げる。


「面白いな」


お父さんが2人を見て笑っている。

まぁ、私も笑っているんだけど。


「うん」


「ぐしゃ、ぐしゃ、しゅわ~、しゅわ~」


ソルも気に入ったマジックアイテムを見つけたのかな。


「ははっ。なるほど、母が何も言わなかった理由がわかったわ。これは、実際に目にしないとね駄目ね」


ロアンさんが、ソラとフレム、そしてソルを見て頷いた。


「アイビー。俺達は、ご飯を拾って行こうか」


「うん」


お父さんと捨て場の中に入る。

何処から拾って行こうか見渡すと、ある程度のゴミは分類されている事が分かった。

これは助かる。


「ごゆっくり。こちらはしっかり見張っておきます」


ロアンさんの言葉に、小さく頭を下げるとポーションが大量にある場所に足を向けた。


捨て場にソラとフレム、ソルが出す消化の音が響く。

そんな中、マジックバッグにどんどんポーションやマジックアイテムを入れていく。


「凄いな、このマジックバッグ」


「うん」


前に使用していたマジックバッグの2倍の量が入るので、本当に沢山のマジックアイテムを確保出来る。

しかもこの捨て場、商人が多く来る町だからなのか、マジックアイテムのゴミが多い。

選び放題だ。


「ソル、本当に嬉しそうだね」


ソルの消化音が、全く鳴りやまない。

それに釣られたのか、ソルとフレムも凄い勢いで食べているのが音で伝わってくる。


「ソラ達、食べ過ぎてコロコロになっていないよね?」


食べ過ぎで丸くなった過去があるので、ちょっと心配になる。

まぁ、ちゃんと加減してくれる……はず。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「しかも、今まで使っていた大容量の2倍も入るマジックバッグまであって驚いた。」 オカンコ村で「容量が桁違い」な「超レアのマジックバッグ」もらってましたけど、 それは普段使ってないんで…
[一言] 消化不良とか食当たりなんて言葉からは程遠いソラたちが微笑ましい限り。
[良い点] スライム3匹の気分はバイキンに並ぶ気分だったでしょうか( ˊ̱˂˃ˋ̱ ) 可愛い。゜(゜´Д`゜)゜。 沢山ご飯ゲットしてもらえるのも嬉しかったんだろうなぁ。 旅の途中でダイエットしてる…
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