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854話 父親、母親

ロティスさんの説明を聞いたお父さんが、私を見る。


「どうする? アイビーが選んでいいぞ」


テイマーとして仕事にするか、しないか。

もちろん。


「ロティスさん、宜しくお願いします」


軽く頭を下げると、お父さんが私の頭を優しく撫でくれた。

視線を向けると、凄く優しい笑みを浮かべている。

それが嬉しくて、私も自然と笑みが浮かぶ。


「本当に仲がいいわよね」


えっ?

ロティスさんを見ると、なぜか私とお父さんを見て溜め息を吐いていた。


「どうしたんだろう?」


そっとお父さんに聞くと、少し考えこむ。

そして、「羨ましいのかな?」と首を傾げた。


「そう!」


私とお父さんの会話が聞こえたのか、羨ましいに同意されてしまった。

それに驚いていると、ロティスさんが目の前に来る。


「本当に2人の関係が羨ましい。私と娘なんて、会ったら喧嘩よ?」


娘さんがいるんだ。

そして仲が良くない?


「喧嘩ねぇ」


ロティスさんを見ながらが、ガガトさんが呆れた様子を見せる。


「何かあるのか?」


ガガトさんの言葉が気になったのか、お父さんが彼を見る。


「普通は口喧嘩だと思うだろ? でもあの2人は、剣を交えた喧嘩なんだよ」


「「えっ?」」


剣を交える?

そこまで、不仲なの?


「そう! いつの頃からか『私に勝つ』と言って。どうして、あんな風に育ってしまったのかしら?」


ロティスさんが首を傾げると、ガガトさんが苦笑いをしていた。


「まぁ、あの子もロティスの前でなければ、素直な子だから。問題ないよ」


ガガトさんの言葉に、悔しそうなロティスさん。

複雑な親子関係という事かな?


「あっ、捨て場だけど……明日はどう? 明日なら、私の娘が見張り役だから、事情を説明しておけば味方になってくれるわ」


んっ?

親子関係が悪いわけでは無いのかな?


「あぁ、あの子なら問題は無いだろう」


ガガトさんも賛成のようなので、私としては問題ない。


「どうする、お父さん」


「まぁ、2人が『問題ない』と言うなら、大丈夫なんだろう。ただ、確認は取りたい。ジナルは娘について知っているのか?」


お父さんの言葉に首を傾げる。

ジナルさんに確認?

それは「問題ない人物かどうか」という事かな?


「えぇ、知ってるわ。娘のついて確認したいなら、ジナルに聞いて。一緒に仕事もしているから」


「分かった、悪いな。今日中に確認を取るよ。問題がなければ、明日は何時ごろに捨て場に行けばいい?」


「明日は、朝から夕方だと聞いたわ。えっと……15時頃にお願いできる? 朝から不審者情報を出して、周辺の調査を行うように言うわ。そして様子を見るために、明日まで捨て場とその周辺に近付かないように指示を出しておくから」


「えっ、不審者? それはちょっと……」


誰かに迷惑を掛ける事になるなら、他の方法がいい。


「気にしないで。テイマーが狙われ出してから、不定期に周りの調査を行うようにしているのよ」


「そうなの?」


「えぇ。この村のテイマー達は、挑戦する子が多くてね」


挑戦?


「少し前に領主会で配られた、テイマー指南書って言うのかな? テイマーと魔物の関わり方が書かれた物なんだけど、それを見て、『ゴミ問題の解決に繋がるみたい』と皆が、挑戦してくれたのよ」


ロティスさんの言葉に、笑みが浮かぶ。

嬉しい。

役に立っているんだ。


「その成果なのか、徐々にゴミの処理能力が上がってきてね。まぁ、その噂が広まったから、テイマー達が狙われだしたんだけど」


それは、悲しいな。


「だから、周りに見せしめというか。私達がしっかりテイマー達を守っていると知らせるためにも、不定期に、周辺の見回りをしているの。『不審者がいた』とか『テイマーが襲われた』とかいろいろ噂を広めてね。カシム町の人達も、その噂で気を引き締めるでしょう? 実際に、その見回りで不審者を捕まえた事もあるしね」


「捕まえた?」


お父さんが驚いた表情でロティスさんを見る。


「そう。あれには、私も驚いたわ。まさか、本当にテイマーを狙った者達が、カシム町に入り込んでいるなんて思わなかったから。捕まえた自警団員達は、お手柄よね」


ロティスさんが、嬉しそうな表情を見せる。

その捕まえた自警団員達と知り合いなんだろうか?


「その捕まえた自警団員の中に、娘がいたんだよ」


えっ!


「ふふふっ。勘が鋭い子だから。傍を通った時に見せた行動に不信感を覚えて、後を追ったそうなの。それで、隠れていた場所での会話を聞いて、そこにいた自警団員達で突撃したみたい」


「凄いですね」


ロティスさんの娘さんに会うのが楽しみだな。

明日、捨て場で会えるんだよね?


「でしょ?」


あぁ、ロティスさんはお母さんなんだ。

お父さんと同じような優しい目をしている。

……でも、会ったら剣を交えた喧嘩になるんだよね?

なんだか、よく分からない親子関係だな。


「あっ。明日の見張り役は娘の相棒も一緒だから。彼についてもジナルに確認して。えっと娘に話は、今日中に……ガガトが」


ロティスさんがガガトさんを見ると、彼が頷いた。


「しっかりと話しておくから、心配ないよ。もし予定が変わったら、宿に知らせに行く」


「ありがとう」


テイマーの仕事に、ロティスさんの娘さん。

なんだか、明日が待ち遠しいな。


「それじゃ。明日の為にも、マジックバッグを手に入れに行くか」


お父さんの言葉に、頷く。

そうだった。

明日捨て場に行くなら、今日中に大容量のマジックバッグを手に入れないと。


「マジックバッグ? お店の情報は聞いたかしら?」


ロティスさんの言葉に、お父さんと頷く。


「ガガトが教えてくれたから、大丈夫だ。明日、宜しく頼むな」


「分かったわ」


酒場を出て……。


「どっちだっけ?」


お父さんを見ると、笑って左を指した。

左?


あっ、そうだ。

酒場から出て大通りを左、宿を通り過ぎて4本先の角を右折して真っすぐ歩くと「クジャ」という店があるんだった。


「思い出した、左だったね」


「クジャ」に向かって大通りをお父さんと歩く。

今日も大通りは、冒険者達でにぎわっている。

話し声や笑い声の中にときどき怒鳴り声が聞こえるけど、カシム町では日常なんだろう。

誰もそれを気にしていない。


「明日が楽しみだね」


「そうだな」


泊っている宿を通り過ぎて、角を1本。

2本。


「アイビー」


不意にお父さんに抱き寄せられる。


「えっ?」


ガシャーン。


「何?」


近くでガラスの割れる音が響いた。

視線を向けると、女性が男性の腕を捻る上げているのが見えた。

男性の手には、可愛らしい女性用のバッグ。

どう見ても、男性の物では無い。


「くそっ。離せ!」


「煩い、泥棒。黙っていろ。暴れたら、折るよ」


女性の落ち着いた様子に感心していると、男性が口汚く叫びだした。

それが、凄くみっともない。


「あの、ありがとうございます」


2人に近付いた可愛らしい女の子。

その女の子の視線の先には、男性が持っているバッグ。


「子供から盗んだの?」


さすがにちょっと驚いた。

だって女の子は、まだ10歳ぐらいだ。


「みたいだな」


「すみません。通して下さい」


自警団員の声が聞こえると、男性が慌てた様子で暴れだした。


「ちくしょう。離せ」


「はぁ」


女性の大きなため息を聞こえた次の瞬間、男性の叫び声た周りに響いた。

もしかして折ったのかな?


「あれは、骨を折ったわけじゃないよ。抑え込んでいる腕の向きを変えたんだ。痛みが増すように」


なるほど。


「いつも、ありがとうございます」


自警団員の言葉に、女性が苦笑する。


「本当にいつもだよな。どうしてこういう奴ばっかり、周りに転がってくるんだ? カシム町に来る度に、2、3人捕まえている気がする」


それは、凄い。

自警団員もそう思っているのか、笑って頷いている。


「前に来た時も、酒に酔って暴れている冒険者を捕まえてくれましたよね。あと、女性に付きまとっていた男性も」


「そうだったかな?」


「はい。本当に感謝しています。連絡を受けてからすぐに駆け付けても、間に合わずに被害者が怪我をしてしまう事も多いので」


でも、この村の自警団員達は来るまでの時間が短いと思う。

それだけ頑張って仕事をしてくれているからだろうな。


「アイビー、行こうか」


「うん。かっこいい女性だね」


「そうだな」


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― 新着の感想 ―
エピソード700か750くらいから誤字脱字の頻度がかなり高いです。忙しくて見直しをしていないのでしょうか・・・ちょっと残念です。
[良い点] 更新ありがとうございますm(_ _)m [気になる点] これからの展開(・・; 教会の人物リストを貴族が入手して 「これは金になるだろう」と貴族も探しているのは判った [一言] 先読みは禁…
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