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845話 ロティスさんと合流

リミーさんと別れ、準備を整えてロティスさんがいる酒場に向かう。

大通りを歩いていると、町の人達の会話が聞こえて来た。


「昨日の夜中、ロティスちゃんがまた大暴れしたみたいねぇ」


えっ、ロティスちゃん?

それに大暴れ?


「あはははっ。1カ月に2、3回は暴れるわね。ふふふふっ」


笑って話す2人の女性に視線を向ける。

暴れたと話すわりには、困った様子はない。


「それにしても今回は誰を吹っ飛ばしたの?」


「新しく来た上位冒険者達みたいよ。嫌がる10代の女の子達に絡んでいたそうなの」


あぁ、問題を起こす上位冒険者達に注意……いや、吹っ飛ばした。

注意しても、行動を改めなかったのかな?


「あははっ、上位冒険者だって威張っていたのに、ロティスちゃんに1発で沈められたみたいなの。馬鹿よね」


「本当にねぇ。ロティスちゃんに喧嘩を売るなんて」


ロティスさんが、このカシム町で凄く信用されているのは聞いた。

それは冒険者や自警団だけではなく、町の人達にもなんだね。

なんだかカッコいいな。


「昨日はごめん」


酒場に入ると、ロティスさんが手を振ってくれた。

彼女の下へ向かうと、勢いよく頭を下げて昨日の事を謝られた。


「い、いや、大丈夫だ。特に絡まれたりはしなかったから」


ロティスさんの行動に、セイゼルクさんが少し戸惑った様子で応える。


「そうなんだ、良かった。ジナルに、昨日の様子を聞いても教えてくれなくて。私も昨日が酔う日だとは思ってなかったから、一気に酒を飲んじゃって記憶があやふやだし。何かしでかしていたらどうしようかと、ちょっと不安だったの」


酔う日というのは、自分でも分からないんだ。

それなら仕方ないよね。


あれ?

昨日の夜中、上位冒険者を吹っ飛ばしたんだよね?

それも記憶があやふやなのかな?


「皆、座って。これからの事を話しましょうか」


大きなテーブルに皆で座ると、ロティスさんがマジックアイテムのボタンを押した。

おそらく声が外に漏れないようにだろうな。


「間に合ったな」


ジナルさんの声に視線を向けると、丁度酒場の奥から出てくるところだった。

テーブルの空いた席に座ると、隣の座ったセイゼルクさんに数枚の紙を渡す。


「これは、暗殺者達から聞き出した情報を纏めた物だ。順番に読んでくれ」


セイゼルクさんは受け取った紙に目を通すと、隣の席のヌーガさんに渡した。


「彼等の契約が、通常の物を使用したものでよかったよ。マジックアイテムの紙で作られた契約書だと、どんな事をしても聞き出せないからな」


ジナルさんの言葉に、セイゼルクさんが頷く。


「そこは助かったな。そういえば、教会はマジックアイテムの紙で作られた契約書をあまり使わないらしいな」


ラットルアさんの言葉に、ジナルさんがズボンのポケットから1枚の紙を取り出した。


「教会関係者は、一般的に使う契約書に魔法陣を追加した物が主流だ。これが、その紙だ」


ジナルさんが持つ紙を見る。

見た目からは、一般的に使われる契約書と変わらない。


「マジックアイテムの紙で作られた契約書より縛りが強いのか?」


お父さんがジナルさんを見ると、彼は首を縦に振った。


「確かに強い。でも通常の契約書に掛かっている魔法と、彼等の追加した魔法陣が反発していると分かったんだ」


反発?


「教会関係者が使っていた魔法陣を追加した契約書は、マジックアイテムの紙で作られた契約書より確かに縛りが強い。そのため下手に聞き出そうとすると、記憶が消えてしまう事があるんだ」


そんな縛りがあるんだ。


「だが、その契約書には問題があった。ある魔法陣を使うと、短時間だが契約相手にバレる事なく完全に縛りを消す事が出来るんだ」


えっ?

短時間とはいえ、それって凄い事なのでは?


「縛りを消した事がバレていないので、今も教会関係者は契約書の欠点を知らないだろうな。あぁそうだ。縛りを消せる事は、俺達の組織内でも限らえた者しか知らないから、内緒で頼むな」


そんな凄い情報を、さらっと言わないで欲しいな。


「分かった。というか、極秘情報は言う前に一言でいいから言ってくれ」


呆れた様子で、セイゼルクさんがため息を吐く。


「アイビー、はい」


隣に座っているお父さんから、情報を纏めた紙が渡された。

内容は、サーペントさんを従わせるための研究についてと、その研究施設が森の中に複数ある事が書かれてあった。


「全員、読んだな。奴等が作った研究施設についてだが、俺が属している組織から情報が来ていた」


ジナルさんの言葉に、全員の表情が真剣なものになる。


「森の中に作られた研究施設は、カシム町周辺に2ヵ所。カシメ周辺に3カ所。カシス町周辺に1ヵ所。カシス町の研究施設は、実験中のサーペントが暴れた事で壊滅状態。今、どうなっているのか分からないらしい」


サーペントさんを従わせようとしている研究施設が、6カ所もあるなんてムカつくな。


「地図を見れば分かると思うんだけど、王都をぐるっと囲うように研究施設が作られているの」


ロティスさんが、テーブルの上に地図を広げる。

その地図には、王都を囲うように赤い印が6カ所あった。


ジナルさんがロティスさんを見る。


「ロティスはこの情報を、森にいるサーペントにすぐ伝えるのか?」


「えぇ、そのつもり。ここでの話し合いが終わったら、その足で森に行くつもりよ」


ロティスさんが、セイゼルクさん達を見る。

そしてお父さんと私にも視線を向けた。

どうしたんだろう?


「6カ所の研究施設だけど、絶対に残しておくわけにはいかないと思うの」


それは、当然だと思う。

あんな苦しそうなサーペントさんを作らせないためにも、破壊しないと。


「私は、6カ所全ての研究施設を破壊しに行こうと思っているんだけど、ここにいる全員に依頼を出してもいいかしら?」


んっ、依頼?


「私の護衛をお願いしたいの。あと、おかしくなってしまったサーペントを倒す力が必要だから」


「悪い。俺は冒険者を引退しているんだ」


お父さんの言葉にロティスさんが少し驚いた表情を見せる。


「ドルイドは有名な冒険者で、隠し玉と呼ばれているわよね?」


彼女の言葉に、不快そうに眉間に皺を作るお父さん。

その表情を見たロティスさんが、困った表情を見せた。


「ごめん。そんなに嫌がっているとは知らなくて」


「いや、今のは俺の態度が悪かったな。すまない。ただその呼ばれ方は好きでないんだ。二度と呼ばないで欲しい」


お父さんの言葉に、ロティスさんが頷く。


「わかったわ。それで、ドルイドは冒険者ではないため、依頼は受けられないと」


「あぁ」


お父さんの返事に、首を傾げるロティスさん。


「冒険者を引退していても、依頼は受け入れられるわよね? 他に受けない理由でもあるの?」


本人の承諾があれば、別に冒険者でなくても問題は無い。

それなのに、どうして依頼を受けないんだろう?


「アイビーはどうしたい?」


私?

私は……助けられる子がいたら助けたいな。

でも、私ではロティスさんを助ける事も出来ない。


「一緒に行きたいのか?」


お父さんを見て頷く。

何も出来ない私だけど、行きたい。


「分かった。ロティス、依頼は受けないが一緒には行ける」


んっ?

どういう事?


「えっ? だったら依頼を受けてもいいんじゃないの?」


不思議がっているロティスさんの肩を、ポンと叩くジナルさん。


「依頼を受けたら、名前が載るだろう?」


あっ、そうだ。

まだ教会関係者がいるから、気を付けるように言われているんだった。


「なるほど、名前を載せたくないと?」


ロティスさんが何度か頷くと、お父さんを見る。


「分かったわ。依頼は出さない。でも、協力を個人的にお願いするわ」


「分かった、協力しよう。アイビーも良いか?」


「うん」


「セイゼルク達は、冒険者ギルドに指名依頼を出しておくから受けてね」


「分かった」


「協力料は、依頼料と同じで。個人から出すから名前は一切出ない。それでいいかしら?」


ロティスさんの言葉にお父さんが頷く。


「面倒になるけど頼むな」


「大丈夫よ。私としては、研究施設をぶっ潰す仲間が出来て嬉しいから」


なんだろう。

ロティスさんが、怒っているような気がするんだけど。


「魔物を力技で従わせようとするなんて……地獄を見せてやるわ」


あっ、本当に怒っているんだ。

殺気が漂って来てちょっと寒い。


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― 新着の感想 ―
[良い点] サーペントさんはこの物語の中で何度も苦しい思いをしていたり、亡くなってしまったり、一読者として悔しい場面も何回もありました。その分、アイビーたちが関わる優しいお茶目なサーペントさんたちとの…
[気になる点] アイビー、殺気が漂って来てちょっと寒い。とか言ってても施設ぶっ潰しに協力出来ると分かってニコニコ顔なのが目に浮かぶ。
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