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838話 冒険者達の喧嘩

冒険者ギルドの近付くと、建物の中から怒鳴り声が聞こえた。


「ふざけんじゃねえぞ。俺達を先にしろ! 誰の遣いだと思っていやがる!」


凄く苛立っている男性の声に首を傾げる。


「はぁぁぁ」


ロティスさんから、長めのため息が聞こえた。

視線を向けると、呆れた様子で首を横に振っていた。


「またか」


「まただな」


フィロさんとガガトさんも、呆れた様子で冒険者ギルドの建物を見た。


「あれは誰だ?」


3人の様子にジナルさんが眉間に皺を寄せる。


「カシム町の冒険者ギルドで有名になりつつある……屑共ね」


えっ、カシム町ではそんなのが有名なの?


「あっ、他の冒険者が口を挟んだみたいね」


ロティスさんの言う通り、「やめろ、恫喝するな」という言葉が聞こえた。

ただ、次の瞬間に誰かが倒れるような大きな音と、叫び声や悲鳴が聞こえた。

これは、喧嘩かな?


「冒険者同士の喧嘩なんて、大丈夫なんですか?」


確か、冒険者ギルド内での暴力は禁止されていたはずだよね?

前に冒険者達が話しているのを聞いたんだけど、違ったかな?


「「「……」」」


どうして無言に?


「止めないのか?」


「「「……」」」


ジナルさんの質問にも無言で返す3人。


「ロティス?」


ジナルさんがロティスさんを見ると、彼女が肩を竦める。


「前に注意はしたのよ。でも……ねぇ?」


ロティスさんがフィロさんを見ると、彼は頷いてジナルさんを見た。


「騒いでいる屑どもは、王都にいる貴族の依頼で荷物を運んでいる冒険者共だ。その貴族が、王都でもそれなりに力があるから、冒険者共が図に乗っているんだ。『自分達は特別だからなんでも優先しろ』てな。あまりの横暴な態度に注意をしたら、貴族から仕事の邪魔をしたと言って迷惑料を吹っ掛けられたよ」


うわぁ。

「特別だから優先しろ」だなんて、本当に屑だ。


「それで、放置か?」


「いや、今は冒険者達の素性と貴族の立ち位置。それと、その貴族の背後に誰かいないか調査中だ。その結果次第では、屑どもは全てを失うだろうな。例え貴族に手が出せないとしても、屑共が冒険者を辞めさせられる事は決まっている」


冒険者資格を剥奪される事は、決まっているのか。

そんな冒険者を雇う貴族にも、何か出来たらいいのにな。


「そろそろ結果が出る頃よね?」


ロティスさんの言葉にフィオさんが頷く。


あっ、また一段と声が大きくなった。

何を言っているんだろう?


「……邪魔をしたら後悔するぞ。俺達は、ある貴族に守れているからな!」


見事な屑っぷりだ。

それにしても、貴族の力をかなり信じているみたい。

そんなに凄い貴族に雇われているのかな?


「セイゼルク達もドルイド達も、外で待ってて。あれに絡まれると面倒だから」


ロティスさんの言葉にセイゼルクさんが頷く。


「そうさせてもらうよ」


うん。

私の出来るなら、近くに寄りたくない。


「この先に、休憩の出来る広場があるの。そこで待ってて。すぐに手続きを終わらせて行くから。そうだ、その広場の近くにある、青い看板の甘味が美味しいわよ。お薦めは『ズワン』よ」


ズワン?

名前からはどんな甘味なのかさっぱり分からないな。

ちょっと食べたいかも。


「アイビーは、食べたい?」


ラットルアさんの言葉に、すぐに頷いてしまう。


「あっ」


すごく、勢いよく頷いたような気がする。

これは、ちょっと恥ずかしいかも。


「俺も話を聞いてて気になったんだよな。屋台を見つけたら絶対に買おうな」


「うん」


ラットルアさんに気を使わせてしまったかな?


「俺が欲しいんだよ」


私の周りにいる人達は、感情を読むのを上手な人が多すぎる。


「楽しみだな」


お父さんの言葉に、小さく笑って頷く。


「そうだね」


「さて、さっさと用事を終わらせてすぐに行くから、私の分もズワンを1個……3個? 串肉もあるわよね。ん~、5個だけにするわ」


んっ?

今のロティスさんの言葉は、ちょっとおかしくなかった?

串肉があるから3個から5個……増えてる。

ズワンがどんな物か分からないけど、小さい甘味なのかな?


ロティスさんの言葉に、ジナルさんが笑う。


「相変わらず食欲旺盛だな」


「当たり前でしょ? 冒険者にとって食べる事は、体力をつけるうえでも重要だもの」


うん、食べる事は大切だよね。

体力だけではなく、筋肉をつけるためにも。

まぁ私は、筋肉が付きにくい体質みたいだけど。


そっと細いままの腕を見る。

それでも、もう少しぐらい筋肉が付いてくれてもいいのに。


「それじゃ、あとでね」


「俺も一緒に行くよ。少し確かめたい事があるから」


ロティスさんの後を追うようにジナルさんが冒険者ギルドに向かう。

フィロさんとガガトさんも手を振ると、あとを追った。


「行こうか」


お父さんの声に、広場に向かって歩き出す。

目指すは、青い看板。


「あそこが広場か。思っていたより広いな」


シファルさんの視線の先には、かなり広く開けた空間。

椅子や机もあり、かなり居心地がよさそうな場所だ。


「お薦めの甘味は、あの屋台だな」


ラットルアさんが指す方を見ると、10人ほどが並んだ青い看板の屋台が目に入った。


「本当に人気みたいだな。楽しみだ。行こう、アイビー」


「うん」


ラットルアさんに手を取られると、少し足早に屋台に向かう。


「もう屋台は目の前なんだから、急ぐ必要は無いだろうに」


シファルさんの言葉に、少し不服そうな表情をするラットルアさん。


「数分で列が倍になるかもしれないだろう? なぁ?」


同意を求めるようにラットルアさんが私を見る。

それに、頷く。

だって、見ている間に列が長くなっていくから。


「急いで正解だったな。17番目ぐらいだ」


「そうだね」


本当に、ゆっくり歩いて来ていたら列が倍になっていたかもしれない。


「あれがズワンか」


ラットルアさんの言葉に、屋台の中を窺う。


「うわっ、結構な大きさだね」


私の拳より大きな白い塊に、粒々の入ったソースを掛けているのが見えた。


「あれを5個? それに串肉?」


ジナルさんが言ったとおり、ロティスさんは食欲旺盛みたい。


ラットルアさんと列に並んでいると、お父さんとシファルさんが来た。


「全員1個ずつで頼む」


お父さんの言葉に頷く。


「分かった。えっと……」


セイゼルクさん達で4個。

お父さんと私が2個でロティスさんが5個。

全部で11個。


「あっ、フィオさん達とジナルさんはどうしよう」


あの3人がズワンを食べるのかも、聞いていないや。


「あぁ、ズワンの話をしている時にも参加してこなかったもんな」


お父さんの言葉に頷く。


「いらないのかな?」


「どうかな? とりあえず3人で5個だけ買って行こうか。食べなかったらマジックバッグに入れておけばいいし」


「分かった。そうするね」


順番が来たので、ラットルアさんがズワンを注文する。

しばらくすると、大きめのカゴが3個と小さめのカゴが1個出てきた。


お父さんとシファルさんがカゴを持ってくれたので、手ぶらで広場に向かう。

広場に入ると、場所を確保したセイゼルクさんが手を挙げた。


テーブルに載せたカゴの蓋を開ける。


「「おぉ」」


大きめのカゴにびっしりと詰まっているズワンにラットルアさんと声をあげてしまう。


「うまそうだな」


「うん」


お皿にズワンを乗せると、みんなに配る。


「「「「「いただきます」」」」」


ズワンを口に入れると、粒々の混ざったねっとりしたソースと柔らかい団子? が美味しくて、あっという間に無くなった。

ロティスさんが5個に増やした理由が分かった。

見た目に反して、さっぱりした甘さで食べやすいからだ。


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― 新着の感想 ―
いや〜やっぱりラットルアさん凄く良いなあ(^^) ラットルアさんいくつなんだろ 10歳くらいならアイビーの守備範囲に入ってくれないかな(^^) 入って欲しい!!!
[良い点] 来年はいよいよアニメ放送ですか 今から楽しみ
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