833話 ジナルさんの仲間
ジナルさん達は村道をサーペントさんに乗って、私とお父さんは木の魔物に乗って森の中をカシム町に向かって移動する。
しばらく進むと、微かに人と魔物の気配を感じた。
「ジナルの仲間か?」
「どうだろう? 人の気配と魔物の気配がするから、たぶんそうだと思うけど」
テイムしている魔物と、一緒に来ると言っていたもんね。
そいえば、どんな魔物が来るのか聞いてないな。
気配からは……、
「大きい魔物みたいだね?」
サーペントさんよりは小さいけど、シエルより大きいかな?
「そうみたいだな」
私の言葉にお父さんが頷く。
「大きな魔物をテイム出来るなんて、凄いテイマーなんだね」
会えたらいいなと思っていると、お父さんが呆れた表情で私を見た。
それに首を傾げる。
「お父さん、何?」
「アイビー」
「うん?」
「今、何に乗っているのか忘れているのか?」
今?
木の魔物に乗って移動しているけど?
「木の魔物をテイムもせずに従わせている以上に、凄い事は無いと思うぞ」
「えっ! 従わせていないよ!」
協力はしてもらっているけど。
別に命令しているわけでもないし。
「アイビー、ちょっと木の魔物に命令してみて」
命令?
「えっと……何を言えばいいの?」
命令なんて、すぐには思いつかないよ。
「そうだな。『枝を揺らして』とか、か?」
そんな事でいいの?
お父さんの言葉に少し戸惑いながら、木の魔物を見る。
「枝を揺らしてもらえる?」
木の魔物はチラッと私を見ると、枝全体を揺らしてくれた。
「ありがとう」
「ぎゃっ!」
嬉しそうに鳴く木の魔物に、ギュッと抱き着く。
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
私と木の魔物の様子を見ていたソラとフレムが、なぜか私に体当たりをしてくる。
それに驚きながら、ソラとフレムを抱きしめた。
「どうしたの?」
「ぷぷっ!」
「てりゅっ!」
なんだろう?
ソラもフレムも、怒っているような気がする。
怒らせるような事は、していないけど。
「アイビーと木の魔物が、仲良くしているから嫉妬したのか?」
えっ、嫉妬?
「ぶ~」
「りゅ~」
お父さんの言葉に、ソラとフレムが不満そうな鳴き声を上げながら私を見る。
えっと、つまり嫉妬してくれたの?
「ごめん。ソラとフレムもぎゅ~」
腕の中の2匹を抱きしめる。
「ぷっぷ~」
「てっりゅ~」
少し機嫌が戻ったようだ。
それにしても……ソラとフレムの嫉妬は可愛い。
「アイビー、顔が緩んでるぞ」
お父さんは苦笑するが、仕方ない。
「ソラとフレムが可愛過ぎて」
「ぺふっ!」
「にゃうん」
私の言葉に、不満そうに鳴くソルとシエル。
しまった。
「シエルとソルも、もちろん可愛いよ」
ちょっと慌てた様子で付け足すと、ソルの目が細められる。
これは……怪しまれてる?
「ぎゃ~!」
少し離れた場所に感じていた人の気配が大きく揺れ、悲鳴が森に響いた。
「ジナルは、無事に仲間と合流できたみたいだな」
悲鳴が聞こえたけど、無事にと言っていいのかな?
「まぁ、ちょっと驚いただろうけどな」
「ちょっとかな? かなり驚いたと思うけど」
私の言葉に、お父さんが肩を竦める。
「まぁ、すぐに落ち着くよ。それより、少しここで待つか」
「うん」
合図が来たら、ジナルさん達の下に。
来なかったら、このまま私とお父さんは森の中を移動してカシム町に。
どっちになるかな?
「んっ?」
お父さんに釣られて、空に視線を向ける。
「合図が来たな」
「そうだね」
空には、青い煙。
これは、迎えに来た仲間が問題なしという合図だ。
「村道に行こうか」
木の魔物をポンと撫でると、スルスルと移動を始めた。
「ありがとう」
「ぎゃっ!」
あれ?
このまま木の魔物に乗って行っていいのかな?
また、ジナルさんの仲間を怖がらせる事にならない?
「お父さん、木の魔物と一緒に行っても大丈夫かな?」
「ぎゃっ?」
木の魔物が、私の言葉にお父さんを見る。
「さすがに、ジナルが話しているだろう」
「そうだよね。……本当に話してくれたかな?」
ジナルさんの事を考えると、不安になるんだけど。
「……たぶん?」
お父さんと顔を見合わせる。
「木の魔物からは、下りて行こうか。木の魔物には、後ろから来てもらって。あっでも、それだと木の魔物が俺達を追って来たように見えるかな?」
確かに、そう見えるかもしれない。
他の方法は……思いつかないな。
「ジナルさんが、ちゃんと話していると信じようか」
「そうだな」
きっと、大丈夫……だよね?
村道に近付くと、ジナルさんと男性の話声が聞こえてきた。
そっと木々の間から村道を見ると、男性2人と女性1人が見えた。
「驚かさないように、ゆっくり行こうか」
木の魔物の幹をポンと撫でると、枝の揺れる音が聞こえた。
「ぎゃっ!」
「えっ?」
木の魔物の声が大きかったのか、3人の視線がこちらに向く。
「「木の魔物!」」
2人の男性が、武器を構えてこちらを向く。
「ポポラ! こっちに!」
女性はテイマーだったのか、傍にいた大きな魔物に声を掛けた。
「大丈夫です! 襲ったりしませんから!」
3人に向かって叫ぶと、ジナルさんに視線を向ける
「ジナルさん! 言ってないの?」
「あははっ、ごめん。でも言ったんだぞ?」
えっ、そうなの?
でも3人の様子から、聞いていたとは思えないんだけど。
「ジナル! 木の魔物だとは聞いてないぞ!」
男性の怒りに、ジナルさんが肩を竦める。
「悪い。魔物については、言い忘れてたな」
あれは、ワザとだな。
あ~、女性の表情が怖くなっていく。
「ジナル」
「げっ、サーペント! ちょっとこっちに!」
「クククッ?」
ジナルさんの言葉に、サーペントさんが彼に近付く。
その瞬間、女性の傍にいた魔物がサーペントさんに気圧されたのか、数歩後ろに下がったのが見えた。
「ポポラ、大丈夫よ。もう、ジナル!」
「サーペントさん、こっちにおいで」
「ククククッ」
「あっ! アイビー」
焦った様子のジナルさんに手を振る。
揶揄い過ぎ!
「あらっ。ありがとう」
サーペントさんの行動に驚いた表情をした女性は、私に向かって笑顔で手を振る。
「同じテイマーなのかな? 後でゆっくり話をしましょう?」
「えっと」
お父さんを見る。
「心配なら、保護者も一緒で大丈夫よ」
女性の言葉にお父さんが頷く。
「はい。よろしくお願いします」
「ふふふっ。さてと、ジナル。ゆっくり話をしましょう?」
うわ~。
あのジナルさんが、凄く引いてる。
誰なんだろう?
凄い冒険者なのかな?
「お父さん、あの女性が誰なのか分かる?」
有名な冒険者ならお父さんが、知っているかもしれない。
「いや。分からない」
有名な冒険者では無いのかな?
「アイビー。森の中は大丈夫だった?」
シファルさんが、傍に来ると私の頭を撫でる。
「大丈夫。木の魔物とシエルがいたから」
「そうか」
「シファル。彼女は誰なんだ?」
お父さんの質問に、シファルさんが笑い出す。
「彼女は、ジナルの奥さんの妹さんだそうだよ」
「「えっ?」」
奥さんの妹さん!
「ジナル! 会う度に毎回、毎回揶揄って! しかも今回は4年ぶりなのに!」
妹さんの声が村道に響く。
4年ぶりに会うのに、揶揄われたのか。
しかも、よくあるみたいだし。
それは、本気で怒りたくなるよね。
「彼女が満足するまで待とうか」
傍に来たセイゼルクさんが、苦笑した様子でジナルさん達を見る。
まぁ、それがいいだろうね。
「そうだな」
お父さんの言葉に、傍に来たラットルアさん達と女性と一緒にいた2人の男性も頷いた。




