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817話 それは無理だよ

休憩が終わり、皆で洞窟の奥に向かう。

前を行く、ジナルさんやお父さん達の動きを見て首を傾げる。


「さっきより動きが良くなっているよね?」


「実際に目的の物がドロップしたから、ちょっと本気になったんだろう」


さっきまでのあの戦いは、本気では無かったの?

でも、そうかもしれない。

魔物が倒されるまでの時間が、短くなっている。

というか、これで「ちょっと本気」なんだ。

凄いな。


「靴はどうだ? 問題ないか?」


「大丈夫。問題ないよ」


歩きながら靴の様子を見たけど、接着剤の量は問題なかったようだ。

しっかり直っている。

これなら王都に行くまで、大丈夫だろう。

それにしても、予備の靴を買い忘れるとはやってしまった。

リストにして、ちゃんと1つ1つ確認したのにな。

次からは、確認漏れが無いようにしないと。


「にゃうん」


「んっ?」


シエルの声に視線を向けると、私のズボンを軽く銜えるとクイッと引っ張った。


「どうしたの?」


「にゃっ!」


私の言葉に小さく一声鳴くと、右側の壁に向かって歩き出す。


「何か見つけたのか?」


「にゃうん」


シファルさんの言葉に、シエルが鳴く。

どうやら正解らしい。


「守護石かな?」


「そうだろうな」


私は前を行く、お父さん達を見る。

皆、狩りに集中しているので少し自由に動いてもバレないだろう。


「行こうか」


「うん」


お父さん達の様子を見ながら、シエルの後を追う。


「ここ?」


シエルが教えてくれた場所まで来るが、周りと同じ岩の壁。

確かに守護石は埋まっているけど、今までとの違いが分からない。


「この辺りに、凄い守護石でもあるのか? ん~、確かに良い守護石ではあるけど、他とあまり変わらないような気がするな」


シファルさんが、壁に埋まっている守護石を確認しながら首を傾げる。

どうやら、「これだ!」という守護石は見つからないようだ。


「にゃっ」


シエルが鳴きながら、壁を引っかく。


「なんだろう?」


シエルの引っかいている壁に近付いてみる。

周りの壁との違いは一切ない。

というか、この辺りだけ守護石が埋まっていない。


「何かを伝えてくれているんだけど……」


シエルが引っかいていた壁を触ってみる。

やはり周りと変わらない、ただの岩の壁だ。


ペチン。


何となく壁を叩いてみる。

……何も起こらない。

残念。


「ごめん、シエル。分からない」


シエルの尻尾が、私の言葉を聞いて項垂れてしまう。

凄く残念に思われている。

でも、分からない。


「あれ?」


シエルの足元を見ると、光っている物が見えた。


「シエル。足元の、それは何?」


壁に手を付き屈むと、光っていた物に手を伸ばす。

何かの欠片かな?


ぐらっ。


「えっ?」


手を突いていた壁が動いた。

体重をかけていたため、動いた壁と一緒に体が傾く。


「うそっ」


慌てて体制を立て直そうとするが、壁に付いていた手がずるっと滑ってしまう。

そして、そのまま体は地面に落ちていく。


「くっ!」


やばいと、目をギュッとつぶる。


「にゃうん」


膝に小さな痛みが走る。

そしてお腹の辺りに、不思議な温かさ。


「んっ?」


下を見ると、シエルが地面と私の間で伏せをしていた。


「にゃうん」


どうやらシエルが助けてくれたようだ。


「ありがとう」


ホッとしてその場に座り込み、落ちるはずだった地面を見る。

かなり凸凹しているから、落ちたら絶対に痛かっただろう。

シエルのお陰で助かったぁ。


「アイビー。シエルが教えたかったのはここだ」


「えっ?」


シファルさんの言葉に視線を向けると、壁に出来た1メートル弱の穴を覗き込んでいた。


「そこ?」


シファルさんの隣に移動して、壁に出来た穴の奥を見る。


「わぁ、すごい」


穴の奥には空間があり、その壁が守護石で埋まっていた。

岩に守護石が埋まっているのでなく、壁一面が守護石と言ってもおかしくないような状態だ。


「こんなの初めて見た」


シファルさんもかなり驚いているようで、茫然と守護石の壁を見ている。


「にゃうん」


自慢気に鳴くシエルの、喉を撫でる。


「ありがとう、シエル。ここなら、お父さんに贈る守護石を見つけられるよ」


「にゃうん」


本当に、ありがとうシエル。


「行こうか」


「うん」


チラッとお父さん達に視線を向けるが、気付かれてはいないようだ。

今のうちに、急いでお父さんの守護石を探そう。


シエルを先頭にシファルさんと、守護石がある空間に入る。


「ここにある守護石は、どれも良い物だな」


シファルさんの言う通り、空間にある守護石は透明度が高く、どれを選んでの間違いなさそうだ。

岩に埋もれている守護石を見ながら、お父さんに「これ」と思う物を探す。


「あれ? この壁の中央にある守護石……もしかして巨大な1個?」


両手を広げてみる。

右の指先から左の肩ぐらいまであるかな?


「直径1メートル以上の守護石か」


「にゃうん」


「凄いね。こんな大きな守護石が、あるんだね」


「本当にな」


「にゃうん」


シファルさんと話していると、足に何かが当たる。

見るとシエルが前脚で私の足を突いていた。


「どうしたの?」


シエルの視線が巨大な守護石に向く。

そして私を見ると1回鳴いた。


「にゃうん」


「えっ?」


シエルは、この巨大な守護石が気になっているんだよね。

で、私に何かを伝えている。

ん~、何を?


「もしかして、ドルイドのプレゼントにお薦めするのがその巨大な守護石だったりして」


「にゃうん」


「「…………」」


シファルさんと顔を見合わせる。

そして巨大な守護石に視線を向ける。


「シエル、ごめん。さすがにこれは無理かな」


「にゃっ?」


驚いた表情のシエルに、申し訳ない気持ちになる。

でも、しょうがない。

守護石は身に付ける物。

この巨大の守護石は、どう頑張っても身に付ける物にはならない。

さすがに抱えて歩くわけにはいかないし。


「えっと、腕輪とかにして身に付けておく物だから。かなり大きすぎるというか。えっと3、4㎝ぐらいの物が理想的かな。それだと腰から下げる装飾具になるし」


「……」


無言になるシエル。

どうしよう、何か方法は無いかな?


「シファルさん、この巨大な守護石から欠片を取る事は出来るかな?」


「出来るけど、守護石はそのままの形が一番なんだ。装飾具にする時に形を整えるために削るぐらいならいいけど、この巨大な守護石を砕くのは止めた方がいいだろう」


駄目か。


シエルは私とシファルさんの会話を静かに聞くと、壁の前をうろうろとし始めた。

そして、暫くするとある場所で止まった。


「にゃうん」


鳴きながら、前脚で壁を叩くシエル。


「そこにある守護石がお薦めなの?」


「にゃうん」


シエルが前脚で叩いた場所を見る。

そこには、赤と青の色が混ざり合った守護石や真っ赤な守護石。

黒と赤の色が混ざり合った守護石など、透明度の高い物が埋まっていた。


「どれも透明度がかなり良いな」


「うん。つまりかなり良い守護石という事だよね?」


「あぁ、守護石としてかなりお薦めだ」


シエルが教えてくれた場所の守護石は、透明で凄く綺麗な物ばかり。

これならどれを選んでも、お父さんに喜んでもらえそう。


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― 新着の感想 ―
流石にでかすぎるってw
[良い点] シェルの気持ちが嬉しいですね( ˊ̱˂˃ˋ̱ ) [一言] アイビーが納得いくものが見つかりますように(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
[良い点] アイビーが選んだものならただの石でもドルイドは大事にするでしょうね
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