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791話 連絡前に

皆を順番に撫でながら、怪我をしていないか確認する。

特に、魔物と戦っていたシエルは脚の裏などもしっかりと確認する。


「にゃうん?」


さすがに脚の裏を確認すると不思議そうに見られてしまった。


「怪我が無いか見ているだけだから気にしないで」


「にゃうん」


よしっ、皆大丈夫。


「ぺふっ」


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


私が満足したと分かったのか、ソルがソラとフレムに体当たりをした。

それを嬉しそうに受けるソラとフレム。

合流できたことが嬉しいみたいに、3匹で体を寄せあっている。

それを眺めながらシエルを見る。

シエルは、楽しそうな3匹をなんというか、温かく見守っていた。


「3匹の保護者だよな」


お父さんの楽しそうな声に、笑って頷く。


「やっぱりそう見えるよね」


「うん」


皆を見ていると、シエルの足元でソラ達がのんびりとしだす。

あの場所が、皆の落ち着ける場所になっているのだろう。


「さて、これからどうするんだ?」


お父さんの言葉に、ジナルさんが少し考えこむ。


「とりあえず……王都に連絡だな」


「そうか。アイビーについては連絡するのか?」


お父さんの言葉にどきりとする。

フードを被った人に攫われた事を言うのかな?


「アイビーの事もだけど……」


ジナルさんの視線がシエル達に向く。

やっぱり、シエル達の事を報告するよね?

大丈夫かな?


ぽんぽん。


えっ?

お父さんに、なぜか頭を撫でられた。

そっとお父さんを見ると、優しい表情で私を見ていた。

何となく恥ずかしくなって俯くと、無意識のうちにお父さんの服を掴んでいる自分の手に気付く。


「あっ」


パッとてを離す。

気付かなかった。


「大丈夫だ」


ジナルさんの言葉に、彼を見る。


「報告する相手はフォロンダ様だ。あの方が、アイビーを悪いようにはしない。もちろんシエル達の事も」


そうか。

フォロンダ領主か。


「フォロンダ領主は組織の上の人なんですよね? 優しい……腹黒」


優しい人と言おうとしたのに、ある貴族に向けた笑顔を思い出してしまう。

凄みのある……視線が合ったら逃げ出したくなる笑顔だった。


「ぷっ、優しい腹黒?」


ジナルさんの楽しそうな声に、余計な事を言ってしまったと焦る。


「あっ、いえ……えっと。優しいんですが、凄くは……」


だから腹黒は駄目でしょう。


「そうか。アイビーには優しいところがあるんだな」


「えっ?」


フィーシェさんの言葉に首を傾げる。

フォロンダ領主は、もの凄く腹黒いところがありそうだし裏の顔も持っていそうだけど、若い冒険者や弱い立場の人達には優しい対応をしてくれた。

それに、美味しいお菓子もくれたし。


「優しいですよね?」


お父さんを見ると、複雑な表情をしている。

あれ?

違うの?


「優しい面は少しある。でも、一癖も二癖もある組織を束ねている人だから、怖い面が多々ある」


ジナルさんの言葉にフィーシェが頷く。

優しい面は少しで、怖い面は多々なんだ。


「敵には容赦が無いし、利用するとなったらとことんするよな。搾り取ると言うか」


フィーシェの言葉に、ラットルアさんとシファルさんが苦笑した。

もしかして何か知っているのかな?

ラットルアさんを見ると、肩を竦めて視線を逸らされた。

残念、教えてはくれないみたい。


まぁ、教会という大きな組織と戦って来た組織の幹部。

優しいだけで務まるわけがない。

最初の頃に思った、シファルさんより腹黒そうは正解だね。


「アイビーには優しいんだろう?」


「はい」


とても優しい。


「だったら安心していい。絶対に悪いようにはならない。それに、もしフォロンダ様がアイビーを利用しようとしたら、俺達が止めるから安心していい」


ジナルさんの言葉に、笑みが浮かぶ。


「ありがとうございます」


「任せろ」


うん。

たぶん、心配しなくても大丈夫。


「アイビー!」


クラさんの声に、周りを見る。


「あっちだ」


お父さんが指す方を見ると、クラさんがこちらに向かって駆けて来るのが見えた。

手を振ると、あっという間に目の前に来た。


「無事?」


「うん、大丈夫。クラさんは……怪我をしたの?」


クラさんの服には、あちこち血が付いている。

大きな怪我はないようだけど、大丈夫だろうか?


「大丈夫。これは、魔物の返り血だから」


クラさんの言葉に首を傾げる。


「戦ったの?」


「うん。家族のように強くは無いけど、少しは戦える」


そうなんだ。

そう言えば、クラさんの家族は「マーチュ村の最後の壁」と言われていたよね?


「家族の人達は大丈夫だった?」


もしかしたら、門を守っていた方達の中にクラさんの家族がいたかもしれない。


「大丈夫。少し怪我をしたけど、ポーションで治った」


そうか。

良かった。


「ばあちゃんが、宿は使っていいって」


クラさんがそう言うと宿「バーン」の鍵を出すと、私に渡した。


「いいのか?」


お父さんの言葉に、頷くクラさん。


「うん、急な客も来ないだろうからって」


今は、仕方ないよね。


「すまないが、落ち着いて話が出来る場所を借りられないかな? というか、俺達の寝る場所も確保したいな。えっと……」


ジナルさんがクラさんを見る。


「宿『バーン』の店主バトアさんの孫でクラだ」


お父さんの説明に、ジナルさんがクラさんに片手を出す。


「冒険者『風』のリーダー、ジナルだ。宿に6名が泊まりたいので、店主に確認をお願いしても良いか?」


ジナルさんの言葉にクラさんが周りを見る。


「6名?」


「俺とフィーシェ」


ジナルさんの言葉に、フィーシェさんが片手を上げる。


「あと、ラットルア達『炎の剣』チームの4名だ」


クラさんに向かって、ラットルアさんとシファルさんが片手を上げた。


「俺のチームに後2人いるんだ。そいつらの宿泊も頼みたい」


クラさんは、ラットルアさん達を見て頷いた。


「部屋は空いているから、たぶん大丈夫。でも、確認はする」


「ありがとう。頼むな」


ジナルさんが、私の持っている鍵を見る。


「話をしたいから、今から食堂を借りてもいいかな?」


ジナルさんの言葉に、クラさんは少し考えた後頷いた。


「ばあちゃんに言っておく。お風呂も使っていいと思う」


「ありがとう」


ジナルさんがクラさんにお礼を言うと、私から鍵を受け取る。


「お父さん。皆、忙しそうだけど手伝わなくていいの?」


村の人達が忙しそうに動き回っているのを見る。


「部外者である俺達は、村がもう少し落ち着いてから手伝った方がいいと思うぞ」


お父さんの言葉に首を傾げる。

そうなのかな?


「人手が必要なら、手伝うが……」


そう言えば、「手伝って」という言葉も聞かないね。


「クラ。俺達が手伝う事はあるか?」


「分からない」


お父さんの言葉にクラさんが首を横に振る。


「お父さんに聞いてくる」


「ありがとう。人手が足りなかったら言ってくれ。なんでも手伝うから」


「うん」


クラさんと別れてから宿「バーン」に向かう。


ジナルさんをそっと窺う。

何を聞かれるのかちょっと緊張してきた。

たぶん、大丈夫だと思うけど。


「にゃうん?」


不安そうに見えたのか、シエルが私を見る。

そっと頭を撫でると、小さくゴロゴロと鳴いた。

少し落ち着けたかな。


いつも読んで頂きありがとうございます。

次回の更新は1回お休みして、5月18日(木)になります。

どうぞ、よろしくお願いいたします。


ほのぼのる500

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― 新着の感想 ―
クラが無事で良かったよ。 こういうとき最後の砦の周りってやられやすいから…
[気になる点] トロンが結界を壊して自分を助けてくれたこと、そしてそのために真っ黒になって死んでしまった事を、なぜシエルやソラ達に真っ先に話さないのか不思議。 そしてソラ達もトロンのことは気にしてない…
[気になる点] って下に投稿してしまいましたが 名前がごちゃついてしまったり 忘れてしまったりしたので 個人的に 過去の章からコピペしました 炎の剣(風は紹介ページが見当たらないため 文章からうち…
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