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番外編 マーチュ村で2

―ジナル視点―


手の中の黒い魔石を見る。

これで魔法陣を無効化出来るなら、やるしかないよな。

だが、魔法陣のある場所までは魔物の数も凄いだろう。


「フィーシェ、魔法陣までの距離は?」


「2ヶ所とも、100mぐらい離れていたと思う。ジナル、魔法陣の無効化に向かうんだな?」


フィーシェの言葉に頷く。


「あぁ、行く」


「俺も一緒に行くから」


フィーシェの言葉は嬉しいが、首を横に振る。


「危険だ。戻って来られる可能性は低い」


「知ってる。だからこそ一緒に行く」


フィーシェを見ると、覚悟を決めた目をしている事に気付く。

これは何を言っても駄目だな。


「分かった。頼むぞ、相棒」


「「「ククククッ」」」


一緒にマーチュ村に入ったサーペント達が鳴きながらスッと顔を近付ける。

それに驚きながら、ポンと頭を撫でる。


「一緒に来てくれるのか?」


「「「ククククッ」」」


「ありがとう」


よしっ、やる事は決まった。

行くか。


「ジナル、フィーシェ」


ウルが真剣な表情で俺達を見る。


「ウルは、この村に残ってくれ。あとで上に報告も必要だろうからな」


俺達が死んだ場合、ここで起こった事を正確に伝える者が必要になる。

ウルなら、任せられる。


「分かった。気を付けて。あと、これを持っていけ」


ウルが青く光ポーションを俺に渡す。

少し迷う。

この村の者達に全て渡すつもりだったから。


「持っていけ!」


ウルを見ると、俺を睨むように見ていた。


「分かった、ありがとう。ウル、後を頼むぞ」


俺の言葉に、複雑な表情で頷くウル。


「にゃうん」


シエルを見る。

ジッとこちらを見る姿に笑みが浮かぶ。


「お前達も早くアイビー達の所に行けよ。行きたいんだろう?」


「にゃうん」


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


やはり、今すぐにアイビーの元に向かいたいみたいだな。


「ここまで守ってくれてありがとう。よしっ。門の外までは一緒に行くか」


俺の言葉にシエルの尻尾が揺れる。

そっとシエルの頭を撫でると、スリっと手に顔を擦りつけた。


大丈夫、絶対に魔法陣は無効化する。

ガーディアに声を掛け、門を開けるようにお願いする。


「森は危険です」


「分かっているが、どうしても行く必要がある。魔物を送り込んでいる魔法陣を無効化してくる」


俺の言葉に、小さく「ありがとう」というと門に手を掛けた。


「きゃぁ~」


えっ?


「逃げて~」


「魔物が、裏から入って来たぞ~」


マーチュ村の奥から、悲鳴が響き渡る。


「何? すぐに何が起こったのか確認!」


ガーディアが焦った表情で、周りに指示を出す。


裏の壁が破られたのか?


「まずいな。奥は戦えない者達が避難していたのに」


門を守っていた者達が慌てている。


「どうする?」


フィーシェの言葉に返事が返せない。

魔法陣を無効化しないと、魔物は増える。

でも、村に魔物が入った以上は、ここも守らないといけない。


「行ってください。魔物がこれ以上増えると対応できない! お願いします」


ガーアディアの言葉に頷くと、門を開けてもらい外に出る。


「にゃうん」


んっ?

一緒に外に出ると思ったシエル達がなぜか、門の中にいる。


「シエル? 行かないのか?」


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


ソラとフレムは鳴くと、シエルの背に乗る。

そしてシエルは、村の奥へと走って行った。


「あいつ等、村に残ってくれるのか?」


フィーシェの言葉に、小さく頭を下げる。

きっとアイビーの元に行きたいはずだ。

さっきまで、行ける事を喜んでいた。

それなのに、村の者達を守るために残ってくれた。


「ありがとう。行こうか」


魔法陣の場所を把握しているフィーシェを先頭に森を進む。

やはり魔物が多い。

でも、ソラから預かった魔石を無駄にはしない。


「くそっ。多いな」


サーペント達が襲ってくる魔物をほとんど倒してくれるので助かっているが、彼等がいなかったら既に死んでいるな。


「あと少しだ!」


フィーシェの言葉に、速度を上げる。


「フィーシェ! 上だ!」


前を走るフィーシェに、木の上から魔物が襲い掛かるのが見えた。

ここからでは、助けられない。

サーペント達も、魔物の対応で動けない。


「フィーシェ!!」


フィーシェの体が、左に大きく飛ばされるのが見えた。


「ぐっ」


倒れたフィーシェに魔物が飛び掛かるが、フィーシェが剣で凌ぐ。


「くそったれが!」


魔物の首を剣で指すと、足で蹴り上げフィーシェから離す。


「大丈夫か?」


「悪い。足をやられたみたいだ」


フィーシェの足を見ると、左のひざ下が辛うじて繋がっている状態だった。

慌てて足をくっつけて止血をする。

その間にフィーシェが持っていたポーションを飲んだが、血が止まらない。


「あっ。ジナル、魔法陣だ」


フィーシェの言葉に、彼が指した方を見る。

確かに微かに光を発している魔法陣があった。


「行け。また魔物を呼ぶ前に止めないと」


フィーシェの言葉に、ぐっと歯を食いしばる。


「あっ、そうだ!」


ポーチ型のマジックバッグから、青く光ポーションを出す。

ウルに感謝だな。


「飲め」


「無駄に――」


「いいから飲め!」


オール町で光ポーションの噂があった。

あの話が本当なら、きっと大丈夫だ!

フィーシェだって、あの噂は知っているはずだ。


「分かった」


フィーシェがポーションを飲むのを見てから、魔法陣に近付く。

黒の魔石を出すが、どうしていいのか分からない。

魔法陣の上に置いてみるか?

魔法陣に近付くと、発していた光が強くなった。


「うわっ」


魔物が来るのかと身構えたが、光はふわりと空中を舞うと黒い魔石に集まりだした。


「えっ? 魔石が吸収しているのか?」


魔法陣から発していた光が黒い魔石にどんどん吸収されていくのを見る。

しばらくすると、魔法陣から光が消えた。


「凄いな、無効化出来たのか」


「あぁ。出来たな。……んっ?」


隣を見ると、フィーシェが立っていた。

顔色は悪いが、そこにいた。


「えっ?」


フィーシェの足を見る。

2本ある。

途中で無くなってもいない。


「このポーション凄いな。一口飲んだだけで、足がくっついた」


ほらっと、足を動かすフィーシェ。

本当に瀕死の者が、生き返るのか。


「ははっ。なんていう物を置いて行ったんだ」


マーチュ村でも、色々な奇跡を起こしているだろう。

これは後々、問題になるな。

まぁ、命より優先される事は無いから、上に頑張ってもらおう。


「魔法陣は、あと1つだな」


「それはもう大丈夫じゃないか?」


フィーシェの悲しそうな声に、首を傾げ彼が見ている方を見る。


「木の魔物が来てくれたのか」


おそらく最後の魔法陣を無効化してくれたのだろう。

黒くなった木の魔物の姿が見えた。


あれ?

魔物は?

いつの間にか、魔物が周辺からいなくなっている。

それを不思議に思っていると、木々が揺れる音がこちらに近付いて来た。


「何か来るな。気配が読めるか?」


俺の言葉に首を横に振るフィーシェ。

2人で、音がした方を向き剣を構える。


「ククククッ」


サーペントが、そんな俺達の傍に来ると剣を持っている手に顔を擦りつけた。


「待て。今はそれどころでは……もしかして、敵じゃないのか?」


「ククククッ」


サーペントの様子に、剣を下ろす。

しばらくすると、木々の間から木の魔物が姿を見せた。


「木の魔物だったのか」


フィーシェの緊張した声に、俺も背を伸ばす。


木の魔物は、俺が無効化した魔法陣を見るとスッと根を2本、こちらに伸ばしてきた。

そして、


「えっと?」


何が起こっているんだ?

頭の上で動く、木の魔物の根を見る。


「なぁ、ジナル」


「あぁ、なんだ?」


「俺達、木の魔物に頭を撫でられてないか?」


木の魔物のまさかの行動に、フィーシェと一緒に戸惑ってしまう。

しばらく俺達の頭を撫でると満足したのか、木々の間と抜けて去って行った。


「「…………」」


「ククククッ」


俺達が無言で木の魔物が去った方を見ていると、不思議そうに鳴くサーペント。


「村に戻ろうか」


「ククククッ」


俺の言葉に賛成とばかり嬉しそうに鳴くサーペントは、俺を咥えると背に乗せた。

すぐ隣では、別のサーペントがフィーシェを乗せていた。


「魔物がいない」


あれほどいた魔物が全くいない。

それを不思議に思いながら、周辺を見渡す。


「あっ」


魔物がこちらに向かって来るのが見えた。

剣を出そうとすると、近くの木々からサーペントが姿を見せ魔物を倒してしまう。


「あれ?」


俺の乗っているサーペントと、フィーシェの乗っているサーペント。

それと後ろにいるサーペント。

……前にいるのは、また別のサーペントだな。


「ジナル」


フィーシェを見ると、後ろを見て唖然としていた。

それを不思議に思って振り向くと、5体のサーペントがいた。

一瞬ヒヤリとした。

でも、こちらを見て一鳴きすると、森の中に行ってしまった。


「もしかしてサーペント達が魔物を倒しているのか?」


「ククククッ」


フィーシェの言葉に、彼を乗せているサーペントが頭を上下する。


「そうなんだ。ありがとうな」


「ククククッ」


サーペントは満足そうに鳴くと、マーチュ村に向かって動き出した。


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― 新着の感想 ―
あの時逃げてって逃がした2種が助けてくれるって展開熱い
ど、どうしよう凄く楽しい けど悲し過ぎる にしても…木の魔物にサーペント…って すごく運命を感じる気がする
[一言] サーペント包囲網。 知らなければ怖い光景だけど、知ってたらものすごい安心感ありますね。
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