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781話 私にも出来る事。

走りながらマジックバッグに手を入れる。

取り出したのは魔物用の雷球。

タタミラさんが改良した物で、大きい魔物でも意識を奪えるそうだ。


「あと少し」


目の前には、シエルが教えてくれた大きな木がある。

あれに登って様子を見よう。


ギャアウア~。


「えっ?」


全く気配を感じなかったのに!

すぐ隣から、飛び出して来た魔物に向かって雷球を投げる。


バチバチバチバチ。

ギャア。


どれほどの威力なのか、襲って来た魔物が痙攣しながら倒れた。


「良かった」


思ったよりこの雷球は、強いみたい。


ガサガサガサ。

ガサガサガサ。


まだ近くにいる!

新たな雷球を取り出すと、すぐに投げられるように右手で構える。

そっと傍にある大きな木を見る。

登っている間に攻撃を受けたら、避けられないかもしれない。

どうしよう。


ギャアウア~。

ギャアガア~。


来た!

あっ、2匹もいる。

あれ?

大きい方の魔物の目が、潰れている。

いったい、教会は魔物に何をしたの?


ギャアウア~。


うそっ、もう1匹!

左手でマジックバッグから、もう1個雷球を取り出す。


左右に視線を走らせる。

どこか逃げられる場所を。


ギャアウア~。

ギャアガア~。

ギャアウア~。


駄目だ、来る!


「アイビー!」


目の前にいた魔物の2匹が、炎で包まれる。


ギャアァァ。


残った1匹が、お父さんの方に意識が向いた瞬間に、雷球を投げた。


バチバチバチバチ。

ギャ。


「お父さん」


「大丈夫か?」


「うん」


お父さんを見ると、服に血が付いている。


「お父さん、怪我をしたの?」


「かすり傷だ。それに、ほとんどが返り血だ」


良かった。

少し遅れて、ウルさんとマルチャさんが来る。


「シエルは、あっちで闘っているみたいだな」


シエルの気配に視線を向ける。

森の木々が邪魔で見えないが、沢山の魔物を相手にしているみたいだ。


「大丈夫かな」


「大丈夫だ。信じよう」


お父さんの言葉に頷く。


カランカランカランカラン。

カランカランカランカラン。

カランカランカランカラン。


「またか!」


森に響いた新たな木のぶつかる音に、ウルさんが叫ぶ。


「あんな大量の魔物をどうやってこの村に?」


マルチャさんの言葉に、ウルさんが苦々しい表情を見せる。


「空間移動です」


「空間移動?」


マルチャさんが不思議そうにウルさんを見る。


「ある場所にいる魔物を、マーチュ村に飛ばす魔法陣があるんです。それを空間移動と読んでいます」


「つまり、あの魔物はどこからか運ばれていると」


「えぇ」


カランカランカランカラン。

カランカランカランカラン。


あっ、また。


ドドーン。

ドドーン。


「なんだ?」


森に響く、爆発したような音に緊張が走る。


「あぁ、あれを出したのですね」


マルチャさんが、マーチュ村がある方を見て頷く。


「あの音の正体を知っているんですか?」


ウルさんの言葉に、マルチャさんが神妙な表情で頷く。


「えぇ、マーチュ村の武器です。本当に危ないと感じたら、出す事になっていました」


カランカランカランカラン。


ドドーン。


「村に戻りましょう。まずは、安全を確保しないと」


「分かった」


マルチャさんの言葉にお父さん達が頷く。

あっ、ソラ達はどうしたんだろう?

きっと隠れているよね?


「ぷっぷぷ~」


えっ?

鳴き声に視線を向けると、近くの木の枝にソラ達の姿が見えた。


「皆!」


「あの子達なら大丈夫だ。木の上を魔物に見つからないように、移動しているから。いつもの遊びが役に立ったな」


お父さんの言葉に、小さく笑う。

木にぶつかったり、木の枝に跳び乗ったり、木から木に飛び移ったり。

確かに、いつもの遊びが役に立っているみたいだね。


「行こう」


ウルさんの言葉に頷いて、走り出す。

シエルが私の周辺にいた魔物を倒してくれたお陰で、お父さん達は少し休憩が出来たみたい。


「来るぞ」


お父さんの言葉に、ウルさんが飛び出して来た魔物を切りつける。


カキン。


「くそっ、下がれ! こいつの皮膚は、剣を通さないみたいだ!」


ウルさんの言葉に、すぐに魔物から離れる。


バチン


マルチャさんが、魔物の前に鞭を振るう。

威嚇になったのか、魔物の勢いが落ち止まった。

でも、こっちをジッと見ているので、下手に動くと飛び掛かって来そう。


「他にもこちらに向かってきているな」


お父さんが、目の前にいる魔物から少し視線をずらす。


カランカランカランカラン。

カランカランカランカラン。


まだ増えた?

いったいどれだけの魔物を、この村に移動させるつもりなんだろう?

マーチュ村は戦う準備が出来ていると言ったけど、大丈夫なのかな?


「ドルイド、首を狙え!」


「分かった」


ウルさんの言葉に、お父さんが魔物に向かって行く。

次の瞬間、魔物の首が地面に転がった。

あれ?

剣は通さないと言ったのに切れたの?


倒された魔物の隣を通って、村に向かう。

途中で魔物を見たが、首のところだけ皮膚の色が違った。

おそらく色の違う部分を狙ったんだろう。


ドドーン。


カランカランカランカラン。


まだ増えたの?

ここに来れなくする方法は無いのかな?

このままではどんどん魔物が増えて行ってしまう。


ガルガルガル。


来た!


ドスン、ドスン。


「デカいな」


魔物が近づくたびに、地面から振動を感じる。

かなり大きな魔物がこちらに向かているみたいだ。


ギャアガア~。

ギャアウア~。


「くそっ。囲まれた!」


先頭を走っていたウルさんが止まると、周りを見て叫ぶ。

気配を読めない魔物がいるせいで、気付くの遅れてしまった。


「やばいな」


お父さんとマルチャさんが、焦った様子で私を守るように構える。

マジックバッグから雷球を出して、逃げられる方法を探す。

でも、魔物が集まっているようで、逃げ場がない!


お父さんとマルチャさんを見る。

お父さんはまだ大丈夫そうだけど、マルチャさんの疲労はかなり溜まっているのが分かる。

私を守りながら戦うのは無理だ。


逃げ場所、逃げ道……どこかに。

あっ!

視線を上にあげる。

木の枝をソラ達みたいに渡って行けば、逃げられるかもしれない。


「お父さん、私は木の上に非難するから」


「えっ?」


お父さんがチラッと私を見る。

その心配そうな表情に、笑みを向ける。


「大丈夫」


すぐ傍に立っている細い木を登って、太い木の枝に移る。

よかったぁ。

登った木が細かったから、途中で折れるかとヒヤッとした。


登り切った私を見たお父さんとマルチャさんは、戦う構えを変える。


「やっぱり、守りながら戦うのは大変だよね」


でも、此処から、どうやって移動しよう。

枝から枝に?

失敗したな。

この木の枝を伝って移動しようと思ったけど、次の枝がちょっと遠いかも。


「ぷっぷ~」


「てりゅ」


ソラとフレムの鳴き声がする。

どこだろう?

木の上を見ていくと、少し離れた場所に3匹の姿があった。

それに手を振ると、ソラが木の枝を渡って傍に来る。


「あっ、そっちの枝を使えばいいんだ。ありがとう」


ソラが先導してくれたように、枝から枝に渡っていく。

下ではお父さん達が戦っている音が聞こえてくる。


「大丈夫かな?」


お父さん達の様子を窺うと、ウルさんが大きな魔物。

お父さんとマルチャさんが、それ以外の魔物と戦っていた。


「ぷぷっ!」


ソルに視線を向けると、ある方向を向いていた。

視線の先を追うと、新たな魔物がこちらに来ているのが見えた。


「また! あっ、ここから雷球をぶつけたらいいんだ」


お父さんのようには戦えないけど、ここから雷球を投げて魔物を減らす事は出来る!

マジックバッグから、雷球を取り出すと、魔物が近づくのを待つ。


「来た!」


新たな魔物は足が速かったので、少し焦ったけど無事に……よっし。

倒せた。


「アイビー、助かった」


ウルさんの言葉に、「よしっ」と気持ちを籠める。

私の傍を通る魔物は、雷球があるかぎり倒す!


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― 新着の感想 ―
ずっとハラハラする
[良い点] 今までと違って戦闘で役に立ってるアイビーが新鮮。
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