表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
829/1151

768話 ジナルさんの仲間

クラさんが持ってきた剣は、刀身は幅が広く、全長は80㎝ほどの短刀。

持たせてもらうと、見た目より重みを感じた。


「それは、重さを生かして叩くように攻撃するのが特徴だ。特に接近戦にお薦めだな」


お父さんの説明に、タタミラさんが頷く。

接近戦に強い武器なんだ。


「クラは、この短刀が気になったの?」


タタミラさんがクラさんに確認をする。


「うん」


「そっか。この剣は、自警団員が洞窟の中でドロップして、売りに来た物なのよ。まだちょっと整備に不安があるから、引き渡しまでに時間を貰いたいんだけど、いいかな?」


「もちろん」


「ありがとう。自信をもって引き渡せるようにするわね。そういえば、ようやく気に入った武器が1つ見つかったのね」


タタミラさんの言葉に、嬉しそうに笑うクラさん。

その言葉に、首を傾げる。

今日のクラさんの腰には、剣が提げられている。

あの剣が1つ目では無いのだろうか?


「クラさん、その腰から提げている武器は、気に入らなかったの?」


「うん。これは、じいの物。森に行く時は持っていけと言われたから、今日初めて持ってきた」


つまり、マルチャさんから借りている物なのかな?

それなら、今選んだ武器がこれからのクラさんを守る武器になるのか。


「お父さん、あの武器はどうなの?」


「クラにとって、いい武器を選んだと思う」


そうなんだ。


「クラは力が強いし体力がある。あの短刀は重さを生かした武器だ。そこにクラの力強さが加わると、かなり重い攻撃が繰り出せるだろう」


お父さんの説明に、クラさんが頷く。

そうとう気に入っているのか、剣をギュッと抱きしめている。


「良かったね」


「うん」


タタミラさんが、クラさんから剣を受け取ると売約済みの印をつけた。

それを嬉しそうに見るクラさんに、なんだか微笑んでしまう。


タタミラさんに、雷球と投げナイフの代金を払う。

雷球はそのまま受け取ったが、投げナイフは整備をして使った回数を元に戻してくれるそうだ。


「それでは、頼むな。明日は午後3時頃に受け取りに来るよ」


「分かったわ。任せて! あっそうだ。雪の降り方があまりにも凄かったら、店は開けないから気を付けてね」


タタミラさんの店を出ると、宿に向かう。

風が吹くと、体が芯から冷えていく。

一気に気温が下がったみたいだ。


「クラさん、嬉しそうだね」


「うん。じいから、自分の武器を探すように言われてた。やっと見つけた」


本当に嬉しそうな表情で話すクラさん。

声からも興奮しているのが分かるし、歩き方もいつより弾んでいる。


「クラ、少し落ち着こうか。滑って転ぶぞ」


お昼ごろに少し暖かかったから雪が解けたのだろう、部分的に地面が凍っているみたいだ。

歩いていると、かなり滑りやすい場所がある。

凍っている場所は見ただけでは分からないから、気を付けないと。


「うわっ」


「アイビー!」


クラさんではなく、私が滑った。

支えてくれたお父さんにお礼を言って、地面にしっかりと足を付けて立つ。

雪の上も歩きにくいけど、凍った部分も歩きにくいよね。


「大丈夫?」


心配そうに見るクラさんに頷く。


「ありがとう。大丈夫」


「アイビーは、冬の道と相性が悪いよな」


お父さんが笑いながら、ポンと私の頭を撫でる。


「本当だよね」


気を付けているのに、足が取られるんだよね。

歩き方を考えていると、左手がギュッと握られた。

見ると、クラさんが私の手を握っていた。


「滑らないように、俺の後ろを歩いて来て」


クラさんは年下だから、普通は逆だよね。

そう思いながら彼を見ると、心配そうな表情で私を見ていた。


「ありがとう」


クラさんの後ろを歩くと、凍った場所を避けて歩いている事が分かる。

地面に見るが、凍っているかは分からない。

どうやって、判断しているんだろう?


「クラさんは、凄いね、凍っているところが分かるの?」


「なんとなく」


「なんとなく」でも、分かるのが羨ましい。


「そうなんだ。やっぱり、凄いね」


宿に着くと、ホッと体から力が抜けた。


「ありがとう、クラさん。凄く助かった」


「良かった。あっ、バトを見てくる」


夕飯に出て来るはずのバトが気になるのか、宿に入るとすぐに調理場に向かうクラさん。

その行動にお父さんと笑ってしまう。


「降り始めたな」


お父さんの言葉に、玄関の窓から外を見る。

外は、雪が降り始めていた。


「雪が降る前に帰って来られてよかったな」


「うん。そうだね」


見ている間にも、降る雪の量が増えていっている。

ほんの数分、帰るのが遅くなっていたら全身雪まみれになっていただろうな。


「お帰り~」


「えっ?」


お父さんの驚いた声に、視線を向ける。


「ウルか?」


厚手のコートを着て、耳まで隠す帽子をかぶっているので分かりづらいけど、確かにウルさんだ。


「そう。今日からよろしくなぁ」


ウルさんは、オカンイ村で初めて会ったジナルさんの仲間だ。

オカンイ村からオカンコ村まで、一緒に旅をした事もあり、頼りになる人だと思う。


「どうしてここに?」


お父さんの疑問にウルさんが楽し気に笑う。


「『知っている仲間が1人先に行く』と、ジナルから伝言が来ていないか?」


あっ、ジナルさんのふぁっくすの内容だ。


「あれは、ウルの事だったのか?」


お父さんの言葉に、頷くウルさん。


「そういうこと。2人とも元気そうでよかったよ。少し、心配していたんだ」


ウルさんの言葉に、お父さんが苦笑する。

その表情に、少し首を傾げる。

なぜかほんの少しだけ、違和感を覚えた。


「今日から、この宿に泊まるのか?」


「あぁ、既に部屋も借りた。夕飯の後で、少し話しがしたいんだが大丈夫か?」


あれ?

部屋は既に借りているのに、その格好?

もしかして、どこかへ行くのかな?


窓から外を見る。

さっき見た時より、雪の降り方が一層激しくなっているように見える。

この状態の外に出たら、危なくないかな?


「まさか、今から出るのか?」


お父さんが、ウルさんの格好を見てから眉間に皺を寄せた。


「あぁ、宿の周辺だけでも確認しようと思ったんだけど……ここまで降るか?」


どうやら、ウルさんの予定は変わりそうかな。

まさか、雪で視界が真っ白なのに、周辺を確認することはしないだろう。


「無理かな?」


「無理だろう」


ウルさんの言葉に、お父さんが呆れた表情をする。


「あれ? やだ、ウルさん。まさかこの雪の中、外に出るつもりなの?」


食堂から出て来たシャンシャさんが、ウルさんの格好を見て驚いた表情をする。

それに慌てた様子で首を横に振るウルさん。


「いえ、さすがに今の状態では出ません」


「そうよね。びっくりしたわ」


シャンシャさんがホッとした様子で、お父さんと私を見た。


「もう少ししたら夕飯が出来るんだけど、その前に冷えた体を温めてきたら?」


それはいいかも。

部屋は暖かいけど、外で冷え切った体にはやっぱりお風呂が一番だからね。


「そうだな、そうしようか」


「うん」


シャンシャさんと別れて、ウルさんと一緒に3階に向かう。

どうやらウルさんも3階らしい。


「ウルさんはお風呂、どうするの?」


「あぁ、俺は寝る前に入るよ。夕飯に行く時に声を掛けてくれ」


私たちが泊っている部屋の右側がウルさんの部屋のようだ。

ウルさんは、手を上げると少し眠そうな表情では部屋に入って行った。


今日宿に着いたという事は、疲れているのが当然だよね。

夕飯の時に、起きてくれるかな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いや〜(^ ^) クラがすごく可愛いかっこいい!!! 最高!! 嫁にして!! …………… …アイビーを!!
[気になる点] 80㎝って、短刀の長さなんですか? 80って結構な大きさですよね?
[一言] 雪の中、雪中行軍して、ジナルさん達は来るのか……………
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ