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番外編 王都の教会2

ーある男の視点ー


2人の司祭から報告書が届いた。

1枚目に目を通す。


「完全に制御が出来たか」


大量の魔物を、制御できる魔法陣が完成した。

オカンイ村での実験が役に立ったな。

あの村を手中に収められなかった事を悔やんでいたが、魔法陣が完成したので、もうどうでもいい。


そして、2枚目の報告書に目を通し、笑ってしまう。


「あははっ。これはいい。今日は楽しい報告が多いな」


ついに、人や魔物を目的の場所へ確実に飛ばす魔法陣が完成した。

オカンコ村に痛手を与える事は出来なかったが、実験は成功だった。


「くくっ……ごほっ。ごほっ」


楽しい気分を害するような、息苦しさに襲われ咳をする。

口を覆っていた手を見る。

その手は真っ赤に染まっている。


「はぁ、忌々しい」


近くにあった布で手を拭い、ゴミ箱に布を叩きつける。


「この体も限界か」


魔法陣を使い、体から体へと私という存在を移動させてきた。

だが、移動させればさせるほど、移動した先の体の限界が短くなっていった。

これも、この世界に掛けられた大魔法のせいだ。

魔法陣を抑え込む呪いの。


だが、見つけた。

最後の1人。

今はまだ、居場所を掴めていないが、必ず見つけ出す。

そしてこの世界は、大魔法という呪いから解放されるのだ。


「まずは、完全な体を手に入れなければな」


コンコン。


「なんだ?」


「失礼いたします」


教会に属する司祭と司教を管理している部下が入ってくる。


「オカンノ村に送り込んでいた司教から報告がありました。『全て問題なく完了』という事です」


部下からの報告に、口が自然と笑みの形になる。

「問題なく完了」か。

これで巨大魔法陣を発動する事が出来る。


「よくやった。司教と司祭は?」


「はい。彼は生贄としてそのままオカンノ村に残します。ただ司祭は、まだ利用価値があるので戻るように指示を出しました」


此奴は、いつも仕事が早いな。


「しかし、驚きました」


「何がだ?」


部下を見ると、ふっと笑みを浮かべ私を見た。


「司教を捨て駒にし、司祭を守る方法を取った事です」


まぁ、司教の方が本来は地位が上だからな。

だが、そのお陰で犬どもを誤魔化す事が出来た。


「そうだな。だが、この方法はもう取れないだろうな」


犬どもは、馬鹿では無い。

そろそろ、重要な仕事をしているのは司祭で、司教はもしもの時の捨て駒だと気付くだろう。


「犬どもの情報は?」


「はい、怪しいと言っていたフォロンダですが、王弟の駒で間違いないようです。王弟に上手く取り入って、周りを蹴落としています。その際、かなりあくどい手を使っていますね」


「そうか」


時々王に呼び出されていたので、犬の関係者かと思ったが違ったのか。

かなり怪しいと思ったんだがな。

ん~、目の前の部下が嘘を吐く事は無いと思う。

だが、なぜか気になる。


「フォロンダは、どんな手を使って周りを蹴落としたんだ?」


「王弟の傍に送り込んだこちら側の手の者ですが、犯罪者として奴隷落ちさせられました」


「どうやって? 送り込んだ者は、私に対する忠誠心が強い者だったはずだが?」


「酒の中に幻覚剤を入れられ、王弟の前で大暴れし襲い掛かったようです」


「それで?」


「フォロンダが王弟を守ったと聞いています。その際、腕に怪我を負ったとも。少し前に行った、裏切り者をあぶり出す道具でも、フォロンダは反応していませんから。その事と今回の事で、完全に王弟はフォロンダを信用したみたいです。おそらく、こちらから誰を送っても、フォロンダ以上にはなれないでしょう」


「そうか」


王弟をこちら側の駒にするつもりだったが、邪魔をされたか。

待てよ、それが犬どもの仕業だったら?


「フォロンダが、教会について探っている様子は無いのか?」


「あります」


あるのか?

パッと部下を見る。

この報告は今までなかった。

どういう事だ?


「ですが、犬の仲間ではないでしょう」


「なぜ、そう言い切れる?」


「錯乱を起こした者ですが、暴れている最中に司教の事を叫んだそうです」


屑が。


「それで、王都の教会を少し調べ、何かを感じたのかすぐに手を引きました。おそらく面倒事には関わらない事で、今まで生き延びてきたのでしょう。その事から、フォロンダは問題ないと判断できると思います」


手を引いた?

なるほどな。

面倒事には関わらないか。

そういう奴はいるな。

まぁ、こいつが調べたんだ、大丈夫だろう。


「分かった。奴の調査は中止していい」


「王弟はどうしますか?」


「私の役に立たないなら、必要ないな」


私の言葉に、ふっと笑みを浮かべる。


「では、すぐに始末します」


「あぁ。そうだ、オカンノ村の隣にあった村。なんだったかな?」


「マーチュ村ですか?」


「あぁ、その村は落とせそうか?」


「申し訳ありません。あの村に送った者達からは、一度も連絡がありません」


つまり、何かがあったという事だな。

小さな村だから、すぐに落ちると思ったのだが。


「どうしますか?」


「村を囲うように魔法陣は、描いてあるんだな? それに問題は?」


「ありません。ですがそろそろ雪が降ります」


「そうだったな」


魔法陣の上に雪が積もると、正常に動かない事は実験でわかっている。

待つしかないな。


「雪が解けたら、マーチュ村を囲う魔法陣を発動させろ。あの村には、魔物を狂わせるための生贄になってもらう」


そして狂った魔物を、王都に送り込む。

王も守る騎士達も、一気に始末する事が出来るだろう。


「はい」


「それと、最後の1人の居場所は特定出来たのか?」


「いえ、各地にいる仲間達が探していますが、いまだにその所在は分かりません。ただ、ハタカ村にいた可能性があるようです」


「ハタカ村?」


魔法陣での洗脳実験をしていた村だな。

途中で失敗したが、なかなかに面白い実験結果を出してくれた。

あの実験が無ければ、オカンノ村の成功は無かっただろう。


「巻き込まれて死んだ可能性は?」


あの村にいたのなら、巻き込まれた可能性がある。

もし死んでいたら、早急に次を見つけなければならない。


「それは大丈夫だと思います。魔法陣の事件だったので、王都から調査隊が送り込まれました。彼等の報告書に、子供に被害が出たという内容のものはありませんでした。もし巻き込まれたとしても生きております」


「そうか」


「ハタカ村に仲間を送って調べさせたいのですが、送った者達からの連絡が途絶えました。おそらく、見つかったのだと思います」


実験の事が、明るみに出たのがまずかったな。

警戒が強まってしまった。


「分かった。何とか、最後の1人の居場所を突き止めろ」


生きているなら、探せばいいだけだ。


「分かりました。では」


部下が部屋から出ていくのを見送る。


「はぁ、あと少し」


犬を動かしている王を殺せば、もっと自由に動けるようになる。

そうなれば、最後の1人もきっと見つけ出せるだろう。

今は、犬どもにバレないように動かなければならず、大胆に動けない。

だが、それもあと少し。

そう、あと少しだ。



―ある部下の側近―


「お疲れ様です」


大司教と呼ぶ、教会の化け物の部屋から出て来た上司に頭を下げる。


「何か報告はあるか?」


「王都の教会に入り込んだ犬の始末が、終ったそうです」


「よくやった」


「ありがとうございます」


俺の報告に、頷く上司を見る。

どうやら、今の報告を信じたみたいだな。

まぁ、死んだのが犬ではなく教会が匿っていた犯罪者だと知られる事は無いと思う。

だが、警戒しておくことは大切だ。


こいつの信頼を得るために25年、ずっと大人しく従ってきた。

ほとんどの事には参加できるまでになったが、化け物にはいまだに会えない。

つまり、最後の一線は越せていないという事になる。

全く、化け物は警戒心が強すぎる。


でもフォロンダ様については、上手く誘導できたはずだ。

あとは王弟が殺されれば、完璧なんだが。

さて、利用価値の無くなった王弟を化け物はどうするかな?


しかし1つ、気になる事がある。

この上司、化け物に会う前にオカンノ村と呟いたんだよな。

オカンノ村で何か重要な問題でも、起きているのか?

とりあえず、仲間達に報告しておくか。


「最弱テイマーゴミ拾いの旅を始めました。」を読んで頂きありがとうございます。

本日で2022年度の更新を終了させていただきます。


来年2023年は1月8日(日)より更新を再開いたします。

ちょっと長くお休みをいただきます。すみません。


今年も本当にお世話になりました。

感想、コメント、誤字脱字、ありがとうございます。

2023年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

ほのぼのる500

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― 新着の感想 ―
え!? 教会の部下さん優秀すぎません…?? つか怖すぎ!!! そして恐ろしいことが思い浮かぶ… これ、そのうちアイビーが 最終手段に気がついてしまうやつでは??? それで復讐誓った魔物たちがこぞっ…
[気になる点] 司教を残して司祭を撤退させる、というのを誰が考えたのかが矛盾してます。 使い道があると判断して残したと報告しながら、その後すぐにそうするよう指示されていた、みたいに描かれてます。
[気になる点] 話だけは出てきてた憑依する化け物……会話してるのは初ですかね? アイビーの知らない所で亡くなってほしいものです
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