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717話 やっぱり

「ここで休憩をしようか」


お父さんの言葉に、シエルが立ち止まって周りを見る。

少し丘になっている場所なので、見晴らしがいい。


「にゃうん」


シエルも賛成のようなので、マジックバッグからお茶を用意する。


「久しぶりにお菓子を食べないか?」


「食べたい! オカンコ村を出てから食べてないから、久しぶりだね」


えっと、20日ぶりかな?

何が良いかな?

オカンコ村で買ったお菓子を思い出す。


「甘めのお菓子がいい? それともさっぱりしたお菓子?」


「そうだな、ちょっと疲れているから甘めがいいかな」


お父さんを見る。

顔色は……特に変化なし。

動きも……いつもと変わらない。

本当に隠すのが上手すぎる。

でも、言葉にしてくれたからいいか。


「分かった」


マジックバッグから、オカンコ村で買った甘めのお菓子「チョーバー」を出す。

このお菓子を知ったのは、フォロンダ領主のメイドであるアマリさんが用意してくれたから。

あの日から、私のお気に入りのお菓子になっている。

見つけたら、つい買っちゃうんだよね。

オカンコ村で見つけた時は、久しぶりに見つけたから思わず多めに買ってしまった。


「チョーバーか。いいな」


お茶とお菓子を簡易のテーブルに置いて、休憩をする。

このあと私は、ちょっとお昼寝をする。

私が夜の見張り役をちゃんと任されるようになってから、3日に1回ぐらいでお昼寝休憩が設けられるようになった。

大丈夫だと言ったけど、ちゃんと休憩を取らないと身長が伸びないらしい。

本当なのか疑問を感じていたら、「本当だぞ。そのまま背が伸びなくてもいいのか?」と真顔で聞かれて、「それは困る」と即答してしまった。

でも確かに、ちゃんと食べてしっかり睡眠時間を取ったら、実際に私の身長は伸びた。

身体の成長には、食事と睡眠が大切なんだね。


「美味しいね」


「そうだな。この甘さ、疲れた時にちょうどいいな」


「うん」


「食べたら、お昼寝な」


「分かった」


そろそろ冬の初めなので、少し肌寒くなる季節。

でも、今居る場所は太陽の光が降り注いでいるので、ぽかぽかしている。

気持ちいいなぁ。


「おやすみ、アイビー」


「……うん」


…………


「ぷぷっ?」


んっ?

目を開けると目の前にソラ。

これは、どういう状況なんだろう?


「ぷっぷ~!」


もしかして寝過ぎたのかな?

起きて確かめたいけど、ソラが頭というか額に乗っているので出来ない。


「ソラ、ちょっと降りてもらっていいかな?」


というか、どうしてそこにいるの?


「ぷっ?」


いや、不思議そうに体を横にしないで。


「起きたのか? おはよう。そろそろ1時間だな」


「おはよう」


良かった。

寝過ぎたわけでは無かったみたい。


「ソラ、降りて」


「ぷ~」


なぜ不満そうに鳴くの?

そこ、私の額の上だから!


「ぷ~」


なんだか仕方ないなぁと言われたような気がする。

私は悪くないよね?

あっ、降りてくれた。


「ありがとう」


起き上がって腕を伸ばす。

最初は戸惑ったけど、お昼寝って気持ちがいいんだよね。

立ち上がって、体全体を伸ばす。

ん~、気持ちがいい。


「てっりゅ~」


「フレム、どうしたの?」


少し拗ねた鳴き声に聞こえたんだけど、何かあったのかな?


「誰がアイビーを起こすかって、少し前に皆で競っていたんだよ。で、見事にソラが勝利。フレムはあと少しだったんだよな」


「そうなんだ。フレムも、ありがとう」


フレムを撫でると、ちょっと目を細める。

少し機嫌が直ったかな。

それにしても、何を競っていたんだろう?


「あれ」


お父さんが指す方を見ると、少し離れた場所にある岩の上に私の拳ぐらいの石が乗っていた。


「あの乗っている石を小石で弾き飛ばすんだ」


弾き飛ばす?


「そんな事が出来るの?」


「あぁ、石を口に咥えて飛ばしてた」


口に咥えて?


「新しい遊び方?」


私の言葉に頷くお父さん。

そうだよね、今までそんな事をした事が無いから。


「結構飛ばすぞ。まぁ、方向は安定していないけどな」


「そうなんだ。見たかったな」


「それならすぐに見られるだろう。ソルもシエルも、かなり悔しがっていたから。すぐに再挑戦すると思う」


それは楽しみだな。

口で飛ばすか。


「アイビーは、移動を始める前に鞭を練習するか?」


「あ~、うん、そうだね」


なぜか、いっこうに上達しない鞭。

いまだに狙った場所を、打てたためしがない。

距離を詰めれば当たるけど、それでは鞭の意味がないからね。


準備運動をして鞭をマジックバッグから出す。

丁度いいので、岩に乗っている石を落とそう。

岩からの距離をお父さんに測ってもらって、まず1回目。


ヒュッ。

カチャン。


えっ、全く岩に届かなかった。

もう一度。


ヒュッ。

カチャン。


無駄な力が入っているのかな?


ヒュッ。

カチャン。


あっ、今度は方向が全く違う。


ヒュッ。

カチャン。


どうして上達どころか、下手になっているの?


お父さんを見ると、少し思案顔。

最近、私が鞭の練習をするとこの表情をするな。

あまりに上達しないから、困っているのかもしれない。

でも、私も頑張っているつもりなんだけどな。


鞭を持っている腕を反対の手で掴む。

筋肉は薄らついている。

でも、鞭を振るうなら少な過ぎる。

毎日練習しているのに、どうしてこんなに筋肉がつかないんだろう。

本当に不思議。

それにもう1つ、不思議な事がある。


「アイビー、鞭を諦めないか?」


やっぱり、そろそろ言われるかなとは思っていた。


「掌が、痛いだろう?」


お父さんの言葉に掌を見ると、血が流れていた。


鞭を使う人は、掌に出来たマメが何度も潰れる事で皮膚が硬くなっていくらしい。

剣を使う人も同じだと、お父さんに聞いた。


私が鞭の練習を始めてから今まで、マメが出来た事が無い。

不思議な事に、1つも出来ないのだ。

でも、持ち手と皮膚が擦れてしまい、掌には切り傷がいっぱい出来た。

しかもこの傷。

しっかり消毒をしていたのに、なぜか化膿した。

皮膚の硬化を妨げるのでポーションはあまり使いたくなかったけど、化膿してしまったのでポーションを使った。

それを何度か繰り返しているのだが、新たな問題が出てきてしまった。


「傷の治りが、悪くなっているんだろう?」


あっ、やっぱり気付かれていたのか。

でも、その通り。

最初の頃に比べると、掌の傷に対してポーションの効きが悪くなっている。


「うん」


不思議な事に、掌の傷だけに効きが悪い。

他の傷には、今までと同じようにすぐに効果が出るのに。

掌を見る。

今日出来た傷と、治っていなかった傷から血が出ている。


お父さんが、布を私の手に巻く。

そしてポンと頭を撫でる。


「ソラのポーションを使っているのに、傷が数日も治らないのは異常だ」


「そうだよね」


お父さんを見て、頷く。


「分かった、諦める。私が使える武器を、探さないとね」


「そうだな。一緒に探すよ」


「ありがとう」


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


「ぺふっ」


「にゃうん」


不安そうなソラ達の声。

笑って皆を見る。


「大丈夫だよ」


それにしても、武器との相性が悪過ぎる。

今のところ私が扱える武器は、攻撃球のみ。

まぁ1つあるだけでもいいのかな。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しんでます。 [気になる点] テイマー###だから魔物に好かれやすくなるかわりに魔物を傷つける武器が使えなくなるとかなんかそんなノリの何かがあるのかな?
[気になる点] 昔の箱庭のアルケミストだとお飾りの杖にアイテムで援護メインで戦闘は護衛頼りだったし、武器は諦めた方が(なおやり方によっては武術大会優勝も出来る
[一言] 武器に適性が無い代わりに、ソラ達がどんどん強くなっていったりして
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