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711話 光り花

「待った」


お父さんの言葉に、足を止める。


「どうしたの?」


お父さんを見ると、木の根元で膝を突いている。

気分でも悪くなったのかな?


「お父さん、大丈夫?」


「あぁ、大丈夫」


お父さんの様子を窺うと、木の根元で咲いている花を見ていた。

その花は、ピンクの花弁が4つある……普通の花。

可愛いけど特に特徴は無い。


お父さんを見ると、ジッとその花を見ているというより調べている様に見える。

それに首を傾げる。

もう一度花を見るが、毒をもつ花の本では見た事が無い。

でも、私の知らない毒をもつ花はまだまだある。

もしかしたらこの花も、毒を持っているのかもしれない。


「やっぱり、そうだな」


お父さんが納得したように頷いて立ち上がった。

やはり毒を持っているのだろうか?


「この花がどうしたの?」


「ん? この花は『光り花』の1つで間違いないみたいだ」


光り花?

えっと……知らないな。

うん、初めて聞く言葉だと思う。

草花の本にも毒草や毒花の本にも、光り花なんて言葉は載っていなかった。


「その光り花というのは、どういう物なの?」


「光り」という以上は、光るのかな?

……光るとしたら花弁かな?

そっと花に手を伸ばし、ちょっと迷ってお父さんを見る。


「触っても大丈夫?」


「あぁ、優しく触れるぐらいなら大丈夫だ。あっ、毒は持っていないからその心配はいらないからな」


毒は無いのか。

良かった。


そっと触れると……あれっ?

花弁だと思ったんだけど、ちょっと違うような気がする。

もう一度そっと優しく触れる。


「花弁に厚みがある?」


「それは花弁じゃなくて、種を守っている袋なんだよ」


えっ!

もう一度、花を観察する。

……分かっていても花弁に見える。

触らないと分からないほどの厚みの中に種があるんだ。


「種が袋から出ると、風に乗って浮遊するんだ。その時に種が光るから『光り花』と呼ばれているらしい。この種類は、俺が知っているだけで5種類。この花を含めると6種類だな。森の奥、かなり深い所でしか咲かないから、あまり知られていないけど上位冒険者達の一部には人気なんだ」


確かに、咲いている場所はかなり森の奥だもんね。

知っている冒険者も少ないだろうな。


それにしても種が光るなら、光り花より光る種のような気がするな。

光っている種が飛ぶのか……それは、ちょっと見たいかも。

綺麗だろうな。


「花の様子から、たぶん今日か明日には種が飛びそうなんだ。見て行かないか?」


お父さんの言葉に、迷いなく頷く。

見たい!


「シエル達も、この周辺に泊る事になるけど、大丈夫か?」


「ぷっぷぷ~」


「にゃうん」


「てっりゅりゅ~」


「ぺふっ」


皆も賛成してくれたので、この辺りに今日は泊まりが決定。

今日はまだ早いから、ゆっくり準備をしよう。


「ぷっぷ~! ぷっぷ~! ぷっぷ~!」


ソラの少し興奮した鳴き方に視線を向けると、少し離れた所で何度も飛び跳ねていた。


「呼んでいるみたい」


私の言葉にお父さんが頷くと、一緒にソラの下へ向かう。

フレムとソル、シエルもソラと一緒にいる。


「どうしたの?」


「ぷっ!」


「てりゅっ!」


ソラとフレムが先頭で、森の奥へ向かう。

後ろを振り返って花を見る。

この辺りで泊まる事に賛成してくれたはずだけど、なんだろう?


「とりあえず、行こうか」


ソラ達の後を追いかけて、森を進む。

10分ほど歩くと、急に木々が途切れた。


「「あっ」」


見えたのは、一面の花畑。

近くにある花を見ると、先ほどの光り花と同じ形と色をしていた。


「凄いな。光り花がこんなに沢山あるところなんて、見た事が無いよ」


「そうなの?」


「あぁ、今まで見た光り花は、多くても十数本だったから。ちょっと待ってくれ」


お父さんが花の様子を見る。


「どの花の種も、いつ弾けてもおかしくない状態だ。これだけの花の種が一斉に飛んだら凄いだろうな」


うん、凄いと思う。


「ソラ! 連れて来てくれて、ありがとう!」


ソラはきっと、この花畑に気付いたんだね。


「ぷっぷぷ~」


相変わらずどうして分かったのか不明だけど、本当に嬉しい。


「木の根元にあった花は、ここの種が飛んだんだろうな」


「その可能性が高いね」


一面の花畑を見る。

花弁が種を守る袋だと分かっていても、やっぱり普通の花に見える。

まぁ、特徴が無い花だけど。

それでも、見渡す限り咲いていると、圧巻だ。


「よしっ。この辺りにテントを張ろうか」


「今日はテントを張るの?」


森には強い魔物がいるから、テントを張る事はほとんどない。

襲ってきた魔物から逃げる時に、テントを置いていく事になるから。

まぁシエルがいるので、今まで襲われた事は無いけど。


「不思議な話なんだけど、光り花の傍には魔物が近付かないんだ。たった1輪でもそうだった」


お父さんの言葉に花を見る。

花の匂いかな?

そっと花の香りを確かめるけど、特に不思議な香りも異様な香りもしない。


「匂いからは、原因は分からないだろう?」


お父さんを見て頷く。

花には毒もないし、香りも普通。

これでどうして魔物が近寄って来ないのか。

そういえば、花畑の周りの木々を見る。

魔物の痕跡がどこにも見られない。

森の木には大なり小なり、魔物の爪痕や噛み痕があるのに。


「不思議だね」


「あぁ。もしもの事があるから、魔物除けは使うけどな」


それは森の中では常識だね。

今まで魔物除けを使ってなかった私だけど。


「シエルも、何かあったら頼むな」


「にゃうん!」


嬉しそうに鳴くシエルの頭を撫でる。

森の中ではどうしても頼ってしまう。

もう少し……あっ!


「鞭!」


「どうした、いきなり? 鞭?」


そうだった。

武器の一種で鞭を手に入れたんだった。

剣も弓も駄目だったけど、鞭なら使えるかもしれないと思って。


「お父さん、後で鞭の使い方を教えて」


「あぁ、持ってきたあの武器の事か。分かった」


鞭で攻撃が出来るようになったら、少しはお父さんの助けになるかな?

でも、中途半端な強さでは駄目だよね。

もし使えたとしたら、しっかり使いこなすまでは何があっても使わないようにしよう。

中途半端な強さは、お父さんに余計な負担をかける事になるだろうから。


「鞭か。アイビーに鞭……なんだか違和感が凄いな」


えっ?

私と鞭だと違和感があるの?

まぁ、私はまだまだ子供だからね。

確かに、違和感があるかも。


「大きくなったら、違和感は消えると思うよ」


「そうか? ん~、大きくなったら違和感も大きくなりそうだけどな」


そうかな?

想像の中では、私が鞭を持っていてもおかしくないけど。


「アイビーの腕は細いからな」


腕が細いと駄目なの?


「鞭を振るうには全身の筋力をもっと付けないと駄目だろうな。あと腕の筋力はかなり必要だ」


あっ、筋力か。

頑張っても、なかなか筋肉がつかないこの体。

今までも、そのせいで色々な武器を諦めてきたんだよね。

鞭にはそれほど必要ないかと思ったんだけど……無理かな。


「まぁ、合うか合わないかを知るためにも、試してみないとな」


そうだよね。

試さないと、分からないよね。

もし素質があったら、本格的に筋力をつける運動方法をお父さんに教えてもらおう。

前に教えてもらった時は、全く効果が出なかった。

だけど、あの時より体は大きくなっているから、今度は大丈夫かもしれないから。

うん、希望は持ってもいいはず。


長く休みまして、申し訳ありません。

本日より、新しい章を始めますのでどうぞ宜しくお願いいたします。

ほのぼのる500

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― 新着の感想 ―
魔物使いといえば鞭のイメージが強いな
[気になる点] こう、自動で鞭が迎撃してくれるなら便利そうなんだけどね
[一言] 鞭はイメージ的にアイビーちゃんには似合わない気が半端ないけれども。 テイマーが鞭を持つと魔物を力で従える調教師な感じになって、魔物と魂の絆で繋がるテイマーとはかけ離れてしまう気がします。
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