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649話 噂? 罠?

リュウや捨て場の事を説明するのは、ウルさんとガルスさんに決まった。

報告だけなので、全員で行く必要はないとお父さんが言ったからだ。


冒険者ギルドには全員で来たのだが、ギルド内の冒険者の多さに驚いた。

カウンターの方を見ると、冒険者達の長蛇の列。

対応しているギルド職員は10人もいるが、追いついていない様だ。


「凄い人だな。なんでこんなに多いんだ?」


込み合う人を見て嫌そうな表情をするウルさん。


「これ、待ち時間どれくらいでしょうか?」


ガルスさんも、人の多さにうんざりしているみたい。

それにしても、本当に人が多い。


「新しい洞窟、凄いらしいな」


冒険者達の会話に耳を傾けながら、冒険者ギルドの奥へと進む。


「もう1つ、見つかったんだろう? 今年これで6ヶ所目か? 7ヶ所目か?」


少しの間、冒険者の話を聞いていたお父さんとウルさんが納得した表情で頷いた。


「なるほどな。冒険者が前より多いのは、新しい洞窟とドロップアイテムか。これは当分、落ち着かないだろうな。噂によると、また新しいのが見つかったようだし」


お父さんの言葉に頷く。

私にも聞こえた冒険者達の言葉を纏めると、この村は複数の有名な洞窟があり、今も新たに見つかっている。そして、どの洞窟も冒険者を満足させるマジックアイテムがドロップされるらしい。

何だか、凄い村だな。


「仕方ない、並ぶか。ガルス、どこに並ぶ?」


全員で冒険者の列へと視線を向ける。


「右から3番目はどうですか?」


「列は短いが駄目だ。対応しているギルド職員が若い。話す内容から考えて、彼女では対応できないだろう。そうなると、他の人を呼ぶことになるから、時間が掛かる」


確かに、対応できずに他に人を呼ぶことになったら、二度手間だもんね。

ウルさんは、列の長さよりしっかりと対応できる職員を探しているみたいだ。


「それなら、一番左だな。扉から離れているからか列がそれほど長くないし、しっかりと対応も出来そうだ」


お父さんが薦める、一番左を見る。

40代ぐらいの男性で、確かに手際よく冒険者に応対している。


「そうだな、彼にしよう。ガルス行くぞ」


ウルさんとガルスさんが列に並ぶのを見る。

2人の前には17人の冒険者達。

中にはチームを組んでいる者達もいるだろうけど、最低30分は掛りそうかな。


「ここは邪魔になるから、移動しよう」


お父さんの言葉に、冒険者達がいない場所を探しながら移動する。

ただ、冒険者のいない場所が無い。


「なぁ、ギルマスと団長はまだ戻って来ないのか?」


ん?

ギルマスさんと団長さんは、村にいないの?

2人が同時に村を離れる事なんて、無いと思うんだけど。

何となく立ち止まって、冒険者達の話に耳を傾ける。


「団長は、一番深い洞窟の調査だったか?」


「そうそう。春先に見つかった洞窟。洞窟の中を最初に調べた上位冒険者の話じゃ、深いだけじゃなく道もかなり分かれているらしい。しかも、魔物の種類が多くて、かなり危険な洞窟みたいだ」


「あぁ、だから上位冒険者だけじゃなく団長も洞窟に潜ったのか」


「あの人の強さは、上位冒険者でも相手にならないほどだからな」


そんな強い団長さんがいるんだ。

遠くからでもいいから、見てみたいな。


「ギルマスも一番遠くに見つかった洞窟の調査だったよな? でも、なんでギルマスは調査に行ったんだ? 団長が留守なのに」


そうだよね。

普通は、団長さんが戻ってくるのを待つはず。

待てない何かがあったのかな?


「これはまだ公式に発表されていないんだが、その洞窟を調べに行った冒険者が誰も戻って来なかったんだと」


「本当か? この村の周辺に出来る洞窟は危険度が高いから、上位冒険者の中でもかなり強い者達が調査に当たるんだったよな?」


「そうだよ。でも、その選ばれた冒険者達が戻って来ないんだと。しかも、洞窟の様子を見に行った自警団員から、洞窟の外に魔物が溢れているかもしれないと、報告があったそうだ」


洞窟の外に?

それって、かなり重要な情報だよね?


「それ、誰からの情報だ? 本当なのか?」


「洞窟を見に行った自警団員の1人が飲み仲間なんだよ。そいつから聞いた」


という事は、本当の話と思っていいのかな?


「つまり本当の話か」


でも、その話をこんな場所でする?

しかも本当だと言い切った。


「そう、本当の話」


えっ、もう1人の冒険者も?


「で、洞窟から魔物が溢れたら大変な事になるから。団長が帰って来るのを待ってる余裕はないとギルマスは判断したんだろう。たぶん」


洞窟から魔物が溢れるのって、洞窟内に魔物が多くなった時だったかな?

それとも、魔力が一気に増えた時だった?

どちらにしても、危険だよね。

ただ、本当だと言ったのに「たぶん」と付けたけど。


「それで2人ともいないのか」


随分と詳しく話すよね。

言葉を1つも濁す事もなく。

なんだか、まるで周りに聞かせているみたい。

そう言えば、この2人の声量は抑えているように感じるけど、それほど小さくないな。


「アイビー」


ん?

あっ、冒険者が少ない場所に移動している途中だったんだ。

チラリと傍にいる2人の冒険者を見てから、そっとその場所を離れる。


「後ろを向いたらいないから、焦った」


「ごめん。ちょっと気になる話が聞こえてきて」


「そうなのか?」


「うん。今、村にはギルマスさんも団長さんも洞窟の調査でいないみたい」


私の言葉に、少し驚いた表情をしたお父さん。

そしてクシャっと髪を撫でた。


「えっ? 何?」


「腑に落ちない表情をしてるからさ」


えっ!

お父さんの言葉に両手で頬を押さえる。

どうして、こう表情に出てしまうんだろう。

表情を動かさないように、頑張って話しているのに!


「門番の様子を見ておかしいと思わなかったか?」


いきなり門番さんの事?


「思った。彼では門番としての役割を果たせないよね?」


それに、門番の人達が謹慎したぐらいで人手不足というのも変。

門番さん達が洗脳のせいで亡くなった村があったけど、次の日にはちゃんと人手は補われていた。

門番という仕事は、魔物に襲われる確率が多いから、もしもの時にも対応できるように考えてあるらしい。

だから、この村は何かが変。


「まるで、この村の管理がおかしくなっているように見えるよな」


うん、お父さんの言う通り。

ありえない配置に、人手不足を補わない自警団。

ギルマスさんの不在を噂する冒険者がいるのは、情報が洩れていると言える。

仕方なく団長さんとギルマスさんが不在になる時は、その情報を隠すと聞いた事があるからね。

あれ?

もしかして、目的があっての行動?


「知ってるか?」


「何?」


「噂では、次のギルマス候補の2人が、ギルマスがいない間に主導権を取ろうと画策しているらしい」


「へぇ」


これは、ギルマス候補の2人が村をおかしくさせていると思わせたいのかな?


「金があるところには、虫がたかるんだよ」


虫?

……この村からお金を搾取しようとしている誰かがいるという事かな?


「この村のギルマスと団長の決め方は独特なんだ。王都から来た一部の貴族は、興味が無いから知らないだろうな」


あぁ、つまり王都から来た貴族がこの村で何かをしようとしてると。

そしてそれを防ぐために罠を張っているのかな?


「でも、ちょっと考えたらバレると思うけど」


喧嘩で門番さん達が謹慎して、人手不足になったという事だけでも十分だと思う。

それだけで自警団に問題が起きていると見せられるんだから。

ありえない配置はやり過ぎでしょう。


「相手に合わせての罠だろう」


それって、罠にはめる相手を馬鹿にしているように聞こえるな。


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