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640話 お父さんが変

変だ。

お父さんも、ジナルさんもウルさんも。

何かおかしい。


一緒に朝ごはんを作っているお父さんを見る。

いつもと変わらない態度に見える。

でも、何か隠している気がする。


ジナルさんもウルさんも、お父さんがおかしくなった辺りで一緒におかしくなりだした。

でもこの3人、隠すのが本当に上手い。

だから、数日は気のせいだと思った。

でも、気のせいじゃない!

絶対に何か隠してる。


「隠さなくてはいけない事って何だろう?」


「どうした?」


お父さんが私を心配そうに見るので、首を横に振る。

隠している以上、聞いても答えてくれないだろうな。


「今日でガルス達の体力作りは、終わりだな」


「そうだね」


ガルスさん達は今日が最後だからと、朝早くから森へ行ってしまった。

最初はきつそうだったけど、体力作りが楽しくなったらしい。


「よく頑張ったよね。というか、よくこの短期間で体力をつけたよね」


あの3人は、凄かった。

本気で取り組んだからなのか、ウルさんの教えた方法が合ったのか、どんどん体力をつけていった。

ウルさん曰く、体を動かすのに適している体らしい。

どんな体なのか聞くと、首を傾げられたので感覚的なものなのだろう。


「そうだな。最初は、心配したけど間に合って良かったよ」


ジナルさんも、一緒に旅をする事に許可を出してくれたからね。

あの体力があれば、シエルがいつものように森の奥に先導しても、ついて来られるだろう。


「そういえば、ジナルさんが今日は夕飯を作らなくていいと言っていたけど、どうするんだろうね」


最後だから、この村の屋台料理でも楽しむのかな?

この村には、入る前から問題があったから屋台を楽しむ機会が無かったんだよね。

まぁ、少しは楽しんだけど。


「そうだな。まぁ、ジナルに任せればいいだろう」


「……うん」


普通なんだけど、何か違和感を覚えるんだよね。

声の高さはいつも通りだし、話し方も変わらない。

なのにどうしてだろう?

含みがあるような気がしてしょうがない。


ジナルさんもウルさんも、お父さんと同じ物を隠している気がする。

もちろん、私は子供だから話せない事がいっぱいある。

特に、ジナルさん達が追っている組織については、絶対に話せないだろう。

それは当然だ。

でも、今回はその関連ではない事はジナルさん達の態度で分かる。

だから、気になる。

それにお父さん達が隠している事に、私が関わっているような気がするんだよね。

これは、私の勘だけど。


「用意が出来たから、食べようか」


「うん」


ご飯を食べる部屋に、2人分の朝ごはんを並べる。

ここ数日、6人で食事していたのでちょっと寂しい。


「「いただきます」」


「旅に行く準備で足りないものはあったか?」


お父さんの言葉に首を横に振る。


「ほとんど準備は終わってる。ソラ達のポーションもマジックアイテムも十分だし、作り置きの料理もバッグに一杯だし。あとは……特にないかな」


旅の準備にも慣れたな。


「そうか。それなら手袋を買いに行ってもいいか?」


「うん、いいよ」


「アイビーも買ったらどうだ? 最近は崖にもよく登るようになったから必要だろう」


確かに必要かも。

最近シエルの選ぶ道は、昔に比べてきつい。

崖を登る回数も多くなっている。

今は、崖を登る時だけお父さんに手袋を借りているけど、私の手には大きい。

紐を使って調整しているけど、危ないよね。


「そうだね。必要かも」


「じゃ、2人分の手袋を買いに行こう」


「うん」


食事が終わるとちょっと休憩。

片づけをしてから2人で隠れ家を出た。


「最後だし、屋台を見て回らないか。かなり雰囲気も良くなってきたし」


「そうだね。あっ、アイテム屋を覗いて良い?」


「何か欲しい物でもあるのか?」


「そうじゃないけど、見るのが楽しい。あれ? ジナルさんだ」


大通りから脇道に入る角にジナルさんの姿があった。


「えっ!」


ん?

どうしてお父さんが焦ったの?

お父さんを見る。


「どうした?」


普通の態度に戻った。


「なんでもない」


ジナルさんがいた場所へ視線を向ける。

既に、その姿は無い。


絶対に何かある。

あの角を曲がったら何があったかな?

……駄目だ。

あっちへは、行った事が無かった。


「あっ、あそこを覗いてみよう」


お父さんが指す方に視線を向けると、冒険者の手袋を専門に扱っている店があった。

店に入ると、ずらりと並んだ手袋の数々。


「凄い数だね」


「そうだな。ここまでの数が揃っている店は珍しい。当たりだな」


魔物の革を使用した手袋が多いのは、丈夫だからだろうな。

お父さんに似合う手袋を選んでいると、お父さんが私にと20組の手袋を持ってきた。

20組は多いと思ったけど、私も気付けば14組も選んでいたので黙っておいた。

言わなくて良かった。


「大きさを見てくれ」


「うん」


私が選んだ手袋をお父さんに渡し、私はお父さんが選んでくれた手袋の着け心地を確かめていく。

指を曲げたりしながら、少しでも違和感があった物は除外する。


「この4組みたい」


「俺はこの3つだな」


最後は丈夫さとデザインで選ぶ。


「どうした?」


お父さんが隣から私の手元を覗き込む。

私の手には2組の手袋。

1つは緑色の手袋でもう1つは青色。

どちらにも甲の部分に、花がデザインされている。

どっちも凄く手に合うし可愛い。


「花のデザインか、可愛いな」


「うん、そうなの。どっちにしよう」


魔物の革を使用した手袋は安くない。

だから、ここは慎重に選ばないと。


「俺も2組買うし、アイビーも2組買ったらどうだ?」


お父さんは手が大きくなることは無いけど、私はまだ成長途中。

1組が無駄になったら、もったいない。


「毎日つけたら、2組ぐらい必要になると思うぞ。シエルの選ぶ道は、葉っぱが鬱蒼としているところも多い。素手で葉っぱに触れて、傷を作っている事があるだろう? それを防ぐ事も出来る」


自分の手を見る。

小さな傷の跡がある。


「そうだね。2組はあってもいいかな」


お父さんも予備も含めて数枚持っているもんね。


「あぁ、必要だと思う。で、その2組でいいのか?」


「うん。お金は自分で払うよ?」


私の言葉を無視して、お金を払ってしまうお父さん。


「これは旅に必要な物だから、共通の財布から」


それならいいか。


「ありがとう」


買ったばかりの青色の手袋を着ける。

自分の手が、かっこよく見えるなぁ。


「休憩しようか」


休憩?

そういえば、手袋を探すのに結構な時間がかかってしまった。


「うん、そうしよう」


お店を出て、屋台を見て回る。


「お昼も食べるの?」


「ん~、軽く食べるぐらいにしようか」


「分かった」


軽くか。

何が良いかな?


適当に屋台を見て回り、お菓子を数個購入して近くに置いてある椅子に座る。


「明るくなったよね」


「そうだな」


視線の先には、笑顔で話す屋台の店主達。

見ていると、こっちまで嬉しくなる。


購入した物をお父さんと分け合って食べていく。

なんだか、こんな時間は久しぶりだな。


教会の後片付けが終わったと思ったら、他にも何かあったらしく駆り出されたお父さん。

予定外だったのか、ものすごく不服そうな表情で出かけて行った。

帰って来た時は、凄く機嫌が良かったから驚いたっけ。

確か、「いいものが見つかった」と、嬉しそうだったな。


「これ、うまいぞ」


目の前に差し出された、棒に巻きついた生地に果物のソースがかかっている甘味。

パクッと食べると、ほんのり甘くておいしい。


「本当だ」


こういうのんびりしたのが、やっぱりいいなぁ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ほのぼのお買い物。 [一言] 何か物足りない。
[良い点] 元が悪意ならあっさり隠し事に気付くのに元が善意だから気付きそうで気付かないアイビーが可愛い。
[良い点] お父さんとお買い物。 良いですね。
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